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2024ファジアーノ岡山にフォーカス5『 ≫≫雨の歴史から晴れの歴史へ≪≪ 』J2 第1節 vs栃木SC戦



1、相反する同義〜表裏一体〜


 岡山のJ2の歴史を振り返った時に、J1という目標に戦ってきたシーズンがほとんどであったことを考えると、岡山のJ2の歴史は、今朝のように凍てつく涙と共に歩んできたと言えるのではないでしょうか。

 岡山で多くの選手が、サポーターが、このチームで、J1に昇格したいという想いのもと戦ってきた。しかしながら、岡山は一度たりともJ1という舞台に辿り着けたことはない。

 勝利や昇格以外に価値を見出して、戦っていた時期もあったが、多くの選手やサポーターが涙する中で、また一人また一人と、岡山を去らなければならなかった。

 サポーターにとってもスタジアムに行きたくても行けない事情でやむなく断念した方も多かったはずだ。

 サッカーの可能性に夢を見出して戦ってきたが、現実は時に残酷である。

 だからといって、その時は、想いは結果こそ手にできなかったかもしれないが、決して無駄ではない。

 結果を積み重ねていくことができる通り、想いも膨らんでいく。次世代へと想いは継承されてきたのだ。そう、夢には続きがあるのだ。

 そして、”結果“で流してきた凍てつく涙は、厳しく険しい「頂」という”結果”が目標でも、”結果”で晴らすしかない。

 しかしながら、今日の栃木戦の完勝も、3-0という結果でしかなく、38試合の中での1試合の1勝でしかない。

 そこにドラマや想いがあっても、数字上は全て同列の結果でしかないのだ。

 しかし、その結果の重さは、想いの中では同列の結果ではない時もある。

 「結果」と「想い」は全く相反するものではあるが、想いは結果に大きく影響する要素として、サッカーの勝敗に左右するぐらい表裏一体といえ、密接で切り離せないものである。

 また、岡山が強いから完勝できたと言えるかもしれないし、3-0という得点を積み重ねて得た3-0という結果に留まるかもしれない。

 前置きが長くなったが、この1試合をスギさん的な視点で振り返りたい。

2024 J2 第1節 ファジアーノ岡山 vs 栃木SC

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2024ファジにデータでファーカス1
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J2第1節 岡山 3-0 栃木 レビュー
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2、予測と幸運の再現性〜徹頭徹尾〜


 この試合で、岡山が3-0というスコアを実現できたポイントとして、GKからFWまで、チームコンセプトをチーム単位で実現(再現)できたことにあるでしょう。

 岡山は、木山ファジのここまでの2年間目指していたテーマが、相手陣地でプレーする時間を増やして、失点を少なくして、得点を増やすということを一貫して続けてきています。フォーメーションやスタイルや選手が多く変わってきた中で、この3年目の木山ファジでは、それをより色濃く実現できていました。

 対する栃木は、屈強なDFラインで跳ね返して、強力な2トップで起点を作って、攻撃の形を作って行くシンプルな方法で、攻撃の形を作ることを”模索”していました。そこに、明確な守備の方針があっても、”再現性”の高い攻撃というのは、49スベンド・ブローダーセン 選手のタッチ数を考えても、まだ構築している段階で、そこが小さいようで、この日の岡山に対しては、かなり大きい影響力があり、栃木にとっては難しい試合になってしまった側面はあるでしょう。

 とはいえ、後半途中から出てきた9イスマイラ 選手を抑えることは、個人では、できていたとは言えないかもしれませんが、マークに付く選手、フォローに行って囲い込んで奪いに行く選手、競り負けた時に備えたポジショニング。ここを各選手が個人で90分間やり遂げたことで、チームとしての優位性をほぼ90分間持続できた理由であることは間違いないでしょう。

 その中心にいたのは、中盤では、24藤田 息吹 選手で、90分間で、大きく分けて3つの守備でチームを助けていました。

 1つ目は、シンプルに寄せて行く事で、遅らせたり奪いに行く守備。2つ目は、ドリブルで岡山のゴールへ近づこうと前進を試みる選手に対して、並走したり追いかける事で、フリーの状況を作らせない守備。3つ目は、予測したポジショニングで、セカンドボールを回収したり、パスをカットすることで、岡山のマイボールにする守備。

