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ユーザーをあざむくダークパターンの種類-『ザ・ダークパターン』を読んでみて

こんにちは。ちゅうさんです👋
ちまちま読んでいた『ザ・ダークパターン ユーザーの心や行動をあざむくデザイン』。

読んでみると、デザイナーに関わらずサービスに関わる人間全員読むべきじゃ!!って内容。

なので社内外へのナレッジの意味も込めて「ダークパターンとは」「どんな種類があるのか」「そしてどうするのか」などに焦点を当ててまとめています。

あくまで超絶掻い摘んで版なので、理解の入り口にして本を読むのが最適です!

こんな人におすすめ 🙌
・携わるサービスにダークパターンがないか知りたい人
・ダークパターンとはなにか知りたい人
・Webサービス作り、意思決定に関わる全ての人

ダークパターンの概要

ダークパターンとは

ちょいちょい言葉に聞く「ダークパターン」。何かユーザーを騙したり使いにくいWebサービスの要素…というざっくりとしたイメージの方も多いかと思います。

ダークパターンの概念を唱え、名付け親となったUXの専門家、ハリー・ブリグナル氏の定義によると…。

ダークパターンとは、ユーザーを騙して何かを購入させたり、登録させたりするなど、意図しないことを実行させる、Webサイトやアプリで使われているトリックのこと。

https://www.deceptive.design/

ちなみに現在ではDeceptive design = 欺瞞的なデザインと呼称しています。大企業の事例も恥の殿堂として紹介していたりとおすすめ。

ブリグナル氏が「欺瞞的」と呼ぶように、ダークパターンは"意図的に"ユーザー(消費者)を欺き、より多くの「お金を支払わせる」「個人情報を提供させる」「時間を浪費させる」ように設計させています。

"意図的に"…と書いたように、ダークパターンはデザインのミスではありません。慎重かつ巧妙、識別が難しいようにデザインされているのです。

本には更に詳しく背景や各企業が行ってきた経緯、なぜユーザーが使ってしまうのか…なども書いてあるので是非読んでみてください!

なぜダークパターンは作られるのか

なぜ意図的にデザインされるのか?
それはユーザーの利益ではなく、ビジネス側=Webサービスの提供者に利益をもたらすことを優先しているためです。

ダークパターンは出処が不明な情報によって、「購入しなきゃ」とプレッシャーを与えたり、解約などのユーザーの行動を愚かしいと感じさせるような表現を使い羞恥心を植え付けたり(コンファームドシェイミング)し、行動を阻害したり悪意ある誘導を行うことで、認知を歪めて利益を獲得するのです。

シカゴ大学の論文『Shining a Light on Dark Patterns』には、ダークパターンを用いたテストで被験者に「契約していない有料プランを受けいれる可能性」は、ダークパターンなしのインターフェースに比べて2〜4倍の効果があるという実験結果が載っています。

ダークパターンをデザインする企業の意思決定者・デザイナーは、ダークパターンをインターフェースに実装することで(短期的な)効果があることを知っているのです。

ダークパターンは企業の負担を上げ、利益を損なう

企業は利益を上げるためにダークパターンを採用することがしばしばあります。ダークパターンによって、短期的な効果を得ることができるでしょう。ですが、実際のところは企業の負担を上げ、ビジネスに悪影響を与えている可能性が高いです。

■ダークパターンを使うことで生じ得る「9つ」の損失やリスク
①カスタマーサポートの負担増加
ダークパターンによるユーザー・顧客からのクレームが増え、メール・電話対応に時間がかかり、人件費も増加する。

②返品や解約率(チャーンレート)の増加
ダークパターンによって「損害を負った」「騙された」と感じたユーザー・顧客からの返品やサービス解約の可能性が高くなる。返品・返金コストの発生や、負担を巡ってユーザー・顧客とのトラブルに繋がる可能性もある。

③SNS上での炎上やネガティブレビュー(レピュテーションリスク)
ユーザー・顧客がSNSに不満を投稿したり、各プラットフォームにネガティブなレビューを投稿することでブランドや企業の評価が下がる。

④ユーザー・顧客のLTV低下
ユーザー・顧客がサービスを利用しなくなったり、他のサービスに乗り換えることなどが発生し、ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)が定価する。

⑤新規ユーザー・顧客獲得コストの増加
企業・ブランドの信頼性が低下し、選ばれなかったり、説得が難しくなることで新規ユーザー・顧客を獲得するためのコストが増加する。またリピーターが減り、ロイヤルカスタマーからの紹介が発生しにくくなる。

