マガジンのカバー画像

ポートレートを撮る

18
なぜポートレートを撮るのか、ポートレートを撮るとはどういうことなのかを、最新写真集「nana」を通して話していきます。
運営しているクリエイター

記事一覧

「写真のリハビリ」始めました。

「写真のリハビリ」始めました。

 もう長いこと仕事で写真を撮ってきた。
 依頼があることで、今まで行けなかった場所、普通なら話す機会もない人と出会い、その経験が僕にプライベートな作品を作る助けになっていたように思う。
 
 でも、仕事の写真を撮れば撮るだけ、手垢のようなものがついてきている気がしてならなかった。

 「手垢」について別の言い方をすると、
「他人の価値観による上手な写真」
 なのかもしれない。

 写真のリハビリと

もっとみる
僕のポリシーは勘違いから生まれた。

僕のポリシーは勘違いから生まれた。

 この話は、どこが勘違いなのかが自分にもわからないので、正解を知っている人がいたら教えて欲しいんですが・・・。

 20代半ば、僕がまだアシスタントだった頃、深夜の映画を紹介する番組をぼけっと見ていたら、「華氏451」という映画を紹介していた。

 少し未来のその世界では、国が国民の思想を管理するために読書を禁止していた。当然ながら一部のレジスタンスは、はずれにある隠れた村でこっそり本を読むわけだ

もっとみる
「写真を仕事にする方法」

「写真を仕事にする方法」

 昨晩、写真家の青山祐企さんに誘われて、「写真を仕事にする方法」というテーマで対談したのですが、どうもうまくまとめることができなかったので、noteに自分の考えを今一度整理しておこうと思います。
 ちなみに聴講者はこれから写真を始める、もしくは駆け出しのフォトグラファーでした。

 大分類として、「写真とは」「仕事とは」の二つを考える必要があると思っていて、さらにそれぞれが「マインド」「スキル」に

もっとみる
笑顔だけが「いい写真」か。

笑顔だけが「いい写真」か。

 フォトグラファー・佐久間ナオヒトです。
 今日は僕が駆け出しのフォトグラファーだった頃の話です。
 もう10年以上前の話なのですが、これはいつの時代にも変わらないことだと思うので書いてみたいと思います。
 
 仕事上の写真に限定していうと、「いい写真」とは「必要に応じられる写真」のことだと思います。

 その企業は毎年株主向けに、年次報告書を作成していて、その報告書用の社長のポートレート撮影をご

もっとみる
写真を撮っていて嬉しいこと。

写真を撮っていて嬉しいこと。

 今日からトップ画、作品「Floating Blue」の桜の写真に変えました。
 フォトグラファー・佐久間ナオヒトです。

 さて先日の大雨の週末、母方のおじさん・おばさん達を撮影しました。
 母には7人の兄弟がいて、いとこの数を合計すると15人。子供の頃は毎年お正月にはみんなが集まって大騒ぎでした。

 それでもいつからか、顔を合わす機会も減り、もう数年会っていなかった人もいます。
 
 僕には

もっとみる
その「できる」、本当にできる?

その「できる」、本当にできる?

 今日の話はフリーランスになりたて、もしくは、なろうと考えている人には真剣に考えてもらいたいことです。

 大人になれば、ゆで卵でも、インスタントラーメンでも、サラダでも、自分が食べるものを何かしら一つは用意できるはずです。

 プライベートにおいてこれを「料理ができる」と言っていいかどうかはそれぞれの基準があると思いますが、もしこれが仕事上の会話であるなら、「できる」と答えていいでしょうか。

