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【純愛と変態】モテる人、モテない人の違い。

僕と彼は何処となく似ていた。背丈は同じくらいで、ルックスも似たよくなモノで。まるでどんぐりの背比べのような二人。

ただ、決定的に違うのは。
他者から向けられた"好意"の定義。

僕は"異性には全くモテない男"で、彼は異性には結構モテる男だった。ただ、彼は"同性には全くモテない男"で、僕は同性には結構モテる男だった。

この二人の相違点をただただ羅列して書き綴ってゆき。結局僕達は何が、何処が違っていたのか、それを考えてみたかった。

僕らは、出会ってすぐの初日から意気投合し、他とは違う何かを感覚で理解して仲良くなれた。

でも、お互いの思考は異なっていたと思う。

僕は平等的に人と接する事が出来た、他人にはあまり深入りしないし、何か押し付けたりもしない。アッサリした交友関係を好み、広くて浅い関係を望む、その方が自分としても気楽だから。

彼は自分の"我"を強く出したがる。軽いナルシストを感じさせられるから、他人はその滲み出る立ち振る舞いを特に嫌っていた。でも意外と友達想いで、狭いながらも深い関係を好み、気が合わない友達とは連まない。

僕は結構、誰の色にだって染まれる。真っ白な人間だから"その人の色"に染まって寄り添う事が出来たが。

反対に彼は自分の色をしっかりと持っていて。"自分の色に似合わない"そんな他の色とは、組み合わせられない人間だ。

「モテそうだよね!」って言われてたのは僕の方だ、僕はそうやって言われ続けたけどモテたことは無かった。そもそも"モテたい"の欲望もあまり無かった。

「なんでアイツがモテるのか、分からない!」なんて周りに言われていたのは彼の方で、ただ事実モテてたんだから。結局モテるのは彼の方だと思う。

誰にだって浅く好まれるのは僕で。
特定の人に深く好まれるのは彼で。

たぶん人間的に"僕"は好かれていたんだけど、生理的に好かれることは無い。

たぶん生理的に"彼"は好かれていたんだけど、人間的に好かれることは無い。

誰に、どんな風に彼がモテようと僕は彼の事を羨んだり憎んだりもしなかった。それは僕自身、恋愛に関して無頓着な奴だったからだと思う。

側から見ていれば、彼がモテる理由も何処となく僕は分かってた。"彼は思わせぶりが上手"。彼は女の子に自分を意識させることに長けていた。一々、マメな男でも有るし、絶妙な恋愛の駆け引きが上手かったと覚えてる。

きっとそれは、今までにもたくさんの恋愛経験のなかで、付き合う事に必要とするスキルをもう身につけていたんだと思う。

彼は上手くそのスキルを活用し、彼女を作り、裏ではコソコソと浮気をしたりワンナイトを繰り返して、それなりに楽しんでいたと思う。

側から見れば、人の恋心を上手く利用して性欲を満たしていた。そういう風に見えていたし、そういう事だったと思う。

よく男は。女の人との関係で得た経験などを酒場で、コレクションのように自己満足で語ったりする。

プライドの生き物だから。

抱いた、抱いた、は自分の勲章なのだから。変な所で自尊心を保とうと、そういうところが「男は単純」だ、なんて言われるんだと思う。

彼と反対に、僕ってかなり昔からプライドなんてズタズタにされて来た。男の社会で生きていくには、少し嫌悪感を感じるほどに。

プライドの無さが、恋愛に関して直結してしまったのかもしれない。(抱いたって、何にも残んなくない?)ワンナイトなんて特にそう。何も残らない気がした、そんな変な感情を埋める為に頑張る事は"情け無い"と、無駄な時間にも感じていた。

「プライドを守るだけ」
それだけの為に貴重な若さを賭けるほど、恋愛なんかに没頭出来ない。ただ、付き合えば慎重に付き合いをする事を心がけていた。

失わないように。

彼は失う恋愛を繰り返してた。でも、そのおかげで良い恋愛も、悪い恋愛をも繰り返した。それで"変なプライド"や"卑屈さ"が身について、"略奪愛"なんてモノにまでも手を出してしまっていた。

彼氏持ちの彼女にも手を出してたんだから、ますます他者からの評価はガタ落ちしていた。

僕には、それを止める義理も人情も無い男だし興味がなかったから。「まぁ、君がいいならいいんじゃ無い?」なんて適当にあしらってた、ただ今度は僕が標的にされた。

彼とは、その後も仲の良い関係を続けていて。僕の紹介で、彼は僕と同じバイト先に勤めていた。

だから、それだけ彼と僕は一緒にいる時間も長くなって。時に、好きな人の話になったし、僕は彼に"好きな人"を打ち明ける機会が当然にあって。バイト先にいた女の子が気になるかな、なんて僕は彼に言った。

「Aさんが好きかなぁ?」
僕はそう答えたけど、好きかどうか聞かれたら、ハッキリと分からなかった。

「へぇ、あの子のこと好きなんだ。」
彼は興味があるように、僕の話を聞いてくれていたと思ったが。好きな人の話を彼にしたこと、それ自体が間違いだった。

それからある程度の日にちが経った頃、当然僕らは同じシフトの時間に被る。だいたい、そう言うシフトの被った日はバイト終わりの帰り道、二人していつも寄り道して公園に来る。

コンビニでジュースやオヤツでも買って。

大した事のない、くだらないそんな話を公園でよく駄弁ってたけど。そんないつも通りの日常の途中に、彼は不意に「Aさんと手繋いで帰った」なんて僕にその言葉を発して、

それを聞いた僕は正直、ちょっと悔しかったかな。僕は、恋愛に関して臆病な方だから、そんなにアッサリと進展させられて、彼は僕の感情を知っていた筈なのに、略奪までされちゃったら腹が立ったけど。

でもその時に、たぶん僕が苛立ちの姿を見せれば完璧に彼の思う壺のまま、だと感じ。彼の思い描くコレクションの一部にされてしまうのが気に食わないから。

「いいじゃん」って明るく返したけど、それでも彼は僕に怒られなくて。むしろ、僕の裏の裏の感情まで、想像して楽しんでたかもしれない。

彼はきっと知っていた、僕が絶対に怒らない人間だって事を。感情で荒ぶったりしない人間だって分かってたからこそ、単なる出来心で、そんなつもりだったんだろう。

彼と僕と決定的に違う点。
それはプライドの有無が一番大きかった。

彼のような人間は、友達とか親友とか二番煎じの物事よりも。自分の市場価値を特に気にしていると思う。

ただ、もしかすれば、どことなく僕は、彼に嫌われていたのかもしれない。

恋愛で「モテる」の物差しで、僕と比べて自分の優越感に浸りたかったのかもしれない。

僕は、承認欲求とか勝ち負けとかが、無駄な感情だと感じてしまうのは。一つ、こんな経験をさせられたが故に、くだらない感情で様々な大切なモノを人を、自ら見失う人を見て。

「本当にくだらないな。」
って、感じてしまうからなのかもしれない。

だから、僕は余計に他人との壁を作るように繕って。この距離の作り方では、僕は余計に「モテないだろうな」と感じた。

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