⑥従業員の離職率・人材の採用コストの増加
企業の対外的な評判が良くないことや、ダークパターンによる様々な部門での工数増加のストレスから、従業員の離職率が高まる。また、検索エンジンやSNSで社名を調べた際に、ネガティブなキーワードやレビューが表示される場合、採用時の応募率にも悪影響を与える。

⑦消費者トラブルへの発展(紛争・訴訟のリスク)
消費者トラブルへ発展する可能性が高まる。紛争解決には多くの時間・費用のコストや精神的ストレスがかかり、本来の業務に悪影響を与える。

⑧法律違反・罰則リスク
特定商取引法などの法律に違反した場合、業務改善の指示や業務停止命令などの行政処分が下ったり、罰則の対象となる。

⑨業界全体の信頼度が下がる
ダークパターンを使うことで、当事者だけでなく業界全体の信頼が損なわれる。ユーザー・顧客の警戒心が高まり、今まで以上に広告やマーケティング費用をかけなければいけなくなる。

ダークパターンを使うことはリスクの種を撒き散らすことに繋がります。一度失った信頼を取り戻すことが容易ではないですし、ネガティブな評価は一生付きまとい、ユーザー・顧客は離れていくのです。

ダークパターンは規制の対象に

ダークパターンは放置され続けているのでしょうか?消費者保護やプライバシー保護に敏感な欧米では、GDPR(EU 一般データ保護規則)CCPA(カルフォルニア州消費者保護プライバシー法)などによりダークパターンに対する規制を強化しています。

日本国内でも同様にダークパターンに対する忌避感が高まっています。例えばネット通販などの定期購入に関するトラブルでは、「1回きりのつもりが定期購入だった」「いつでも解約できるはずが、やり方がわからない、電話が繋がらない」などの相談が増加傾向にあります。

消費者トラブルの増加を背景に2022年6月1日には特定商取引法の改正法が施行されました。特に通信販売における「詐欺的な定期購入商法」への対策が強化されています。

これを始まりとして、国内ではダークパターンの規制強化が議論されています。OECD(経済協力開発機構)において複数の国際研究プロジェクトが主導されています。消費者庁はこれらの調査結果をもって、日本の関連法令に必要に応じてダークパターンへの対応を反映させていく方針のようです。

 ダークパターンの種類

ではダークパターンと呼ばれるものはどのような種類があるのでしょう?
この『ザ・ダークパターン』では7つの代表的な種類を紹介しています。

スニーキング_こっそり

スニーキングとはユーザーにとって重要な情報を隠したり、偽装したり、公開を遅らせたりする行為のことです。ここではスニーキングの3つの種類を紹介します。

こっそりカゴに入れる(Sneak into Basket)
ECサイトなどでユーザーの同意を得ずに、デフォルトとして勝手に商品をショッピングカートに追加する行為です。例えば有料オプションがついてきたり、別の商品が附属したりと、ユーザーが気づかないと必要のない支出を被ることになります。

💡対策
・デフォルト選択をせず、ユーザーが能動的に選択・変更できるようにする
・強制するのではなく提案する

隠れたコスト(Hidden Costs)
ECサイトなどでの購入確認時、ユーザーに明示されていなかった予想外の金額を知らされるパターンです。例えば、手数料、配送料、梱包費、税など…。手数料などを隠し、金額を安く見せることで売上的な効果はありますが、代わりに企業の信頼が徐々に減って行く結果になります。

💡対策

・誰もが納得できるコストの明示と説明
・明確かつフェアな料金体系の提供

■おとり商法(Bait nad Switch)
インターフェースを操作するときに、特定のアクションを起こそうとすると、期待した結果とは別のことが起きるのがおとり商法です。よく見る例だと、ゲームアプリの広告を見てDLし実際にプレイすると、広告とは全く別のゲームである…といった例です。

💡対策
・操作に対する反応に一貫性のあるルールを設ける
・ユーザーが操作を記憶でき、重要な意思決定の場面で恐怖しない設計

アージェンシー_緊急性

アージェンシーとは、ユーザーがなにかを決断する際に、過剰に切迫感を演出したり、行動を促すために虚偽の情報をユーザーに提示することです。

■カウントダウンタイマー(Countdown Timer)
ECサイトなどで見かける、「セール終了まで〇〇」というようなタイマーです。ユーザーに切迫感を与え、コンバージョン率を上げることに繋がります。ダークパターンとなるのは、タイムリミットがあるように見えて実はタイマーがループしていたり、何時でも表示されていたりするものです。

