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球速に影響する要因 「神5」。

📖 文献情報 と 抄録和訳

機械学習と統計的手法による速球速度のバイオメカニクス的予測

Nicholson, K. F., et al. "Machine Learning and Statistical Prediction of Fastball Velocity with Biomechanical Predictors." Journal of Biomechanics (2022): 110999.

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 近年、野球の投手において、活躍するための重要な要素のひとつに「速球の速さ」が挙げられる。本研究の目的は、(1)速球速度の統計モデルと機械学習モデルを開発し、(2)速球速度の最強予測因子を同定し、(3)モデルの予測性能を比較することであった。

[方法] 高校(n = 165)と大学(n = 62)の野球の投手に対して,3 次元バイオメカニクス分析を実施した.投球シーケンス全体から、合計 16 の運動学的および運動学的予測因子を、回帰モデルおよび機械学習モデルに組み込んだ。すべてのモデルは,10 倍のクロスバリデーションによって内部的に検証された.モデル性能は,二乗平均誤差(RMSE)と 95%信頼区間を用いたキャリブレーションによって評価した.

[結果] 勾配ブースティング機械が最高の予測性能を示し [RMSE: 0.34; キャリブレーション: 1.00 (95% CI: 0.999, 1.001)], 一方で回帰が最大の予測エラーを示した [RMSE: 2.49; キャリブレーション: 1.00 (95% CI: 0.85, 1.15)].肘関節最大伸展角速度(相対影響度:19.3%)肩関節最大内旋角速度(9.6%)踏み出し足最大床反力(9.1%)リリース時の体幹前傾角度(7.9%)骨盤最大回転角速度と上部体幹最大回転速度の時間差(7.8%)が球速に最大の影響を与えることが明らかになった。また,勾配ブースティングは回帰法と比較して,より良いキャリブレーションとRMSEの減少を示した.

2【Journal of Biomechanics】Nicholson, 2022:機械学習と統計的手法による速球速度のバイオメカニクス的予測_サムネイル

[結論] 投球速度に対する踏み出し足の床反力結果、体幹および上腕の運動特性の影響は、投球動作中の運動連鎖全体の相互依存性を示している。コーチ、選手、パフォーマンス専門家は、投球速度改善プログラムを設計する際に、特定された指標に注目する必要があります。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

この研究を読んでいて気になったことは、「そもそも、機械学習ってなぜ必要なんだっけ?」ということ。
球速への要因を明らかにするなら、重回帰分析(多変量解析)だけでいいじゃないか。両者は、いったい何が違うというのか?
その解析のイメージだけ、調べてみた。

✅ 機械学習と統計学(多変量解析)の違い
・機械学習手法は精度追求型:機械学習手法は徹底的に精度を追い求める。高いパフォーマンスを出せば出すほど良い。そのため、アルゴリズムが複雑で中身がブラックボックスであったとしても問題ない。出てきた結果に対して解釈の余地を与えられないことが多い。
・統計学的手法は解釈追求型:統計学的アプローチは現状のデータの構造を可視化し、解釈を与えることの意味を見出す。なるべくアルゴリズムは単純かつ分かりやすいモノを好む。
🌍 参考サイト >>> site.

機械学習は解釈を犠牲にして、精度を求める。
すなわち、今回明らかになった5つの要因は、精度の側面から球速を高めるための「神5」と呼べそうだ。球速を目的とした場合には、特にスポットライトを強く当てたほうがいい5つのパラメータだ。
ただし、考察にもある通り、神5間の相互依存性もあるため、介入の切り口には注意を要する。

以前、同様に機械学習を用いて投球動作中の関節ストレスへの影響要因を明らかにした研究も抄読しているので、そちらも参照されたい(⬇︎ 関連note)。

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