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映画を観た「ロストケア」

介護についての問題。
若者が親の介護のために進学や就職をあきらめざるをえなかったり、小さな子供を抱えた母親が親の介護もしていて、日常生活だけでも精一杯のところ、生活費のために働きに出る必要があったり。それぞれに傍からは見えない苦労や悩みがある。

若者は全てに行き詰まり、悩みに悩んだあげく、自治体に生活保護の申請に行くが、親は身体が動かなくてもあなたは働けるでしょう、と無情にも却下されてしまう。いやいや、それができないから困っているのであって。
それぞれの立ち位置で、どの窓口もどの担当者も仕事は行っているはずだが、杓子定規な対応では救済できないパターンが往々にしてあるのだから、せめてもう少し事情を聞く、状況を確認するなどの対応をしてほしい。映画だから伝わりやすく、無下な対応を表現したのだろうが、あり得る対応かもな、とも感じた。

家族の介護で身動きが取れなくなった人の代わりに、また、介護を必要とする高齢者の気持ちを思って犯罪を起こした主人公。
逮捕された後に検事から事件についての聴取を受けるシーンがある。このシーンのためにその他のシーンがあると思った。
犯人である主人公は、もちろん重大な犯罪を犯しているので罰せられるのが当然なのだが、私はどこか納得がいかない。少しでも罪が軽くなって欲しいとすら思ってしまった。
これ、自分が当事者ならどうなのだろう。

私は父のことがすごく大好きで、何をおいても父のために動こうとすると思うのだが、もし父が認知症を発症し、私のことがわからなくなったら?
介護している私に暴言を吐いたり暴力をふるおうとしたら?
そのせいで自分の家族もほったらかし、仕事にも行けなくなったら?
王様に介護が必要になって、生活が成り立たなくなってしまったら?
・・・なんて考えていくとわからなくなってしまうのだ。

主人公は精神的に異常があったわけでもなく、残虐な性格でもなく、むしろ親身になって介護の仕事に従事していたのに、この行動を悪と捉えていなかった。すべては救うためだと。
ラストに近い、裁判のシーンで被害者遺族が「人殺し」と叫んで退廷させられる場面があった。自分はあんな風になるのだろうか。家族が通り魔にあったとかなら間違いなくそうなると思うのだが、この映画では自分がどうなってしまうのかの想像がつかないのだ。

そしてエンドロールで流れた本作の主題歌は森山直太朗さんの「さもありなん」という曲。

最後まで考えることをやめられなかった映画だった。
そして、未だ私の答えは出ない。

#ロストケア   #松山ケンイチ
#長澤まさみ


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