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スーパーのレジに並んでいて、すごいことに気付いてしまった話

最近、自炊をする機会が多いためスーパーに行くことが増えた。

どちらかというとせっかちな性格の私は、スーパーのレジに並ぶ際にとても強く意識していることがある。

それは、

『どのレジに並ぶのが、最も早く会計を済ませられるか』

ということである。

この気持ちに共感してくれる方は少しお時間いただき、ここから先を読み進めていただきたい。


その日、私はなるべく並んでいる人が少ないレジを見つけて、最後尾に並んだ。

すると、なぜか別の列に並んだ貴女の方が、私より早く会計の順番を迎えている場面に遭遇した。

きっと、この貴女はレジの並び方を熟知した達人なのだろう。

そう自分に言い聞かせ、自分の意思を曲げることなくただひたすらに自分の信じた列に並び続ける私がいた。

…しかしだ。

それにしても遅い。

いや、本当にレジを打つ気があるのだろうか?

素人の私の方が、まだ早くできそうな気すらする。

そして、こんな考えが脳裏をよぎった。

『この列を選んだ、私が悪かったのか…?』

たとえ一瞬でもレジ打ちの方の職務にいら立ちを感じてしまった自分を反省しつつ、次回レジに並ぶときに素早く会計を終わらせることができる方法について考えを巡らせることにしよう。

きっと、私の横の列で既に会計を済ませた貴女も、かつては今の私と同じ経験をしたに違いない。

答えをそっと聞くなどというズルい考えはわきに置き、自らの力で何としても効率的なレジの並び方の極意を導き出そう。

そんな思いを胸に、静かに思考を巡らせた。

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まず、並んでから会計を終了させるまでの時間を構成している要素を洗い出してみる。

並んでいる人数×一人当たりの会計にかかる時間

うむ、異論なし。

5人並んでいて、1人の会計に1分かかるのであれば5分。

もう少し詳しく分解してみよう。

1人当たりの会計にかかる時間は

①自分の番が来てから会計に入るまでの時間
②買い物かごの中に入っている点数
③レジ打ちの方が一点スキャンする際の秒数
④レジ打ち中のイレギュラー対応処理時間
⑤スキャン終了から支払い完了までの時間

なるほど、並んでいる人数以外のこれら要素はあまり気にしていなかった私がいた。
順番にみていこう。

①自分の番が来てから会計に入るまでの時間

おや?
レジ打ちの方を観察していると、順番が来てからすぐにスキャンしない人がいることに気づいた。
ゆっくりと買い物かごを所定の位置に引き寄せ、挨拶をし、ポイントカードの有無を確認し、スキャンを開始する。
丁寧な対応が良いというジャッジもできるが、速度のみを重視した場合、挨拶以外はもはやスキャンと同時並行で進めることができる。
そしてそれを実行している効率的なレジが確認できたので、これは短縮可能だ。

②買い物かごの中に入っている点数

なるほど。
並んでいる人の人数は気にするが、その人の買い物かごに何が入っているのかまでは見落としていた。よく見ると、お菓子とコーラしか入っていない人、一週間分の食材をまとめて買っている人と、かごの中身は様々ではないか。
あまりじろじろ見ると失礼に当たるので少し遠慮する方が好ましいが、こちらも速さのみを重視した場合にはそっと確認することで時間を短縮することは可能だ。

③レジ打ちの方が一点スキャンする際の秒数

これは大切。
そもそもスキャンが下手で、何度やり直してもバーコードが読み込めないほほえましい光景がそれだ。
まだ不慣れな状況で「急いでください」というのはあまりにも酷である。
しかし、とにかく速さのみを重視した場合には胸元の『初心者マーク』がひとつの判断基準になるだろう。
スキャンするスピードが速い人は、前後のタイムロスを挽回してしまう能力を持っている。
要チェックしなければならない観点だ。

④レジ打ち中のイレギュラー対応処理時間

完全なる盲点。
自分の番になって、『レシート交換のタイミングを迎えてしまった!!』という経験がある方も多いのではないだろうか。
こればかりは、レジ担当のイレギュラーへの対応経験を祈るしかない。
ただ一点、事前にレシート交換のタイミングを知らせるアラートがあった。
レシートの横に、色のついた部分が印刷され始めたら交換時期が迫っていることの知らせだ。
このレジで、もうすぐ事件が発生することを予言している。

⑤スキャン終了から支払い完了までの時間

スキャン終了して、やっと峠を越えたと思いきやまだ終わってはいない。
「エコバックはお持ちです?」
「お箸は何膳おつけしますか?」
「お支払いは現金ですか、カードですか?」
このあたりの気遣いを頂ける可能性がある。
これは感謝の想いを持ちながら、先にこちらから伝えることにすればOKだ。
『エコバックはあります。お箸は2膳、現金支払いでお願いします』
スキャンしている間にこちらから自信をもってこう伝えよう。


よしよし、これで次回は会計を早く済ませるレジに並べそうだ。

今回の失敗はいい経験になった。

そう考えながら私のレジの順番が回ってきた。

しかし、レジ担当者のたった一言が、わたしのここまでの思考と今後のアクションプランを全て変えることになる。

『大変お待たせいたしました。いつもありがとうございます。』

(ガーーーーーーーーーーーーン)

…次もこの人のレジに並ぼう。

全然待っていませんよ、時間かかるとか、どうでもいいですよ。
むしろ時間が多少かかるくらいの方が、人間味がありますよ。
そんな効率ばかりの世の中じゃ、味気ないですよね。
え?まさか覚えていてくれたの?本当に??

こうなると、これまでの考えはもはやあまり価値をもたなくなった。

それでもいい。

相手を気遣う一言は、相手の不満すら感動に変える

この素晴らしい気づきを得ることができたのだ。

これからも、私は『なんとなくこの列にしよう』というだけの判断基準でレジに並ぼう。

そう心に決めた、ある金曜日の夕方の話。



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