 これを90分間通して、途切れることなく続ける事で、栃木の攻撃の時間(フリーでボールを持てる状態)を、中盤で大きく制限することができたと言えるでしょう。相方の14田部井 涼 選手もハードワークこそできるものの、どちらかと言えば、攻撃的な選手で、守備の負担が軽くなる事で、チャンスメークできるシーンが増えました。14田部井 涼 選手が、キャンプのTMから好調であるのは、24藤田 息吹 選手が、90分間守備で、効いていたからであることは間違いないでしょう。

 そして、DFラインの18田上 大地 選手の攻守一体のプレースタイルもチームを助けました。この試合で最も危険であったセットプレーでのクリアや的確な状況判断のカバーリングは、栃木の前線の強さを活かしての攻撃での万が一も許しませんでした。

 DFラインで、状況判断に優れる選手が、真ん中にどっしり構えた事で、左右のCBがプレー判断も迷いなくプレーできました。昨年は、DFラインに相手クラブのプレスが襲い掛かり、43鈴木 喜丈 選手でも圧力を受けた中で回避するプレーと前に出すプレーが求められていましたが、4阿部 海大 選手の両選手が、前を向いて、余裕を持って(狙いを定めて)前進できるパスができたり、完全に局面に限れば、第3の選手としてオーバーラップすることで、完全なフリーの状態で、攻撃に加わるという分厚い攻撃を可能としていました。

 栃木も、そういった組み立てる形をDFラインで作られしまうと、この試合のように、自陣に押し込まれてしまうので、なんとかハイプレスを仕掛ける局面を作ろうとするトライが、何度かあったと思いますが、予測に優れる選手が、防衛線を何重にも築くことで、栃木の強さや速さを活かすというシーンは、本当に限られて、局面で勝っても人数が足りなかったり、繋がらなかったりと、完全に攻撃が分断されることも少なくありませんでした。

 岡山のこうした徹底した「予測」は(セットプレーで危ないシーンこそあったが)「幸運」と言われる形での得点すら許さない試合にすることができた試合と言えます。

 イメージ的には、中盤で、遊撃隊のように縦横無尽に自由自在に守備に奔走することで、栃木の前進を阻み、そこが突破されたとしても何重にも柵という防波堤を18田上 大地 選手が構築し、そこで攻撃を失敗に終わらる。そこを仮に突破してもスピードを吸収することができていました。

 この試合では、ハイボール処理以外は、あまり出番こそ少なかったですが、最後には、49スベンド・ブローダーセン 選手という城塞で、ゴールを死守することができるという非常に強固な守備の構え(組織)であったように感じます。

 後顧の憂いを断つというサッカーを中盤からGKまでの後方で、再現性が高い安定感のある判断で、徹頭徹尾やり遂げた事が、この試合の完勝を生み出した試合と言えるでしょう。


3、3Dアタック×3~三本の矢24ver~


 岡山が、優位性を確保できたのは、守備だけではない。攻撃でも栃木の対応を困難とするものであった。もちろん、守備の不安というのが、この試合で少なかったする守備がほぼ90分間持続できたので、攻撃に専念することができた部分こそ強いが、個性を引き出す木山マジックが炸裂し、まさしく木山曲線(ファジ造語24に追加)の完勝に繋がった3得点という結果を手にすることができた。

 具体的に選手個人についてまで言及してしまうと、長くなってしまうので必要最低限に留めたいが、3つの3Dアタックをフル動員させた事で、守備を崩壊させることができた。崩壊と言っても栃木はやはり、守備が安定しているチームで、前から行く守備強度が決して低いチームではないし、DFラインも屈強な選手を揃えていて、守備だけではなく、セットプレーやクロスから得点を積み重ねる堅守のチームである。

 この試合でも、岡山は多くの決定機を作って、もっと得点ができても不思議では無かったが、ゴール前にしっかり壁を作るだけではなく、各選手がしっかり最後までやり切る高い集中力が伴った堅守であった事を、しっかり伝えておきたい。

 ただ、その栃木の堅守を持ってしても岡山の攻撃を防げなかったのは、「縦×横×高さ」の攻撃の指針や方向性に縛りというかチームカラーを持たず、各選手の判断(各選手の得意な手段での前進)での崩しを選択できる自由度の高いパスの「繋ぐ→運ぶ→崩す」の三段構えの重厚な攻撃を岡山は、することができた。

