w杯 「日本:スペイン」の映像分析~何とも言えない勝利~

こんにちは、doumo.koncha.です。紹介は以前の記事にてしておりますので今回は割愛させていただいて、早速、日本代表の快進撃について明確な理由を示せたらと思います。

日本勝利の訳と題しました今回の記事ですが、正直なところ私は今回の日本の勝利を素直に喜びきれていません。母国の代表がグループステージを1位通過でノックアウトステージに進む事はとても誇らしいですし、めちゃくちゃ喜んでいます。ただ、この試合をを視点を変えて一人のサッカーオタクとして見ると少し残念な気もしているのです。

ではこの「残念な気持ち」の要因とはいったい何なのでしょうか?
映像分析を行い、いくつかの仮説を立てました。

①森保監督の「後だしじゃんけん」の強さ
②スペインのゲームプランの崩れ
③スペイン代表の若さ、柔軟性の欠如
④ワールドクラスへと成長した三苫の攻守における存在感の大きさ
⑤森保監督の「ほったらかし攻撃」が見事に正鵠を打ち抜いた。

というわけで一つづつ説明していきます。

①森保監督の「後だしじゃんけん」の強さ
 「後だしじゃんけん」とは?つまり、現状に対する采配です。現日本代表監督は戦術に対してものすごくシンプルな姿勢をとっています。悪く言えば大したことを決めていません。今回のスペイン戦も決まっていたことと言えばおそらく、センターサークル手前にプレッシャーラインを敷いていた事、攻撃の最優先事項がDFラインの背後で、その次に鎌田、前田への楔、次にボランチまたは横パスくらいのことだったように思います。(もちろん私の未熟さも考えられますが)
特にポジティブトラジション時の攻撃と守備時の練習は沢山してきたのでしょう。今回、守備ブロックを敷いているときは伊藤純也を除けばほとんどの選手が自身の担当するスペースを空けることはなかったですし、ポジトラ時は多くの前線の選手がスペースを作り出そうと個々が連動していました。
ただネガティブトラジション時の日本は自陣に帰るだけでそれ以上のことは何もありませんでしたし、その意識も選手によってバラバラで、ネガトラ時の勢いのままスペインに攻め切られるシーンが沢山ありました。正直、先発がモラタで助かったというシーンがほとんどです。また、自分たちがボールを保持したときの攻撃についてもお粗末にもほどがあるほどひどかったです。唯一保持時の攻撃で光ったのは久保建英のセンスだけでした。細かく動き直して小さなスペースに顔を出し、パスを交換しリズムを作りながらスペースにボールを運んでいて、バルサイズムの垣間見える瞬間でした。ですがその瞬間も束の間、次のプレーヤーでは無意味で遅い横パスでスペインの守備体勢を整えてしまいました。「選手の問題では?」と思うこと勿れ。その横パスを誘うために縦を先に切り続けるスペイン代表の守備ブロックに対し、「とってください」と言わんばかりのパスを仮にも代表に呼ばれている選手が出すとは思えません。ミスだけで見たら高校生の地区大会レベルのミスですし、スペインは常にこのスタイルを守備時にはとっています。なら考えられるのは、「コーチ陣がわかっていながらあえて伝えなかった」か「わかっていなかった」のどちらかです。こう考えられるほど日本代表の攻撃はノープランに写りました。明確なゲームモデルに「ボール保持」が組み込まれていない事はこれで明らかになりますし、それは大きな問題です。
ここまでの長い批判が何を意味しているのか。それは「敵の油断」です。ドイツ戦もそうですが、前半は決まって正直なめられても仕方がない内容です。スペインの前線のメンバーから見ても「チャンスはいっぱいあるし、温存するで~」の感じが覗えます。結局1-0で前半を折り返して1-2になっても18分までは特に変化もなくこれまでの攻撃を続けていましたが、この余裕を指したのが森保監督の「後だしじゃんけん」でした。後半初めから、三苫堂安を投入。これは今までの日本にはないタイミングで、完璧でした。結果的にこの二人の存在感に押されてスペイン代表は選択肢を絞られ、安全なパスばかりを選択する時間が増え続け、フェラントーレス、アセンシオ、ジョルディアルバを投入せざるを終えなくなり、同じタイミングで富安を投入し、スペインはほとんどサイド攻撃を封じられたような状態になりました。というのも、三苫が再三パスカットを繰り返し、カルバハルを起きざるそのスピードを見せつけたことで、無敵艦隊は左での攻撃をほとんど捨てました。ここがどつぼにはまったきっかけだったのですがそれは②でお話いたします。
今回、スペインに勝利したのは選手の根性と運です。これははっきりと言えることでまったくもって実力ではありません。戦術も技術も敵いませんでした。ですが唯一精神力だけがスペインを上回り、無力さを乗り越えた。そんな試合だったと思います。
我々はようやく「新しい景色」を見る事のできる場所へ向かい始めたのです。
②スペインのゲームプランの崩れ
 ここではそのほかの③「スペイン代表の若さ」④「三苫の存在感」も流れに合わせて記述しますのでわかりにくくなるかもしれませんがご放念いただけますと幸いです。

