彼とわたしの-4-

彼は緊張して車を止め、急いで降りて挨拶した。

私もつられて車の外へ。

お爺さんは少し不思議そうな顔をした。

だって、彼はまだ健在だった革靴を履き、
Tシャツ、ジャケットの上にプルオーバーを羽織り、
ブーツにコート、マフラーを巻いてのいでたちで、
即席仕立ての初心者その者は丸見えだったのだから。

彼は念入りに念入りに何度も何度も串を刺し、
焼き具合を確かめて、穴ぼこだらけの焼き芋を袋に入れて秤にかけた。

「650円です」

「えっ!!そんなにするの!!」と驚いたのは私。

納得した顔つきで、お金を差し出したおじいさんは、
ホクホクと温かい包みを孫に抱かせ、
にこにこと笑いながら帰って行った。

暫く見惚れていた彼と私は、ほっと安堵の笑顔になり
再びいそいそと車の中へ・・・

こうして始まった焼き芋生活は、
師走の年が暮れるまで続いて行くのでした。

ある時は商店街、ある時はイベント会場の片隅へ・・・
人の行き交う中、車を止める場所を確保し、
昼から夜へと場所を変え、出没して行きました。

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