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時間チケット(ショートショート)

こんにちは、彗星です。今回は、時間が関わるショートショートを書いてみました。ただ、伏線回収が私はあまり上手くないので、少しモヤモヤするかもしれないです。

「時間チケット、入りませんか?1枚1時間、たったの100円です。入りませんか?」
私は1時間の間、いつも時間チケットを売っている。親から受け継いだ時間を引っ張る家で私たちが普段いる時間の延長線にある、自分達の時間を引っ張ってきて液状にし、紙をそこに浸して売る。
使い方は至って簡単。引っ張ってきた所の様子を思い浮かべながらチケットをちぎる。間違った想像をすると、そのチケットは無効になる。
元の時間、というめんどくさいことがあるのは、本来なら時間は過去から未来へ進む1方向なのに、無理やり折り曲げて現在に持ってきているせいである。この時点でも現実から過去に変わる行程は進んでいるので、未来から引っ張ってきた時間も一緒に進んでいる。
時間を引っ張ってきたら危ないのではないか、その頃の時間はどうなるのかと言われると、心配ご無用なのだ。時間は有限ではない。無限にある限り、自然の法則が働いて空いた分の時間を埋めてくれる。逆に言うと、その分だけその人の時間が増える。
「ぼく、かいます!」
小学生ぐらいの子が声をかけてきた。
「どうぞ。この時間は、君がきた1日後の時間だよ。君が明日、何をするか今から決めてね。」
「ぼくは、お母さんに花をかうよ!」
「じゃあ、君が花を買っているところを想像してね。もちろん、明日は花を買ってね。」
「うん!」

僕の名前は盗 身得意。周りからはいわゆる天才少年と呼ばれている。
僕の家には深刻な事態がある。お母さんが重い病気に臥しているのだ。最初は軽く思っていたが、病気が進むにつれて余裕がなくなってきた。
その頃から僕はある情報を取得していた。「時間屋」という店があり、1時間を100円で売っている。これをうまく利用すれば、お母さんももっと長生きできるかもしれない。

僕は試しに一度時間を買ってみた。自分が母に花を買うところをイメージする。このイメージする所が重要ならしく、次の日にはイメージした内容と同じことをしなければならない。小さな誤差は自然の法則が埋めてくれるが、全く違うことをするとうまく歯車が合わなくなるので、その時はチケットは発動しない。
どうやら僕はちゃんと未来にお母さんに花を買うらしい。
(よく考えられているんだな)
イメージした後道を歩いていると、何も変わってないように見えるが、僕の周りの人だけしか普通に動いていない。

時間を売る人は言っていた。
「うまく説明できないんだけど、君が動く時、周りは常にその影響を受けているんだ。だから、君が使う時間の分、君に影響された人たちはその間だけ動く。例えば、君が時間を使っている間、自然の法則…は君には難しいか。この世界の神様が地震を起こすと地震が起きた部分の人は君と動いているわけだからその間だけ動くんだ。」
「へぇ〜。おじさんはなんでも知っているんだね。」
僕はお世辞を言った。
「ありがとう。じゃあ、1時間を楽しんでね。」

僕は、道を歩いている。時計を見ると、全く進んでいない。ストップウォッチを動かしておいた。
(この1時間で何をしようか。)
お母さんの病院へ行ってもよし、友達と遊んでもよし、ゲームしてもよし…
(いや、今はそんなことより、あの時間屋についての情報だ。)
カタカタカタカタ…パソコンを立ち上げ、時間屋についての情報を検索する。
『時間を作る家』色んなサイトがヒットしたが、なかなか核心をついたものが少ない。
いくつかのサイトを開いてみた。全然違う。
(もしかして情報隠蔽とかしているんじゃ。)
そうしているうちにいつのまにか1時間が経っていた。
「あっ、お母さんのところに行かなければ。」
病院に行くと、お母さんはとてもしんどそうにしていた。
「お母さん!!」
「身得意。私はもう、これきしかもしれない。でもお前と過ごした時間は楽しかったよ。いつまでも見守っておくから、人生を楽しみなさい…よ…」
「お母さん…!!」
僕はもう耐えきれなかった。あの1時間をあの時間屋を調べるのに使ったせいで、お母さんと過ごす時間を蔑ろにしてしまっていた。せっかく1時間もあったのに。
「すみませんが、お母さまの体調が悪いので一度出ていただけませんか?」
「わ、わかりました…」

僕は家の中でずっと泣いた。そしてお母さんが生きていますようにと願った。時間屋のところにも行ったが、そこのおじさんに「このチケットは1日一回しか使えないんだ。ごめんね」と断られた。
次の日。お母さんが死んでしまったという知らせをきいた。僕は、もうどうしようもなかった。涙がほおをいくつも流れた。集中治療室で何時間も粘ったらしいが、最後には耐えきれなかったと言う。

僕はお母さんが大好きな黄色いたんぽぽを買い、枕元に置いた。