👠わたしとパンプス👠
「パンプスなんて履きたくないよ。だって靴擦れするんだもん。」
19歳の時のわたしの言葉。大学の入学式でパンプスを履いて、もう懲り懲りだと思ったのだ。
それから6年。
やっとパンプスを履けるようになりました。
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服の好みは、小さい時から一貫して変わらない。パステルカラーに、ふわふわしたスカート。身につけるものはほとんど薄ピンク。
安くてもかわいい服を着たかった。編み込みをすると綺麗にまとまる髪が好きだった。手と髪と服装には細心の注意を払っていた。
なのに足元はスニーカー。眉毛は整えたものの、メイクもしないすっぴん。ムダ毛処理もしていない。両肩には大荷物。デフォルトのわたし。
だってパンプスだと足が痛い。
感覚過敏で、メイクをすると気持ち悪くなる。
大荷物は全て使うもの。親と折り合いが悪くてね、家に帰れなかったんよ。
全て全て、理由があった。その理由の全てが、自分にとって必要なものだった。
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そんなわたしにも、転機が2回ほど起きた。
1回目は1人暮らしを始めた時。家に好きな時に帰れる。し、この家をどう使うかはわたしの自由だ。無理に外に出る必要がなくなったのだ。荷物はこれで減った。その代わり、家の中は激務も相まってそれなりに雑然としているが。
2回目は初めて彼氏ができ、婚活を視野に入れた今年の夏。
理由は単純明快。彼氏にかわいいと思われたかったから。だって友達は、衛生概念と身だしなみが清潔であれば仲良くなれるからね。服装の問題もあるけどそれはクリアしていたのよ。
でも彼氏なら話は別。かわいい自分でありたかった。それと、20代も中盤に差し掛かり、いつまでもメイクをせず、服のテイストに合わないスニーカーを履いていることが心の奥底で引っかかっていたのだ。
やってみたら簡単だった。
メイクは週末のみに。感覚過敏だし、仕事がメイクする必要がないからね。それなら我慢できる。
パンプスは柔らかくて、ヒールがないものに。それなら簡単に履けて靴擦れもしない。底面が硬いのは……中敷を入れよう。
ムダ毛の処理は……カミソリだと痛いんだ。除毛クリームなら大丈夫そう。
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こうやって、自分のできる範囲のことを、試行錯誤しながら、少しずつ整えた。そしてそれは、自分を気にかけようという余裕と、自分に対する尊重がなかったらできないものだったのだと気がついた。
そこまで気にできないほど、生きることに精一杯だったのだ。
自分を大切にすること、その定義が未だにわからない。が、見た目という自分の1番外側を整えることは、「大切にするからね」という自分に対する意思表明のように思えた。
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それともう1つ。周りからの目。あくまで体感として、の話だが、こうやって身だしなみを整えると、軽く見られることが減った。気がするだけかもしれない。
個人の自由ではあるが、やはり世間一般からの目、常識というものは、生きている限りつきまとう。人それぞれの自由ではあるが、世間一般的に見て、大人の女性はメイクをするし、女の子らしい色合いのフレアスカートに、使い古したスニーカーは不釣り合いなのだ。
再三再四言うように、個人の自由だと思う。でもね、の話。
世間一般から外れた人は、どこかで線を引かれる。「あの人変わってるよね、不思議だね」の言葉で。自分の意思でそれらをやっている、という信条の曲げなさも含めて、ゆるやかに避けられている。
それらも含めて、人と違う道を取るという選択をすること。
ある程度の平均、常識というものは存在する。あなたはそういう暗黙のルールを守れない人なのね、と暗に見なされるのは事実である。
でもね、自分の意思を貫くのも大事よ。周りに合わせることだけが正義じゃないのよ。
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少し遠回りしたけど、無理しないで社会に合わせる方法を見つけたわ。
足元にはパンプス。わたしの服の系統にぴったりだ。
でもね、わたしは、スニーカーで全力で走り回っていた自分も、そこそこ好きなんだ。
偏屈で頑固な自分を愛そう。
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