 そして「速さ・強さ・巧さ」といった個性豊かな選手が、チームスタイルに一体性を持たせない代わりに、適材適所の選手起用により、様々な形で、栃木のゴールに襲い掛かった。選手には得意な事と不得意な事があるように、攻撃のバリエーションがあることで、個人で対応できる栃木の守備のキャパシティをオーバーさせることで、多くの決定機を作る事ができた。

 とはいえ、栃木にもし攻撃で、前線に起点を作ることがせめて作る事ができていれば、また違ったかもしれないが、前項で力説した通り、ほぼシャットアウトされてしまった事で、攻撃でのストレスを抱えながら、守備では重圧を感じながらプレーをする事を90分間のほとんどで、強いられてしまっていたように感じたので、そう考えると、栃木の3失点は、それでも良く守ったと言えるのではないかと思う。

 最後には、やはり「パス・ドリブル・シュート」といった三大攻撃のパターンが多彩であったことだ。岡山を長く見てきたが、守備で隙が少ない事があったが、攻撃でも苦手なことがなく、各選手の個性が光っていた。

 それこそ、GKの49スベンド・ブローダーセン 選手のビルドアップの判断やフィードの精度もチームとして優位を作る事ができていたことで、悪くないプレー、むしろ良いプレーにも感じたぐらいで、4阿部 海大 選手も目が覚めるような強烈なミドルシュートであったり、43鈴木 喜丈 選手の素晴らしパス交換からのシュート、アシストを記録しても不思議ではない18田上 大地 選手の精度の高い長短のパス。

 全選手が、攻撃時に持ち味を発揮できた事で、栃木を攻撃でも圧倒できた試合でもあった。9グレイソン 選手の得点シーンにしてもシュートを簡単に決めている様で、最前線でオフサイド0のチャンスメークから分かる通り、適切なポジショニングを心得ているだけではなく、GKの逆を突けるコースをしっているからこそ、そのコースにパスを流し込むような得点を可能としているのだ。9グレイソン 選手が、今後の試合で、ゴールとアシストといった記録に残るプレーをどれだけ積み上げることができるのか、とても楽しみに感じた試合であった。

 27木村 太哉 選手も23シーズンまでは、ボールを持ちすぎる傾向にあったが、3-4-2-1ではなく、3-4-3と表現している通り、前線に複数人いることで、シュートという選択肢まで行ける回数が激増している。9グレイソン 選手のポストプレーや19岩渕 弘人 選手のチャンスメークの巧さを相まって、破壊力が倍増している。得点シーンも難しいコースに迷いなく、振り切った事で生まれたチームを勢い付かせた値千金の先制ゴールとなった。

 5柳 育崇 選手にしても、スタメン落ちこそしたが、バックアップではなく、スーパーサブとしての位置付けでの投入で、高さや強度を高めるという守備固めだけではなく、セットプレーの得点源、パワープレー要因などの幅広いタスクを担えるCBとしてのスタートをラストワンプレーでの駄目押しの3点目を決めてみせるなど、試合後の満面の笑みからもチームとしての1つなって、勝利を目指す雰囲気の良さを越えた結束力を新加入選手が、スタメンの過半数を越える6選手であれば、これだけの連動性や勢いを作れたこと。

 内外に向けて、アピールできた素晴らしい試合となったと言える。ここまでの試合ができるのであるのだから、よっぽどのアクシデントがない限り、連携を深めるだけではなく、主軸として期待される選手の復帰もあることを考えると、まだ未完成と言えることを考えると、末恐ろしいスカッドであると改めて感じることができた。

 岡山の「縦×横×高さ」×「速さ×強さ×巧さ」×「パス×ドリブル×シュート」の「三本の矢24ver(ファジ造語24)」は、簡単には折れない。今後の試合でも高い得点力を期待できる開幕戦となった。そして、3トップの意味を理解できる素晴らしい攻撃であった。


4、溢れる希望~夢にフォーカス①~


 語り切れなかった選手については、今後のフォーカスで紹介できればと思っています。最後に、写真を紹介してレビューを終えたい。

ファジイレブンと夢


栃木SCイレブン


27木村選手の得点後


9グレイソン選手の得点後


天候が心配であった中で一万人超え


終了間際の5柳選手の得点


開幕戦のヒーロー


最後まで粘り強く戦った選手を試合後に鼓舞する栃木サポーター


時系列が前後するが、今季こそ!

