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パタハラ問題から社会が企業に求めるものを考える

皆さんは、『パタハラ』という言葉をご存知でしょうか。

これは、育児休業を取得した父親が嫌がらせを受ける「パタニティー(父性)ハラスメント(パタハラ)」を略したものです。

というのも、先日こんなツイートが話題になりました。

簡単に経緯を話すと、某大手化学メーカーK社の社員である夫が、育児休業を取得したものの、復帰後2日後に転勤を言い渡されたとの内容を奥様がツイートしたことに端を発し、大炎上しました。

また、K社の一件によって世の中に介在する男性の育児休業取得に纏わるパンドラの箱が開き、日本を代表する大手スポーツメーカーの社員からも同様の声が上がりました。

男性の育児休業取得の実態

厚生労働省が4日に発表した「18年度雇用均等基本調査」(速報版)によると、男性の育休取得率は6・16%で、前年度比1・02ポイントアップとなっています。

上昇傾向にあるが、国が掲げる「妻が出産した直後の男性の休暇取得率を、20年までに80%」という目標には遠く及ばないのが実情です。

後述しますが、法律は整っていても、実態ともいえる企業の環境や経営層の考え方が未だレガシーだということが主な要因です。

また、厚生労働省によると、2017年度に全国の労働局に寄せられた労働相談のうち、パワハラなどの「いじめ・嫌がらせ」は約7万2千件に上り、件数は15年連続で増え、相談内容別でも6年連続トップとのことです。

この相談内容の中には勿論、育休取得に纏わるパタハラも内包しています。

合法か違法かが問題ではない

女性に限らず、男性における育児休業取得に関する権利を謳っているのが、育児介護休業法です。

同法第六条にはこう明記されています。 

事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業申出を拒むことができない。(育児介護休業法 第六条)

そして、第十条には次のような文言も記されています。

事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
(育児介護休業法 第十条)

ちなみに、「不利益な取り扱い」とは次のようなものになります。

【参照元】妊娠・出産・育児休業等を契機とする不利益取扱いに係るQ&A

では、法律にうたわれているので、上記に違反した事業主は罰則を受けるのかという点では、現在、次のような形で事業主に制限を課しています。

それが、公表制度過料

簡単に言うと、上記の規定の施行に関して必要があれば、厚生労働大臣は、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができるというものです。

そして、勧告を受けてもこれに従わなかった事業主についてはその旨を公表し、求めた報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、20万円以下の過料という処置によって抑止しているというのが現状の規定です。

実に曖昧な罰則ですね。公表にいたっては、社会的制裁という意味合いのものです。

では、K社の今回の社員に対する処遇はどうだったのでしょうか?

K社の公式見解としては、今回の育休明けの異動内示は育休取得前から決まっていたことで、たまたま内示の時期が育休明けの異動命令となっただけだという主旨のものでした。

つまり、「適法な処置であり、問題はない」

しかし、問題は合法か違法かではなく、従業員家族からこんな話が湧いて話題になっていることにあるのではないでしょうか。

合法を前提に、社員はハッピーなのか

K社が、弁護士や社労士に意見を聞いて、それが適法なのかどうかを改めて弁明・主張したとしても何の意味をなしません。

社員の数だけ生活や家庭はあります。そういった事情を鑑みずに、一律画一的でドライな対応をしたことに社員は失望し、その後始末のお粗末さに多くのステークホルダーが怒りを露にしたということに、K社や世の中の多くの経営者は気づかないといけません。

問題は、合法か違法かではなく、社員や社員の家族の生活にまで配慮ができているか、そういった実態に対して血の通ったケアができているのか、この点についてもっと熟考をしないといけないのです。

K社はこの見解発表によって、厚生労働大臣による公表よりも数倍手痛い、炎上という制裁を受けました。しばらくK社を志望するような学生はいなくなるでしょうし、K社に対する市場の評価も火を見るよりも明らかです。

また、この一件によって社会に投げかけた余波も大きいものでした。男女問わず育休明け労働者に対する処遇についての考え方も然ることながら、企業広報のリスクマネジメントの重要性も露呈した好例でしょう。

つまり、市場や社会は適法かどうかを求めているのではなく、働き手が生き甲斐を持って生き生きと働けるのか、どれだけ血が通っているのかを求めているということでしょう。

絵空事にならない企業理念を

ちなみに、当社はその企業理念に「全社員の物心両面の幸福」を冒頭に掲げています。そのため、育児休業を取得した社員もおり、取得前の役職や部署にそのまま復帰し、今も最前線で活躍している女性社員がいます。

今回の騒動を経て、当社も「全社員の物心両面の幸福」という企業理念が絵空事にならぬようしっかりと社員一人一人の生活や現状への満足度・幸福度を把握していかなければなりません。

それは、制度を敷いているとか、その制度や規定が適法かどうかではなく、社員にとって本当の意味でメリットになっているのか、結論社員がハッピーになるものなのかということを考えないと、絵空事になってしまいます。

ということで、そんな当社は現在プランナーを募集しております。

小さな子供を持つ社員も多数働いておりますので、ご興味のある方はぜひ。

それでは、また。

プランニング室 イナダ



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