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旅する人生の始まり

 1995年、大学時代に初めて渡米し、ダラスとサンディエゴ、そしてデンバーに、合わせて9ヶ月ほど滞在しました。その4年後、アートを勉強するためにニューヨークに移り住み、14年をそこで過ごすことになるのですが、今日は、初めて渡米した年に経験した、忘れられない旅についてお話しします。(私がどうして、アメリカに憧れを抱くようになったかは「アメリカ文学との出会い - 北米への憧れ」という記事のなかでお話ししています。)

 二十歳の夏、 ニューヨークからロスアンゼルスへ、アメリカ大陸を横断しました。
 「トレックアメリカ」というツアーで、世界中から集まった参加者12人が、チームリーダー(ガイド)が運転するバンで移動し、キャンプ場で寝泊まりする旅です。 みんなで野外で料理をして食べることがほとんどでしたが、都市ではレストランで食事をし、ホテルに泊まることもありました。モニュメントバレー、グランドキャニオンなどがあるフォーコーナーもルートに入っていて、アメリカの大自然と興味深い都市の両方を満喫しました。

 私が参加したツアーのメンバーは、イギリス、オーストラリア、イスラエル、南アフリカ、香港などから来ていました。3週間ずっと一緒にいるので、みんな自然と仲良くなります。いちばん仲良しになったのは、イギリスから来た、ショートカットが似合うクールなキャサリンと、イスラエル出身の気が強くて美人のナタリー。ふたりとも私と同い年で、他のメンバーは20代前半、チームリーダーになるためのトレーニングとして参加している60歳に近い男性もいました。イギリス人のチームリーダーは30歳。彼はツアーガイドというよりも、頼りになるお兄さんという感じで私たちと友達になり、旅が終わる頃には、キャサリンと恋に落ちました。

 音楽をガンガンかけながら走り抜けるアメリカ大陸の広大な平野。いつの間にか、車の中で大合唱が始まります。今まで見たこともないほど数えきれない星たちの下で、眠る夜。ニューヨーク、ニューオーリンズ、サンアントニオ、ラスベガス、ロスアンゼルス、それぞれの街が魅力的で、見るもの全てが私にとっては初めてのことばかりで、感動の連続でした。

 でもこの旅において何よりも心に残っているのは、家族のように笑い合ったり、けんかしたりできるようになった仲間たち。そのうちの何人かと、ツアーの終着点ロスから、バスでサンフランシスコまで旅を続けました。夏の終わりには、私たちはそれぞれの場所へ帰らねばならず、地下鉄の改札の前でキャサリンとさよならを言う時は泣きそうになりました。

 この旅は私にとって、忘れられない旅です。
 この時持っていた赤いバックパックと、この後、私は様々な旅に出ることになります。

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