💡対策

・切迫感の演出は、ユーザーの意思決定をサポートする役割
・明確なセール、当日発送の締め切りなどユーザーに今すぐ行動するメリットがある場合にのみ使う

■期間限定メッセージ(Limited-time Massage)
よくある期間限定のプロモーションなどですが、ダークパターンはその期間が曖昧で、締め切りがいつなのかはっきりしないものがあります。また何時訪れても期間限定メッセージが表示されていたりもします。濫用するとユーザーの信頼感を失い、本当に重要な場面で振り向いてもらえなくなります。
またユーザーの誤解を招く表記は、景品表示法違反になる可能性も。

💡対策

・社会通念上、セールは「一定期間のみ特別に値引きがされているもの」
・ブランドに与える影響を考慮し、適切に正しく活用する

ミスディレクション_誘導

ユーザーの注意を惹きつけたり逸らしたりし、認知特性を逆手にとって特定の選択へ誘導することです。

■コンファームシェイミング(Confirmshaming)
ユーザーに羞恥心や罪悪感を抱かせることで、ユーザーの感情に訴えかけて、オファーを断りづらくさせることです。選択肢に「はい」「いいえ」で提示するのではなく、拒否の選択肢にのみ「いいえ、節約したいとは思いません」のように偏った表現を使います。
「何もせずサイトを去ろうとしたとき」「サービスを解約しようとしたとき」などユーザーが企業にとって望ましくない行動する際に現れます。

💡対策
・実際に数字的な効果があったとしても、ブランドの長期的な影響があることを理解する。
・ユーザーに敬意を持って接し、偏った選択肢を提示しない。

■視覚的干渉(Visual Interference)
人の認知特性を逆手にとり、色・文字サイズ・レイアウトなどの視覚的要素を利用してユーザーを特定の選択に誘導したり、遠ざけたりすることです。例えば解約ボタンをグレーアウトして使えないという誤った印象を与えたりすることです。

💡対策
・押されやすい色はなく、サービスのテーマカラーに沿ったボタン色に。
・色に頼らないデザインにする。
・企業にとってマイナスな選択時に、一貫性のないデザインを使用しない。

■ひっかけ質問(Trick Questions)
紛らわしい言葉を使い、ユーザーを特定の選択に誘導するダークパターンです。例えばチェックボックスで「公開したくない情報の項目は、チェックしないでください」というように、二重否定などを用いてユーザーの認知を欺き、望んでもないことを約束させたりします。またユーザーは文章は読まず流し読みでチェックボックスにチェックを入れる可能性があるため、オプトインとオプトアウトを混在させてはいけません。

💡対策
・簡潔な表現をして、二重否定などの紛らわしい表現は使用しない。
・チェックボックスのテキストには肯定文を使用する。
・ひとつのチェックボックスでひとつの同意を得る。
・チェックボックスのオンは同意、オフは不同意を意味する。
・一つのフォームにオプトイン方式とオプトアウト方式のチェックボックスを混在させない。

■クリックベイト(Clickbait)
Webコンテンツに扇情的なタイトルや誤解を招くようなサムネイル画像などを用いて、ユーザーにリンクを踏ませる行為のことです。思わせぶりなタイトルを餌にすることから「サムネ詐欺」や「釣りタイトル」とも呼ばれています。

💡対策
・クリック率をあげたくても、リンク先のコンテンツとの連動性や調和を考慮し、中身の伴わないタイトルをつけない。
・リンクはユーザーとの約束であり、約束を破れば信頼や信用を失うことを理解する。

ソーシャルプルーフ_社会的証明

人間が決断する際に、失敗したくない・正しい行動を取りたいという気持ちから、口コミなどの他者の行動を参考にすることがあります。そこで自分よりも周囲の判断が正しいと思い込む心理を悪用し、誤った選択をさせるダークパターンです。

■偽のアクティビティメッセージ(Fake Activity Message)
「1時間前に予約が入りました」「ただいま5名が検討中です」のようなアクティビティメッセージ。それが実はなんの根拠もない情報で、ランダムで適当な数字を表示して、ユーザーを誘導するものです。

