徒然物語44 近未来

「今日、何歩歩きましたか?
3,000歩!?
目標の10,000歩にまるで足りないじゃないですか!
そんなんだから、5キロ痩せるっていう去年の目標すら、未達成に終わるんです!」
 
「ごめんごめん。夕飯の後、ちゃんと歩くからさ。」
 
「絶対ですよ。ちゃんとチェックしてるんですからね!
あと、お昼にカツ丼食べましたから、夕飯は努めてヘルシーなものにしてください。野菜サラダと、ササミくらいがカロリー制限のギリギリです!」
 
「ええっ!?それだけしかダメなの?」
 
「ダメです。医者として、あなたのために言ってるんですから!」
 
「はいはい。わかりましたよ。まったく、厳しい女医さんなんだから…」
 
「…約束、ですからね。わたしとあなただけの約束。破ったら、承知しませんから。」
 
女医さんは、そう言って伏し目がちにうつむいた。

「それもわかってるさ。ありがとう。」
 
僕は、そんな彼女に感謝しつつ、ホログラムを消した。

彼女のために頑張ろう。

そう決心しつつ、ふと我に返る。
 
それにしても、技術の進歩は著しいなあ。
本当に人と対話してるみたいだ。

スマートウォッチの健康管理ホログラム 「スパルタ女医さん」。
厳しいけど、たまに優しいからついつい頑張っちゃうんだよな。

しかし、最近いよいよ人が機械を使っているのか、はたまた機械に人が使われているのか分からないなあ。
 
まあ、便利だから文句ないけど。
 
彼女を悲しませないように、サラダとササミ食べよーっと。

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