記事一覧
短歌5首連作「砂利道」(『西瓜』第十一号「ともに」欄投稿作品)
神様の値段は人が決めていて七百円の白いおまもり
分かりたいではなく分かりたかったのだもうすぐ君の歳に追いつく
生き方の問題ですか満ち干きの問題ですかほんの小舟の
碑があってなにかの跡であるらしい舗装路まっくろな舗装路
砂利道で勝手に鳴る自転車のベル うるせえ、こっちは生き急いでんだ
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門脇篤史さんに評で5首めにふれていただきました。ただ、7号と同じような言葉で評し
短歌5首連作「さっきまで今だったのに」(『西瓜』第十号「ともに」欄投稿作品
まず髪を切ることにする葬式は週明けの月曜日になった
はじめての慶弔休暇申請の紙が明朝体でよかった
死冷とは死体が常温になることドライアイスで処置される祖母
叔母さんは笑っていたがその顔でずっと仏間を離れなかった
過去形で話すとほんとに死んだみたい なぜかツツジが嫌いだったね
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西瓜十号に投稿しました。
初めて、どなたからも言及を頂けませんでしたが、二首めなんかはけっこう気に
観たことのない映画のタイトルで短歌50首
Twitterでわたしが見たことのなさそうな映画のタイトルを募集したところ、実に50タイトルを出題頂きました。そしてなんと、全て観たことがありませんでした……。
「観たことがない映画のタイトルを詠み込む」という企画ですので、どうしても詠めないときは観ればいいということになりますが、はたして……。
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君と僕だけの時間があればいいリトル・フォレストで迷うのも好き
パーマネ
短歌5首連作「冬の雨の夜」(『西瓜』第九号「ともに」欄投稿作品)
死なないを選んだ人生の終わりも死であることの冷たい線路
いつまでも仕事が苦手 終点のとなりの駅の踏み切りの音
辞世は母に伝わるだろう泣かせずに済む歌がなく口笛ならす
濁流がここまで来たと示すため胸のあたりに刻んだタトゥー
トンネルを抜けても冬の雨の夜 明けない、やまない、春にならない
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中原中也に同名の詩がありますが、完成後に知りました。
「抜けないトンネルはない」「春が
【姿煮の自選短歌まとめ】
【うたの日】
ドブ川にウォッカを飲ます 魚には悪いがおれも悲しいもんで
2022年04月02日『ウォッカ』
激情に傍聴席をあとにして栃の並木の濃い陰を行く
2022年06月08日『聴』
扇風機、線香花火、先輩は補欠のままでよかったんすか
2022年06月17日『「せん」を三回詠み込んで』
遺される側の悲しみしか知らず夏至をまたいで続く長雨
2022年06月21日『夏至』
ばあちゃんが痛い
春風(しゅんぷう)の半濁音のひと息で散ってしまえる花になりたい/茅野
うたの日無冠の短歌を紹介するシリーズ第0回
2022年04月15日『春風』の一首
わたしが茅野さんを知った一首です。
春風の半濁音に心がざわつかされる思いがして、ただこのむず痒いような感覚を味わっていたいと思うのですが、それでは評にならないので、野暮なことをいろいろと書いてみます。
ポイントは結句の「なりたい」だと思っています。花で「ありたい」のではなく、いまは花ではないと自分では思ってい
#無冠短歌評100 全首一覧
1.
草原が香り立つよう 換毛の猫をとくとき私は庭師/内田
2022年07月05日『庭』
2.
残業をしつつ子を持つ父同士話すことあり互ひの育児/高橋良
2022年03月17日『残業』
3.
雨、元気だつたか、おまへに食はれるのならば左の耳朶がいい/ほのふわり
2022年05月10日 『 自由詠 』
4.
日蝕の空を仰ぎて叫ぶとき隧道となるキリンの喉(のみど)/茂泉朋子
2022年05月21
葬式でなぜ泣かないと叱られた 寝顔は花より白い わかんない/瑞野透
うたの日無冠の短歌を紹介するシリーズ衝撃の第101回
2023年02月07日『自由詠』の一首
一旦貶すみたいになりますが、3句まではそれだけ読むと説明的でありきたりとも思えます。葬式で泣けなくて、怒られている。物語としてならなんだか聞いたことのある場面。アンサーとしての結句「わかんない」までの距離も近いと思います。そこに驚きはないかな、と。すると、やはり「寝顔は花より白い」の表現と位置が抜群に
国葬の日は祭日にしませんか、祝日と言うと語弊があるので/深山睦美
うたの日無冠の短歌を紹介するシリーズ第100回
2022年08月20日『祭』の一首
かっこいい。上の句だけ読むと一瞬、シンプルに国葬賛成なのかなと思わせて、祝日だとお祝いしてるみたいじゃないですか、と言うことを提示します。言ってることはそれだけなので、賛成とも反対ともなんとも言っていません。
しかし、そもそも政府側は「祝日にしよう」とは言ってないんですね。ということはこの歌は、大前提として作中
鏡には髪を切られて若返るわたしと左に回る秒針/RUKA
うたの日無冠の短歌を紹介するシリーズ第99回
2022年10月08日『回』の一首
発見も、組み合わせかたも良い一首だなと思い選びました。
美容院かなあ。実は場面は書いてないので、家とかだと解釈してもおかしくはないんですけど、「若返る」のワクワク感が美容院だろうなと思いました。
鏡では秒針が反対に回っていきます。ということは、鏡のなかでは時間が逆行するはず。その発見を美容院に重ねることで、
ガソスタの匂いなら好きだよ 俺ら分かり合えなきゃだめだったかな/藤井
うたの日無冠の短歌を紹介するシリーズ第98回
2022年11月07日 『 合 』の一首
「ガソスタの匂いなら好き」を共通点として読むか、相違点として読むかで解釈が変わってくると思うのですが、どちらでも同じように胸に来るものがあると思います。どう考えても先に何か会話があって、短歌としてはそこを描かないことを選んでいる。野暮かもしれませんが、すこし、この場面に至るシーンを想像してみます。
共通点
本棚と本棚の間に本が収まっている 収まってない/青山祐己
うたの日無冠の短歌を紹介するシリーズ第97回
2022年12月13日『間』の一首
青山さん、リフレインが印象的な歌人です。同じ動詞を繰り返すパターンが特に多いですかね。今回は、「本棚」「収まって」のふたつを繰り返しています。これでちゃんと歌として成立しているのがすごい。
たしかに、本棚の間に本を入れているのは「収まっている」と「収まっていない」のふたつの相反する状態を兼ね備えていることに気づ