では、このスペイン代表のゲームプランの崩れを象徴しているのが、前項後半で多少話が出たのですが、スペインが右サイドでの攻撃を捨てた事と前半を1-0で折り返した事です。
 まず前半を1-0で折り返したのは大きな痛手だったでしょうし、予想外の出来事だったのでしょう。実際モラタ、ニコ・ウィリアムズのクオリティでは今回の日本のブロックを崩すには荷が重かったように見えました。ニコ・ウィリアムズは仕掛けず安全なプレーばかりでスペイン代表のリズムを短調にすることが多く、モラタはカウンター以外で目立つ事も細かい動き直しでスペースを生み出すこともなかったです。エリアディフェンスをしている相手に対しての動きとしてはあまり評価は高くなかったと考えます。
おそらく、この2人でも点が取れると踏んだのはペドリとパブロ・ガビ、ダニ・オルモの存在でしょう。ただ、今回のモラタは起点として使うにもエリア内での動きが少なく、1点目もクロスがあまりにも絶品でほぼアスピリクエタのゴールといっても過言でない様なゴールでした。そのため、エリア内に侵入するには押し込んだ状態のドリブルで最低3人は抜くか躱すかしないといけないような状態でそんなことができるのは、全盛期のメッシ、アザール、ロナウジーニョくらいのものでしょう。
そうして攻めあぐねているうちに前半が終わってしまったのです。これは経験も大きくかかわっています。「ここは決めなければならない」「ここで決定的なシーンを作らないといけない」サッカーにはそんなタイミングがあります。それは試合によって全く違いますし、それは経験をたくさん積んで経験から学ぶことで研ぎ澄まされていくものなのです。ですから今回のスペインのゲームプランの崩れの一因としては「若さ」が挙げられます。それが③で挙げた「若さ」の話です。
そしてもう一つは「右での攻撃を捨てたこと」を挙げましたが、これは完全にミスリードで今回の日本代表の穴は日本代表の左サイド、スペインが捨てた右サイドにあったからです。
その穴というのが、守備の話で名前を唯一挙げた伊藤の背後です。
今回の伊藤はフル出場からなのか、良い所なしなのが悔しかったのか守備の意識が非常に低かったです。そのせいで幾度となくダニ・オルモがフリーになっていましたし、フェラントーレスがドリブルを仕掛けた時にはボールウォッチャーになった伊藤純也が空けたスペースにダニ・オルモが入り込みエリア内に侵入するシーンが散見されました。
ではなぜスペインは右サイドを使わなかったのか。理由は単純明快で三苫がそれ以上に恐ろしく、完全に近い形で伊藤の守備をカバーしていました。今回のMVPが三苫でも異論がないほどに彼は日本代表の守備を鼓舞し、前線へ水を運び続けていました。これが④ワールドクラスへと成長した三苫の存在感です。
最後に⑤森保監督の「ほったらかし攻撃」ですがこれは読んで字のごとく「ほったらかし」であることで、ルイスエンリケ監督は対応ができなかったという話です。
そもそも攻撃回数の少ない相手の攻撃を分析するのは容易なことではないのですが、今回さらに「何も決めていない」よく言えば「選手に任せている」ことで一貫性がないのです。
これは完全に盲点でした。
実際得点シーンを見ても一貫しているのは堂安がボールを持っていることくらいで、ビルドアップもエリア内の人数も人もバラバラです。それによって混乱が混乱を呼び、若さゆえに対応しきれず、DFラインが微妙な距離間になってしまうなんてことが起こったのです。
ただ、1点目も2点目も堂安の狙い、ボールタッチポジショニングどれを取っても非の打ちどころの無い物でした。
これで結果が出てしまえば、一周回って「ほったらかし」が現代サッカーのトレンドになるかもしれませんね。

今回はここまでです。いかがだったでしょうか。ほとんど殴り書きですのでお見苦しい点多々あるとは存じますが今後ともdoumo,koncha.のレポート、その他コンテンツをお楽しみいただけたらなと思います。
それではまた。

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