見出し画像

うたた寝とキャバレーとそれぞれ

キャバレーで弁士が気合のこもった滑舌を披露している

無声映画は見知らぬ素敵な男女が、ラブシーンのいいところなのだけど

隣の初デート男子は目の前の料理を奏そか一人平らげて眠ってしまった

暗いからかな?

頬杖をついて珍しい弁士の活躍を観察する


鶯谷のツツジの満開の駅に降りて若い

まだ何もかもが途中みたいな二人

あれから何年も経って

隣で寝ていたメンズは雪の中でドローンを飛ばしたよと

スッカリとおじさんのお腹になった風貌で伝えてくれた

なかなか面白い刺激をし合う稀な二人だろうなと思うけれど

私達には何も生まれるタイミングは無かった

そう言えば花屋で成功した破天荒なアイツも

度々連絡をよこすが、女友達にネタをくれるとゆう感じの役割で

その人は好きな人じゃないのねとニンマリ話される

そんなにディスってないし皮肉も混えないのにどうして分かるんだろうとこくびをかしげながら

好きな人の好きな景色だけを切り取るように話して

その方に会いたいわって目がキラキラするようすを思い出した

自分が恋する大好きな部分を撫でるように

ゴシップに飢えた女友達には風貌だけを話すものだから

不思議なのかもしれないな

定期券が売り出される窓口を横目に見ながら

言い訳の要らない友人を人混みに見つけて手を振った


演芸場のようなレストランのようなキャバレーを

急に思い出して

笑いの文化が入れ替わるのに五十年かかって

そのままそっくり寄り添っていた人々の手を離れると聞いてから

それはどこに行って

何が代わりにやって来るのが相応しいか

強制的に休みにした気怠い春の風の午後

目を閉じてまた考えはじめた

おわり

この記事が参加している募集

休日のすごし方

やってみた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?