無題

手描きアニメも4K時代 アニメ業界に押し寄せる技術革新

2月中旬、気になるニュースがありました。プロダクション I.GとNetflixが「4K HDRの手描きアニメーション」を共同制作するというものです。アニメーション制作の有力会社と世界的な映像プラットフォームの試験的な取り組みです。
「ついにそんな時代に!」と感慨深いと同時に、一体どうやって実現するのだろう、という疑問も持ちました。

映画やテレビ番組の高画質化は、多くの人には自然な流れです。当然アニメでも、と思うかもしれません。
しかし実写の高画質化が現実にある対象をよりリアルに映すのに対して、アニメは対象物が完全な創作物です。よりリアル感を出すには、対象物自体もより精密にしなければなりません。

問題のひとつは解像度をあげると、本来見えなくてよいものが、目につき始めることです。それは旧作アニメのHD化の際にすでに指摘されてました。
解像度があがることで、手塗りのセル画ペイントのムラや、撮影の際に入り込んだ糸クズ、さらに背景が描かれた画用紙のケバ立ちまでが分かってしまうからです。
丁寧なHD化の場合は、こうしたものを一コマずつ修正していくこともあったと聞きます。これがさらに4Kになったら……。旧作アニメの高画質化は、限界に近づいているかもしれません。

となると新作です。筆者は2014年にコンテンツ見本市TIFFCOMで大手制作会社サンライズの宮河泰夫社長が手描きアニメの4Kの可能性を質問された時の答えを印象深く覚えています。
「いまのテレビサイズの動画用紙で描いた絵を4倍に伸ばすと線が荒れる」「アニメーターが80インチのサイズで絵を描きたがるだろう」。つまりより細密な画が要求されるが、それに対応するのはなかなか難しいとの認識です。この時の記憶も、今回の発表に驚いた理由です。

それから時代が進んだことで環境も変化しました。アニメーションの絵のもとになる原画・動画を描く際に、紙と鉛筆でなく、タブレットとタッチペンを使うデジタル作画の制作現場への投入も始まりました。
デジタル作画であればより均一な線を描き、さらに拡大機能を使えば細かな線を描くことも可能です。理論的には、4Kに対応する作画は可能かもしれません。
ただそれはアニメーターにかなり過酷な仕事になり、作画にかかる時間、コストを増大させることは間違いないでしょう。
 
4Kに対応できる手描きアニメは技術的に可能かもしれません。むしろ技術的に可能かどうかよりも、こうしたコストをかけて作品を制作して視聴者に届けることが、システムとして成り立つのか、コストが合うのかが問わるのでないでしょうか。
それは人類が月に人を送り込む技術を持ちながら、1972年のアポロ17号以降、50年近くも月に誰も降り立っていないのと同様です。技術的に可能と、実際にやれるには大きな違いがあるのです。

ここでご案内をひとつ。
4Kに限らず、アニメ業界では「AR/VR/MR」、「AI」、「5G」など最新の技術の導入を目指すニュースが昨今増えています。
果たして、それらはどこまで進んでいるのか? 実現性はあるのか? 
ゲームAI研究・開発の第一人者の三宅陽一郎さんとアニメプロデューサーの平澤直さんがずばっと答えるイベントCOMEMOxアニメビジネス NIGHT OUT第5回「アニメxテクノロジーの進化と最新動向」が2月27日に大手町の日本経済新聞本社2F SPACE NIOで開催されます。

https://eventregist.com/e/comemo227

ご興味あるかたは是非、ご参加ください!


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