すぱのば

小説を書きたくて、あなたに見てほしくて、あなたに褒めてほしくて、あなたに認められたくて…

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小説を書きたくて、あなたに見てほしくて、あなたに褒めてほしくて、あなたに認められたくて、noteをはじめました。よろしくお願いします。

マガジン

  • 【小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット

    第二回小説(連載中)

  • 【小説】ウルトラ・フィードバック・グルーヴ(仮)

    第一回小説。

最近の記事

【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #65

ミキオ君はキミオ君からビギーの件は聞いているらしく、僕たちがやろうとしていることを知っていた。むしろそのことにドレラが「なんで知ってるの?」と驚いていたのが可笑しかった。 おばちゃんが運んできてくれたラーメンを啜りながらスマートフォンをチェックした。 箸をスープの中に落としてしまった。 「ちょっと、どうしたの」 「イギーから返事」 「うそ、なんてなんて?」 君なら画面をそのまま渡すところだけど、今日はミキオ君なので、自力で (ミキオ君も英語ができるかもしれないけど

    • 【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #64

      駅を降りてからぎこちない会話をいくつか交わして、家に着いた。妹は部活だし、母親は仕事だろう。おなじみのシチュエーションだが、出演者がいつもより一人多い。僕はふわふわとした緊張感に包まれながら、ドレラを案内し、お茶を出し、着替えてから自分の部屋に戻った。ドレラはその間特になにをするでもなく正座して待っていた。 僕は机の引き出しを漁り、通帳を見つけ出して、ドレラの横に座った。 通帳をテーブルの上に置くと、それを見てドレラは言った。 「キネン君はお金持ちになりたい?」 「そ

      • 【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #63

        何が起きたのかしばらく飲み込めなくて、世界が静止したみたいに動きを止めてしまった。ドレラも同じみたいだったけど、なんとか口を開いた。 「こんなうまくいくかな?詐欺とかじゃないよね?」 「詐欺なら逆じゃない?口座を教えるからお金送れって」 「そっか、あれ、それじゃ僕たちの方が詐欺やってるみたいにみえない?」 キミオ君が間に入った。 「だからこそイギーは君たちを信じてるって言ったんだと思います。藁にもすがる思いで日本の高校生のことを信じたとも言えるし、必死の現れでもありま

        • 【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット(修正版) #62

          いつの間にか眠っていて、そのまま朝になっていたらしい。 重たい身体を起こし、いつものように支度をして、学校に向かった。 起きてから学校に向かう今まで、スマートフォンを何度も確認したが反応はなかった。 「キネンくん」 改札を出ると、ドレラとキミオ君が立っていた。 「お久しぶりです」 「そんな久しぶりじゃないでしょ」 ドレラが横でクスクス笑っているのを見て、気がついた。よくみたら楽器も持っているし、なんとなくだけど雰囲気も違う気がする。それはキミオ君に会った回数が多い

        【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #65

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        • 【小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット
          64本
        • 【小説】ウルトラ・フィードバック・グルーヴ(仮)
          56本

        記事

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #61

          「彼に気に入られたみたいですね。店の人間にもそんなことするの見たことがないです」 ビギーは急に静かになり、そして鳥籠の中でゆっくり羽を伸ばした。その様子を、ドレラと僕はじっと見守った。進展も質問もなさそうだとわかると、なにかあれば、といって再び店員は去っていった。 「ビギーは本当にすごいね」とドレラは言った。 「ビギーが自由を求めていることは伝わってきたよ。はやく彼を自由にしてあげて、イギーのもとへ返したい。鳥籠を開けて、放してあげたいくらい」 「それはさすがにまずい

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #61

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #60

          「元気そう・・だよね?」 痩せたり太ったりとかもなく、毛並みというか、羽のツヤもよく、生命のエネルギーのようなものを感じられる。もちろんキバタンの健康状態の目安とかなんてわかっていないけれど。 「うん、大丈夫そうな気がする」 彼女は微笑みながら指でそっと鳥籠を撫でた。僕も鳥籠に近づき、様子を伺った。 「ビギー、元気そうだね。君を救うために今頑張ってるところなんだ、もう少しだけ待ってて」 僕が話しかけると、ビギーは左右の足を交互に動かし、体を揺らした。その姿はまるで踊っ

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #60

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #59

          僕たちそれぞれ、短冊に書くことにして。何を書いたっけな」 思い出を辿りながら続ける。 「たしか僕は『世界一周したい』って書いたな。当時、僕は世界の国々に興味を持ち始めて、いろんな国を訪れることが夢だったんだ。知ってる国なんてたかが知れてたけどね。でも、当時は家族旅行で国内旅行したことがあっただけで海外なんて行ったことなかったから、世界一周旅行なんて考えただけでもワクワクしたんだ。」 「ちょっと意外。だけど、いい夢だね」と、彼女は笑顔で答える。 「それで、妹は『ピアノが

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #59

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #58

           午後の授業は現代社会からだった。テーマは科学技術の発達と生命で「生命の尊厳」についての授業だった。重要ワードとしてSOLが黒板に黄色いチョークで書かれて、何の略か考えてみろと、頭頂部が薄くなっていて、銀色の細いフレームの眼鏡(心なしか斜めにずれ落ちている)の男性教員が生徒に向かって問いかけていた。  SOL、なんかの歌で「Suck Of Life」ってあった気がする。suckってどんな意味だろう。まぁ、ろくな意味ではなさそうで、到底答えではなさそうだけれど。考えているうちに

