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ナイキ / ヴェイパーフライネクスト%2のマルチカスタマーレビュー

はじめに

当noteでは様々なランニングシューズの情報を発信してきましたが、今後は私のレビューだけでなく、マルチカスタマーレビューという複数人によるレビューを不定期ですが、発信していきたいと思います。

レビュアーは私(Sushiman)に加えて、Twitterでお馴染みシューズ好きのしんやさんと、日本以外の海外レースでの実績もあるアジア人のHさんに協力していただき、マルチカスタマーレビューを行うことになりました。

初回は、ロードレースでは定番レーシングシューズとして君臨しているナイキのヴェイパーフライネクスト%2を取り上げます。なお、当記事では各シューズの短所・長所についてそれぞれの見解でレビューを行います。

※ 当記事は口語から読みやすいように要約されています。


ヴェイパーフライネクスト%2のスペック

発売時期:2021年春
重量:191g(26.5cm)
ドロップ:8mm(前足部32mm / 後足部40mm)
ミッドソール:ZoomX(超臨界シート発泡PEBA)

ミッドソールの肉抜きなしで26.5cmの重量が200gを切る超軽量カーボンシューズ。「くびれ」のように中足部の幅がスリムなのが特徴。

Sushiman:なぜ、この1足がヒットしていると思いますか?

Hさん:やっぱり最初にナイキが厚底を出して、それを皆が買って、という流れが良かったですね。最初に牛耳ったのが大きいと思います。

しんや:足作りがしっかりしている人は、このシューズはある意味昔のレーシングの感覚で走れるというところが大きいのではないでしょうか。


長所と短所

【長所】
しんや:発売当初は持っておらず、スケッチャーズやブルックスのカーボンシューズを当時履いていました。(色んなカーボンシューズを履いてきましたが)このシューズは剛性が「黄金バランス」だと思います。そこが、他のシューズとは違う点で、例えば160x 3.0 Pro(Xtep)やメタスピード(Asics)はもう少し硬いです。ヴェイパーやあとUP30 elite(Peak)なんかは中心部の剛性のバランスが秀逸で後半疲れにくいと感じます。足首周りに負担が少なくて、皆さんが慣れやすい硬さですね。

Sushiman:そうですね。確かに、UP30 eliteを履いていた時に、ヴェイパーに感覚が近いシューズだと私も感じていました。とはいえ、UP30 eliteはあまり短い距離は向かないと思っています。その点、ヴェイパー2は3000mや5000mなど短い距離でもガンガン履けますし、例えばMKディスタンスのような非公認大会の3000-5000mでも1番人気のシューズではないでしょうか。

Hさん:そうですね。ヴェイパーはいろんな厚底レーシングの中で1番軽いし、反発性がありますね。ミッドソールの軽さと、その反発性からは見た目以上のギャップがあるシューズだと思います。

Sushiman:ZoomXはやはり優秀で、ストリークフライを履いていても軽いしよく弾むので素晴らしいフォームだと思っています。


【短所】
しんや:アッパーに関して、かかと周りの幅が若干広いので履いてみると緩いです。また、ミッドソールの特に中足部の幅が極端に狭く、トップランナーであれば良いアライメントで最後まで足捌きができるので大丈夫だと思いますが、一般層の方にとってはレースペースでの走りの後半でアライメントが崩れかけた際に、この狭い中足部が接地の不安定さ、走れのブレにも繋がることがあるのではないでしょうか。

ネクスト%2は厚底カーボンシューズの中でも中足部の幅が狭い

Hさん:私は前足部が薄く感じるのと、サイズ感が難しいです。初代ネクスト%もそうですが0.5cmサイズを上げています。でも、0.5cm大きいサイズにしたら走っている時にイマイチ重心が合わないんです。

Sushiman:このシューズが発売された2021年はまだ他社の厚底シューズが多くなかったですが、今では他の厚底シューズと比較するとヴェイパーの前足部は確かに薄めに感じますね。私はそこまで不安定さは感じませんが、市民ランナーの方のコメントでたまに見かける、ヴェイパーの不安定さはこの幅の狭さからくるのかもしれません。安定性というのは、軽量性が高いこのシューズにとって、トレードオフになっている部分という感じでしょうか。