「27番 木村 太哉 選手」
ホームでスタメンが久しぶりだったので緊張感もあったが、ホームの声援の後押しが力に繋がった。ホームの力はやっぱり偉大だと感じたし、喜びを爆発できる瞬間を分かち合えたことがよかった。

ファジアーノ岡山公式HP
J2第1節 栃木SC戦 監督・選手コメント
より一部引用
URL:https://www.fagiano-okayama.com/news/202402251700/

・試合後アンケート

こちらのデータをメインとしたレビューの方ももよろしくお願いします。

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文章・図・写真=杉野 雅昭
text・figure・photo=Masaaki Sugino


筆者紹介
 冷静さと熱さを両立した上で、自分の感じた事を自分の言葉で表現することを大事にしている。ハイライトやテキスト速報をレビューを書くために確認するが、極力SNSは、情報を遮断して、レビューを執筆している。流石に通知なので、軽く目にすることこそあるが、綿密に分析するというよりは、サッカーというスポーツの魅力を発信することを一番大事にしており、ファジアーノ岡山だけではなく、対戦クラブにも最大限のリスペクトの気持ちで、サポーターとの交流や魅力を語り合うことが好きで、レビューを書き始めて、中断期間や書けなかった試合もあるが、10年以上、ファジアーノ岡山を中心にサッカーのある生活をエンジョイしつつ、応援してきた。


5、アディショナルタイム(ファジ造語24)


『 ≫≫力を出し切る三原則≪≪ 』
「決め切る・勝ち切る・逃げ切る」という課題と語ったGMの服部 健二 氏の言葉から想起した「力を出し切る三原則」という2024シーズン第一弾のファジ造語とさせていただいた。来季を観て行く上で、勝利するために、チームがどう強くなったのか、是非、結果から「力を出し切る三原則」をクリアできているか注目したいですね。

『 ≫≫虹色の右足≪≪ 』
24シーズンがルーキーイヤーとなる24番吉尾 虹樹 選手の右足から放たれるパスやクロス、シュート、プレースキックの全てが、高精度であることをより魅力的に伝えるファジ造語。24吉尾選手の名前の「虹樹」の「虹」があり、「虹色の右足」に相応しい選手であると思います。プロとして経験を積む中で、「虹色の右足」は、大樹のようにチームを支えることができる可能性を秘めていることも間違いないでしょう。

『 ≫≫木山マジック≪≪ 』
固定概念を作らない木山 隆之 監督の自由で大胆な決断により、チームを勝利に導くことができる試合采配や選手起用を指すファジ造語。誰にも思いつかない自由な発想と大体な一手で勝利を手繰り寄せてきた将棋で一時代を築いた羽生 善治先生の一手が「羽生マジック」と呼ばれていたが、そこに由来して、「木山マジック」と命名した。22シーズンは、サポーター間でも浸透した。24シーズンでも聞きたいワードですよね。

『 ≫≫剛よく剛を制す≪≪ 』
「サッカーにおいても剛強なものが、剛強な力によって、無慈悲にも剛強なものを押さえつけてしまうという弱肉強食の世界である」という意味の造語」本来は「柔よく剛を制す=柔軟性のあるものが、そのしなやかさによって、かえって剛強なものを押さえつけることができる」という意味の造語だが、99ルカオ選手のフィジカルが、あまりに凄すぎるので、諺(ことわざ)を弄ることでその強さを表現したファジ造語。

『 ≫≫木山曲線≪≪ 』
将棋の藤井八冠が、AI評価値で、一度リードしたらそのまま最後まで右肩上がりで完勝してしまう強さを表現して「藤井曲線」と言われていました。まさしく、開幕戦の木山ファジの勝ち方のようで、そこを可能にした選手起用やチーム作り、ゲームプランから木山マジックの進化系であり、90分間でほぼ圧倒して勝った時の勝利を表現するファジ造語。

『 ≫≫三本の矢24ve≪≪ 』
以前、ファジ造語として紹介していたが、24シーズンでの三本の矢は、11人で繰り出される隙が無い攻撃(途切れずらい攻撃)の事を指す。木山ファジの特色である選手の個性を引き出すサッカーの下で、3Dアタック×3=「縦×横×高さ」×「速さ・強さ・巧さ」×「パス×ドリブル×シュート」が、その方程式の下で、異次元の破壊力を生み出させる攻撃。まさしく、三本の矢に相応しい攻撃を表現したファジ造語。


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