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #58

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #57

          さらに言えば、アルバイトをしてるわけでもないので、なにか策を考えなければならない。丁度よい提案といいながら、それすらもうまく叶えられない自分が情けない。そして、その策というのも昼食代を切り詰めるしかないとわかっているので尚更だ。 「じゃあ、契約成立ですね。謹んで依頼をお受けします。誠意を持って仕事に取り組みたいと思います」 そう言うと、キミオ君がおもむろに僕に近づいてきて、ドレラに聞こえないであろう小さな声で、僕に伝えてきた。 「星野さんのおかげで、家でもドレラが以前よ

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #57

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #56

          席に座り、一通り準備を終えてから、スマートフォンを取り出し、データを移動させておいた昨夜の文章をチェックした。ドレラに見られたらなんだか恥ずかしいので、まだ来てなくて良かったのかもしれない。改めておかしなところはないか見返した。イギーはもとより、キミオ君に変な文章だと思われたくなかった。いちおう先輩だし、こんなもんかみたいにも思われたくない。三回最初から最後まで見返して、自分の中では大丈夫だと認識した。 それにしてもこんなに一生懸命文章を書いたのはいつ以来だろう、ひょっとし

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #56

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #55

          自宅に戻り、少し遅めの夕食を済ませた。部屋に戻って、PCの電源を入れ、 デヴィッド・ボウイについて少し調べた。食井さんが教えてくれたアルバムが相当に有名なアルバムであることもわかったし、イギーとの関係も多少なりとも理解できた。 何よりボウイさんの偉大さが、ネットサーフィンをしてるだけで分かりすぎるほどにわかった。多分それってすごいことなんだと思う。そして動画サイトの検索窓に「david bowie」と入力し、さらに「Moonage Daydream」も打ち込んだ。公式の音源

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #55

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #54

          ミキモト君に聞いてはいたものの、実際に見るまではやはり緊張する。ちゃんとビギーはいるだろうか。ドレラもそれは同じみたいで、表情が硬くなっている。 しかしビギーの鳥籠が近づき、中の様子がわかってくるにつれてそれは安堵に変わる。そう、前と同じ姿でビギーは僕らを出迎えてくれた。いや、出迎えてくれていると思ってるのは僕達だけだろうけど。器用に嘴で毛づくろいをしているビギーの前に僕らは立った。 「ねぇ、私たちのこと覚えてくれてるかな?」 「いや、とうだろう、まだ2回目だし、でも歌

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #54

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #53

          「さすがです、食井さん。私が見込んだだけあります。ありがとうございます」 気がつくと「Moonage Daydream」は終わっていて、次の曲に変わっていた。食井さんは針を上げ、盤をプレーヤーから取り上げ、皿を回すように盤の具合を目で確かめてからスリーヴに戻した。そしてジャケットに綺麗に収めてから僕たちに言った。 「とりあえず1曲だけでもわかってよかったよ。まぁ、いま店にあるボウイのレコードを一枚一枚聴くのもなんだし、家でゆっくり調べてみたらいいじゃないかな。高校生に買え

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #53

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #52

          僕は食井さんの気が変わらないうちにと、ポケットからスマートフォンを取り出し、ピギーの動画をセットしてレジの前に置いた。今日のピギーの動画だ。 小さな画面からピギーの動画が流れ始める。食井さんは腕を組み黙って画面を覗いていた。 食井さんがもしピギーのことを知っているならば、これまでのいきさつを話すべきなのかもしれないが、どうやら知らないようだ。音楽好きだからって誰もがピギーのことを知っているわけじゃない。 ドレラが期待と不安を滲ませながら、食井さんの姿を見つめる。僕は祈る

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #52

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #51.0

          「キネン君にしては鈍いわね」 「いや、全然わかんないんだけど」 「だって、キネン君も知ってる人だよ」 「え、僕も知ってる?音楽に詳しい人?」 「そう」 皆目検討もつかないとはこのことだ。僕の知っている人で音楽に詳しくて、しかもドレラと共通の知り合い。そんな人がいるとは思えない。 「あ、わかった。ミキオ君だ。音楽やってるし、僕も知ってるし」 「ブブー。違うよ」 なぜかとても嬉しそうなドレラ。わからなすぎて混乱する僕。ちぐはぐなまま駅に到着した。僕の家の方か、ドレ

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #51.0

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #50.0

          「なんと、ビギーの歌には規則性があって毎日違う歌を歌うんです」 「土曜日から今日までのデータですから、数は少ないですし、なんとも言えないですけど、少なくとも昨日までは毎日違う歌でした」 「すごいよ、ミッキー」 そんなに長い付き合いではないが、おそらく、いや間違いなく褒められると調子に乗るタイプの男なはず。そしてドレラに褒められるのは正直羨ましく、言いたくないけれど嫉妬している自分がいた。 「しかもですよ、浅野さん、聞いてください、ビギーは歌う時間も決まってるんです。毎

          【連載小説】アナザー・ガール アナザー・プラネット #50.0