アッパー

エンジニアードメッシュアッパー

Sushiman:初代ネクスト%のヴェイパーウィーブ(TPUアッパー)から、エンジニアードメッシュへのマイナーチェンジで少し重量が増えましたね。

しんや:初代の方がTPUでもう少し剛性があったのですが、2のアッパーは剛性が低く揺れやすくてグラつくんですね。とはいえ、アキレス腱の部分のパッドでロックしていてここがサポート機能の要です。アッパーは初代とのデザイン的な違いで重くなってしまったし、通気性もあまり変わらないのでそこまで機能的でないかなと思います。

ボリュームのあるヒール部分のパッド

Hさん:そうですね。アッパーは初代よりも重くなって劣化したのかなと。私はトレーニングでヴェイパーフライ4%フライニットをよく履いているのですが、フライニットの方が操作性が良いと感じています。そのようなこともあって、ネクスト%2は普段よりもハーフサイズ上げて履いています。

Sushiman:私はフライニットもネクストもサイズが変わらずなので、人によりけりというところでしょうか。とはいえ、確かにこのアッパーは特筆するほどでもなく、普通という感じですね。ナイキのテクノロジーの優位性がネクスト%2のアッパーからは感じられないですし発売当時でもそうでした。


ミッドソール

Hさん:ミッドソールはヴェイパーフライ4%よりも硬くなってきているように感じます。

左:下層は40C / 右:上層は35C付近の硬さ ※ 数値が低くなると柔らかい

しんや:(カーボンプレートの上下の)2層で硬さが違います。上層が35Cで下層が40Cの硬さです。下層の硬度40Cはナイロン系の平均値(37C)より若干硬めぐらいで、多くの日本のランナーさんにとってちょうど良い硬さであると思います。

Sushiman:ヴェイパーフライ4%を初めて履いた時に「なんや!この柔らかいフォームは!」と驚いたことを今でも覚えています。ネクスト%も発売された当時はそこまで硬いようには感じなかったですが、現在ではフューエルセルや飞影PBの巭PROのほうが柔らかく感じるので、ヴェイパーは確かにやや硬めというところですね。薄底時代のEVAが硬すぎたので薄底との比較では柔らかく感じますが、現在の厚底シューズとの比較ではやや硬めかなと。

しんや:ZoomXは超臨界シート発泡Pebaなので接地時のタイムラグが少ないと思いますが、ZoomXはミッドソール内のセル(気泡)がスカスカになっているので、軽い分不安定さはあると思いますね。

Sushiman:諸刃の剣というところでしょうか。中足部の幅の細さも相まって接地時の不安定さは確かにたまに耳にしますし、走っていても安定性が高いモデルだとは思いません。


アウトソール

Hさん:前足部のゴムラバーは硬く感じますね。

しんや:軽く発泡したゴムラバーを貼り付けているのですが、特筆するほどでもなく普通です。

Sushiman:そうですね。アッパーと一緒で特筆するほどでもなく“普通”かなと。厚底シューズの場合は例えばスパイクやトレイルシューズとは違ってそこまでグリップ性能が必要なようには感じないので、フューエルセルRCエリートのようなDSPソールでなくても、雨の時に滑らないような最低限のグリップ性能があれば十分だと思います。


ライド感 / プレート剛性

Sushiman:ヴェイパーのライド感というのはレビューするほどでもないぐらいに皆さんご存知かと思いますが、皆さんどのように感じていますか?私は軽くて少ない力でフワッと前に進めるシューズという感じで、ストリークフライを履いた時もそんな感じだったのでZoomXの凄みを再確認しました。

Hさん:私はヴェイパーはあんまり「乗れる感じ」がしないんです。前足部が薄いせいか「平べったいけど軽いシューズをぶん回している感じ」で、私にとってはそこまで走りやすいわけではないですね。例えば、5000mならヴェイパーフライ4%フライニットの方が走りやすいです。ネクスト%を履くならハーフなら良いかなとは思います。

しんや:予想していたよりプレーンなクッショニングでした。私はそこまでグイッというような助力を感じないですね。

Sushiman:しんやさんは冒頭で話されていたこのシューズのカーボンプレートの縦方向への曲げ剛性に関してどう思いますか?

