雨上がり、濡れた木のフェンスと滝のように流れる川の音
日当たりの悪い玄関に、自転車が、まるで思春期の頃のわたしのように放置されている。
その錆びた物体に親近感がわく。
鳥の声と流れ続ける水の音が耳に届く
離れても離れても
水鳥がすぐ横を通り抜けていく。
私は自由だと言わんばかりに。
近くを通る車に不審者と思われやしないかと、帽子を更に深くかぶる。
本当はそんなに飲みたくなかったコンビニコーヒーを片手に、知らない道を歩いていた。
ここは静かだ。邪魔なのは、わたしの声だけ。
お前はもうどこにも行けぬのだと
繰り返し呪いをかける、わたしの。
雲はきれい。当たり前のようにとても。
わたし目掛けて飛んでくる虫を、必死にはらう。吸い寄せられる様にわたしに集ってくる虫達を、人生で何度憎んだか。
大丈夫、わたしは死んだりなんかしませんよ、ごめんね。
少し離れたところから様子を伺っていた犬に、小さな声で謝って、橋の欄干を後にした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?