もっとみる
「再現性」の重要性

「再現性」の重要性

 前回も少し話をしましたがプロとアマチュアでは何が違うかというと「再現性」というスキルにおいてだと思います。

 では何を「再現」するのでしょうか。

 「写真を作る」には簡単にいうと一人で作り上げるタイプとチームワークを必要とするタイプとがあります。そして仕事のほとんどは後者です。

 その際まず、打ち合わせ」とうプロセスを必ず経ます。
 「打ち合わせ」とは言い換えるなら、自分の頭の中を相手に理

もっとみる
「撮影」とは「時間」との戦い

「撮影」とは「時間」との戦い

 インスタグラムなどでアマチュアの方の写真に沢山の「いいね」がついて、機材も手軽に入手・使用できる時代に、「プロとアマチュアの違いってなんですか?」っていう質問を時々見かけたりしますが、僕の回答としては、「再現性」(ネイチャーやスポーツの分野においても)であり、その中には「時間との戦い方」の違いがると思います。

 「人はいつか死ぬ」的な年単位ことから「陸上100m走」みたいなコンマ数秒の世界まで

もっとみる
「孤独」の意味

「孤独」の意味

 先日一人で西川美和監督作品 映画「すばらしき世界」を観てきた。

 ネタバレしないようにふわっと書くけど、相対する二つの価値観、例えば正義と悪、みたいなことを考えさせられたんだけど、もう一つ「孤独」というメッセージを受け取った。

 で、受け取った次に考えた。「孤独」の対義語はなんだ、と。

 「連帯感」「一体感」「群衆」「愛」などなど。

 検索してみると、僕と同じように「孤独」の対義語を探し

もっとみる
真ん中がわかる男

真ん中がわかる男

 昔、ネスカフェ・ゴールドブレンドのコピーで「違いがわかる男」というのがありました。今日のタイトルはそれをなぞってるだけで、女性蔑視や、男はこうある「べき」論を展開しようというわけではありません。

 仕事をしていると、自分の強みに関して考えたり、人から聞かれたりすることが多々あるのですが、僕は「平凡であること」が強みだと答えています。「平凡=真ん中」、的な。
 
 インターネットの世界では、ユー

もっとみる
木村伊兵衛賞作家にならんだぜ。

木村伊兵衛賞作家にならんだぜ。

 先日、建築家の友人から写真が送られてきました。
 今年7月にオープンした「こども本の森 中之島」( https://kodomohonnomori.osaka/ )に僕の写真集があったとのこと。

 左は本城直樹さん( http://honjonaoki.com/ )、右には川内倫子さん( http://rinkokawauchi.com/ )、写真に写っている他の棚には川島小鳥さん( http

もっとみる
ゲンフウケイ

ゲンフウケイ

 「SNSといえばFacebook」みたいなことをいうとおじさん的な感じがする昨今、LINE、Twitter、インスタグラム、TikTokなどなど、枚挙に暇がありませんが、バーチャルSNS「cluster(クラスター)」なるものがありまして、本日からここのバーチャル空間で写真を展示いたします。
(オープニングイベント 11月11日(水) 19時〜20時 どなたでもご参加ください!)

 アカウント

もっとみる
コンセプトの落とし込み方

コンセプトの落とし込み方

 ・「大切な人」
 ・「東京の原風景」
 ・「時間を超えてみているもの・こと」

 最新作「nana」のコンセプトをこんな風になんとなく意識し出した頃から、早速撮影を開始した。(前回の記事)

 元々40歳をきっかけに「これまでの自分の歩みを振り返りたい」と感じていたことがベースになっているんだけど、

 ・「大切な人」=恋心
 ・「東京の原風景」=中央線の風景

 と置き換えて、振り返る気持ちを

もっとみる
作品の作り方

作品の作り方

 僕の最新作にして、三冊目の写真集となった作品「nana」を通して、作品の作り方の一例をご紹介します。何かの参考になってくれると嬉しいです。

 とはいえ、実は大したことがないんです。

 きっかけといえば、僕が40歳になった時に、一度自分の振り返りをしてみたいと思ったことくらい。でもその意識だけは頭の片隅にありつつも、何を撮影してどう表現していいかは分からないままでした。

 そんな時、何に使う

もっとみる