しんや:カーボンプレート先端の湾曲部分の剛性は硬いのですが、中足部はガチガチに硬くないので私は最後までペースが維持しやすいシューズだと感じます。逆に一貫して硬いプレートだと土踏まずの部分が後半に疲れてきます。ナイキはこのシューズの開発時に緻密にカーボンプレートの硬度の調整をしていると想像できます。ちなみに、メタスピードスカイや160x 3.0 proのカーボンプレートは硬度90D超えでトップクラスの硬さです。ヴェイパーやUP30eliteは88Dのラインになるかと思います。

上:飞电 2.5 Elite 䨻丝(Li-Ning)下:Flow Velociti Elite(Under Armour)
プレート中心部の剛性が比較的低いと、シューズを曲げた時にミッドソール中央上部の○部分がたわむ。この硬さのプレートは足関節への負担が少ないが、その反面では推進力がやや物足りない。

しんや:ヴェイパーのカーボンプレートは中心部(最も曲がりやすい箇所)の剛性が丁度良いですね。(↑の写真のように)プレート中心部の剛性がヴェイパーよりも低い(柔らかい)シューズになると、カーボンシューズ特有の一貫した足裏の反発が弱くなって、試合用シューズとしては物足りなく感じます。ヴェイパーのプレートは硬い部類に入りますが、その中でもトップクラスには硬くなく、皆さんが慣れやすい硬さですね。

上:Vaporfly Next% 2(Nike)下:UP30 elite(Peak)
シューズを曲げた時にミッドソール中央上部が過度にたわまない。適度な剛性で高い推進力がある


総評

Sushiman
総合 9.0(10点満点)
・ライド感 ★★★★☆ 4.5
・フィット感 ★★★☆☆ 3.5
・グリップ感 ★★★☆☆ 3.0
・耐久性 ★★★☆☆ 3.0
・コスパ ★★★★☆ 4.5

世界や日本の長距離トップ選手の多くがナイキからサポートを受けていることもあり、ブランドとしての安心感、信頼感が大きい。そして、ヴェイパーフライ4%の頃とは違って現状ではすぐに購入できる流通量の多さが、定番モデルとしての地位を維持させている。ヴェイパー2はアッパーのマイナーアップデート版で、アッパーやアウトソールは特筆するクオリティではない。しかし、2019年に初代ヴェイパーフライネクスト%が販売されており、現在も2019年当時のテクノロジーが評価され続けていることには驚く。アルファフライとは違って比較的、足首への負担が少ないシューズということが、現在もシェアトップという普及度に少なからず貢献していると思う。

しんや
総合 8.5(10点満点)
・ライド感 ★★★★☆ 4.5
・フィット感 ★★★☆☆ 3.0
・グリップ感 ★★★☆☆ 3.0
・耐久性 ★★★☆☆ 3.0
・コスパ ★★★★☆ 4.0

カーボンプレートの中足部の曲げ剛性が硬すぎず脚に優しく、例えば大迫傑選手がこのシューズを履いているマラソンがあるのも納得できる。とはいえ、初代のヴェイパーウィーブのようなTPU繊維のアッパーよりも剛性が低く無駄に伸びてしまうと感じるのと、履き口周りが緩くラッピング(ホールド感)が弱い。ゆえに、ヒールロックが完璧ではなく私はそこまで軽さを感じない。ラストをもっとアルファフライぐらいにスリムにすればラッピングがもっと良くなってレーシングとして理想になると思う。

Hさん
総合 8.5 (10点満点)
・ライド感 ★★★★☆ 4.0
・フィット感 ★★☆☆☆ 2.5
・グリップ感 ★★★☆☆ 3.0
・耐久性 ★★★★☆ 4.0
・コスパ ★★★★☆ 4.5(セール時)

現状ではスタンダードなレーシングシューズであるけど、ネクスト%2はサイズ感が私には難しくて、私はこのシューズが1番素晴らしいとは感じない。他にも良いシューズがあるので、他のシューズを試すことも重要だと思う。


レビュアーのプロフィール

SushimanStrava
2022年10月(35歳)からトレーニング再開。前回のマラソンは2019年の奈良マラソンの3:40:46。でも、ワンチャン巻き返す予定。

しんやTwitter
シューズ好きの20代ランナー。高校時代に5000mで15:07をマークし、社会人になった現在はマラソンに挑戦するため… 練習再開。

Hさん
日本在住30代アジア人ランナー。日本以外にも韓国、マレーシアなどアジアのレースを中心に走るマラソンサブ2.5ランナー。

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