💡対策
・ユーザーに正しいアクティビティメッセージを表示し、誤った誘導を行わない。

■出自不明のお客様の声(Testimonials Of Uncertain Origin)
ユーザーが参考にする「ユーザーの声」などを、実際に実在しないお客様の声で作り、商品を購入するように仕向けるダークパターンです。信憑性を高めるためにストックフォトを使ったりし、品質を実際よりも優れていると誤った情報を流している場合もあります。いわゆるフェイクレビューというものです。

💡対策
・レビューは広告に代替する存在、ユーザーに与えるインパクトは大きいため、騙されていることに気づいたユーザーはサービスから離れる。
・ブランドの信頼を失う可能性や、SNSでの炎上リスクやサービスへのネガティブレビューなどの影響を理解する。
・悪質な場合、高額な罰金が課せられる。またユーザーが騙させた結果健康的被害や金銭的被害を被り、訴訟や刑事罰になる可能性もある。
・内部告発の可能性もある。

スケアシティ_希少性

ECサイトなどで商品価値を高めるために、希少性を伝える方法があります。しかし中には虚偽の情報を用いて、人気が高く、品薄になっているように見せかけるダークパターンを用いる企業も存在します。

■在庫減少&需要高騰メッセージ(Low-Stock Messages & High-Demand Messages)
人は品薄商品ほど欲しくなるものです。希少性をアピールすることで「損失回避」に動きます。タイムセールや限定販売、招待制などのアプローチによりユーザーの決断を後押しします。
しかし、豊富な在庫があるにも関わらず売り切れ間近に見せかけたり、売れ残り商品を人気があるように見せかけることで、消費者の選択を歪めるものが存在します。

💡対策
・ユーザーも賢くなっており、希少性を表示したメッセージを信用していないユーザーは増えている。
・購入後に不安や後悔を感じ、長期的な不利益や信頼の喪失に繋がることを理解する。

オブストラクション_妨害

サービスを解約するユーザーを、無理に引き留めたり、わざと煩わしくするなど、特定のユーザーの手続きを著しく複雑にするダークパターンです。

■ローチモーテル(ゴキブリ捕獲器)
Webサービスには入会は驚くほど簡単ですが、退会は著しく困難なものが存在します。いつでも退会可能としているものの、電話対応しか受け付けてなかったり、退会がWebだけで完結しないものなどです。

💡対策
・特定商取引法や消費者契約法でも、解約方法をわかりやすく提示することが盛り込まれる流れにある。
・Netflixの退会プロセスなど、煩わしくない退会プロセスを参考にする。
・退会を煩雑にすることで、ユーザーにとってサービスの最悪の体験になり、炎上や罰則のリスクになることを理解する。

フォースドアクション_強制

ユーザーに無許可でアクションを実行したり、本人が望んでいないタスクを強制するダークパターンです。

■強制的な登録(Forced Enrollment)
企業はユーザーの個人情報を欲しがりますが、ユーザーは個人情報を提供したくないもの。サービス提供者としての立場を利用し、必要以上にユーザーの情報を要求する企業もあります。サービス利用の過程で、無意味なアカウントの作成やメールマガジンの登録を強制したりします。

💡対策
・むやみに「登録」を強いることはダークパターンになり得る。ユーザーは不必要な個人情報の登録に不満を感じている。
・アカウント登録を必要とせずに商品購入できるようにすることで、ユーザーは安心感を感じ、購入するようになる。

■強制的な継続(Forced Continuity)
無料トライアルを試せるサービスは多いでしょう。ですが無料トライアルの解約忘れを狙い、事前の予告や告知することなくユーザーに課金・請求を行うパターンが存在します。中には簡単に解約できないように、意図的に解約プロセスを複雑にしているサービスも存在します。

💡対策
・リマインドメールやプッシュ通知などでトライアルの終了を告げる。
・無料トライアル終了のリマインドメールなどは、ユーザーにサービスへの信頼感を生み、強制継続よりも高い利益を生み出す。

ダークパターンを作らないために

ダークパターンは日々悪意を持って生み出されているものではありません。多くのケースでダークパターンの設計者は、単なる実装者で意思決定できる立場にありません。

CVRを向上せよ、解約率をなんとかしろ、と数字的なプレッシャーにある状態で追い詰められたときにダークパターンは生まれるのです。

ダークパターンを用いる企業は、事業のKGI・KPIを見直し、根拠があり成長できる指標を正しく用い、それを皆で共有していくことを推奨します。

そしてユーザーの不安を払拭するためにも上記で紹介したダークパターンを用いないようにしましょう!



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