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冬の夜

2ヶ月前にAmazonで電気ヒーターを買った。そして4日前壊れた。
短い命だった。
電源ボタンに触れても動かない。
業者への問い合わせメールは3日前に送った。
返信はこない。

身長20センチばかりの電気ヒーター。
口を開けたまま、ただただ無言で私を見つめている。

期待をかけてたまに電源ボタンに触れてみるけど、相変わらず反応はない。

動かない電気ヒーターというのは、なんにもない状態よりも寒さを助長させる。
着る毛布は実家に置いてきたし、大判ひざ掛けは洗濯中だし。
仕方なくつけるエアコンは、絶対に設置向きがおかしい。
どうして私のほうに向かないで、浴室のほうへ向いているのか。
エアコンと浴室の間に干された、とっくに乾ききっている洗濯物たちが温風でたなびいている。

洗濯物たちに比べて私はもう凍えきっている。我慢できず部屋着をもう1枚重ねた。
さっさとお風呂に入ってしまえば体があたたまることは分かっている。それでもソファーに横になると眠気が襲ってくる。まぶたが重い。


部屋の電気を常夜灯にして、「10分だけだから寝かせて」と自分に言い訳をして目を閉じる。
目を閉じてすぐ、耳障りなアラームが鳴る。アラームは耳障りじゃないと意味をなさないのだろうけど。
自分でアラームをつけたくせにアラームの音に腹が立つ。
絶対にまだ10分経っていない。だってまだ目を閉じたばかりだ。
そう思ったのにスマホに映し出された時刻は、ちゃんと目を閉じる前の時刻から10分加算されている。

それから「あと10分」を2回重ねて、結局30分が経った。
このまま寝てしまったら体は冷えきり、風邪をひいてしまうかもしれない。
仕方ないからお風呂に入る。


お風呂から上がって、あたたまった体のまますぐさまベッドへ向かった。
毛布にくるまる。とろとろとした毛布は体にうまく馴染んでいく。

末端冷え性だから、足先はもう冷たくなっている。
冷えた足には気がついていないふりをして、ひたすら目をとじた。

明日はどうか、もう少しだけ気温が上がってほしい。
そう思いながら目を閉じるけれど。
きっと明日の朝も、凍った車のフロントガラスを見て絶望するのだろう。

寒いのは苦手だ。

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