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【小説】ウルトラ・フィードバック・グルーヴ(仮)

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第一回小説。
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記事一覧

ウルトラ・フィードバック・グルーヴ(仮)①

「君がドアを閉めたら、夜は永遠に続くよ ドアを閉めたら、僕は二度とお日様を見なくてもいい…

すぱのば
4年前
7

ウルトラ・フィードバック・グルーヴ(仮)②(加筆修正版)

 カズマサは左手を制服のズボンのポケットに入れた。そこには、あのカセットテープがある。ポ…

すぱのば
4年前
1

ウルトラ・フィードバック・グルーヴ(仮)③

 放送室は職員室とは真反対の、校舎の一番奥、給食室の前にあった。普段は放送部員以外ほとん…

すぱのば
4年前
2

ウルトラ・フィードバック・グルーヴ(仮)④

 天井の少し下にある四角い箱状のスピーカーからは少しのノイズだけが聴こえてくる。それがテ…

すぱのば
4年前
3

【小説】ウルトラ・フィードバック・グルーヴ(仮)⑤(加筆修正版)

 カズマサの母親は専業主婦。息子に対しても毒を吐くような母親だが、愛情溢れる、明るく快活…

すぱのば
4年前
2

【小説】ウルトラ・フィードバック・グルーヴ(仮)⑥

 一つ目の信号に近づく。点滅していた歩行者用信号が赤に変わり立ち止まる。公園の端にある青…

すぱのば
4年前
2

【小説】ウルトラ・フィードバック・グルーヴ(仮)⑦

 クリーム色の壁にブルーのまっすぐな屋根、扉と窓が一つずつ見える。実にありきたりなプレハブの建物と言えた。横に備え付けられたエアコンの室外機が唸っている。女性は扉を雑に開け中に入ると「ただ今戻りましたよ」と中にいる人間に伝えた。外にいるカズマサからは中の様子はわからなかった。そして閉まりかけたドアを慌てて左手で押さえながら、「あ、そうだ、森野さんにお客さんですよ」と大声で伝えた。パイプ椅子だと思われる金属が軋む音が聞こえ、数秒の沈黙の後、女性の横をすり抜け男がプレハブの外に現

【小説】ウルトラ・フィードバック・グルーヴ(仮)⑧

 あたりは変わらず住宅だけだったが、その視界の片隅に何かが通り過ぎ揺らめいた。カズマサは…

すぱのば
4年前
2

【小説】ウルトラ・フィードバック・グルーヴ(仮)⑨

 その後は男が話しかけてくることはなく、カズマサはレコード箱に集中した。箱の中は年代でも…

すぱのば
4年前
4

【小説】ウルトラ・フィードバック・グルーヴ(仮)⑩

 扉を開け外に出ると、空は薄っすらと赤みがかり、夕暮れ時を迎えてい た。幸福感に包まれて…

すぱのば
4年前
2

【小説】ウルトラ・フィードバック・グルーヴ(仮)⑪

「あ、いや、こちらこそすみません。自分はカズマサって言います。隣町に住んでます」 「この…

すぱのば
4年前
3

【小説】ウルトラ・フィードバック・グルーヴ(仮)⑫

「猫と話したいの、うちの猫と」 突然、帰り道でのナナミとの会話を思い出した。 「猫?」 「…

すぱのば
4年前
3

【小説】ウルトラ・フィードバック・グルーヴ(仮)⑬

「こんにちはー」 何かの間違いかと思うほど店に不釣り合いなヴォリュームの挨拶は、入り口に…

すぱのば
4年前
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【小説】ウルトラ・フィードバック・グルーヴ(仮)⑭

 それから数日は何も起きなかった。もちろんカズマサの頭の中のメリー・ゴー・ラウンドは回り続けていたが、それは早くなったりゆっくりになったりを繰り返していた。何度も「NINe Records」に行きたい衝動に駆られたけれど、さすがに連日訪れるのもどうかと思い、行くのを躊躇していた。  ただ、一日一回は『ガールフレンド』を聴くことが日課のようになっていた。今またカズマサはレコードに針を落とし、自分と彼女とを繋げる唯一の証のような気がしているそのレコードを聴きながら、次の日曜には