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アメリカはなぜ社会主義を排斥するのか

”我々の国に社会主義を取り入れようという声に気をつけなくてはならない。アメリカは自由と独立の上につくられた。抑圧や支配、管理の統治ではない。我々は自由に生まれ、自由であり続ける。アメリカは決して社会主義国にはならないと今夜ここにあらためて誓う。”

President Donald J.Trump’s State of Union Address in 2019

初めまして。すずやです。普段は漫画を制作している者です。
私は、以前からアメリカ史に強い関心があり、本稿はアメリカと社会主義について、自分なりに研究、解釈しまとめたものになります。

尚、本稿には政治的意図や、特定の国家や政党への批判的な意図は一切含んでいません。また、当方専門家や学者ではないので、文章や内容自体に稚拙な箇所も多々あると思います。
それらをご理解の上、ご興味がある方は先へお進みください。

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民主主義の中心国家アメリカと、内に潜む社会主義

 1776年7月4日、当時イギリスの植民地であったアメリカがイギリス本国からの独立を宣言し、アメリカ合衆国が誕生した。誕生以来アメリカは、民主主義のもと自由平等を理念に躍進を続け、民主主義の中心国家として今日まで世界をリードしてきた。しかし現在、アメリカ国内では社会主義に人々の関心が集まっている。社会民主主義者を名乗るバーニー・サンダース上院議員は、アメリカのミレニアル世代を中心に人気や関心を集めており、トランプ前大統領はそれに対し、2019年の一般教書演説で真っ向から対抗する意向を示した。

バーニー・サンダース上院議員

また、歴史的にもアメリカ国内で社会主義が盛り上がりを見せた事例が存在することも忘れてはならない。20世紀初頭、社会主義はアメリカ国内で人気を博し、当時のアメリカにおける社会主義政党の代表であったアメリカ社会党は1912年に党員が11万人を超え、大統領選挙ではユージン・V・デブスが異例の得票率6%を叩き出した。一方で、1920年代と50年代に行われた二度の赤狩りは、アメリカにおける社会主義勢力を排斥し、社会党も打撃を受けた。
 ここで示したいことは、社会主義はアメリカに過去にも現在にも存在してきたということ、そしてそれらの社会主義勢力はアメリカ国内で排斥の対象とされてきたということである。詳細は後述するが、19世紀後半から20世紀初頭、そして現在は、ともにアメリカは格差の拡大に喘いだ時代であり、当時のアメリカ社会党やバーニー・サンダース上院議員は国内の労働者や貧困層に寄り添い、社会保障の整備や格差の縮小を目指してきた。社会主義的であれ、彼らの政策はあくまでアメリカに帰属する内容であった。そのようなアメリカのための社会主義でさえ、なぜアメリカは排斥してしまうのだろうか。本稿では、アメリカにおける社会主義に対する認識を歴史学的な視点から考える。その後社会主義がアメリカにおいて求められる理由と社会主義排斥の気風の起因を、社会主義勢力の高まりの要因となったであろう金ぴか時代の概要、そして大規模な社会主義排斥を行なった赤狩りに照らし合わせて模索していきたい。
 また、本稿は19世紀後半から20世紀初頭にかけてのアメリカの歴史や政治を、社会主義を中心に概観していく。アメリカを客観視する際、例えば政治であれば共和党と民主党に焦点が当たることが多く、アメリカの社会主義に注目することは少ない。しかし、アメリカには歴史のいたるところに社会主義の存在が確認でき、現在も社会主義は存在する。アメリカの社会主義に焦点を当てて研究することで、アメリカの歴史や政治に対する視野を広げ、より深い考察を可能にするだろう。

「生まれながらの平等」と「幸福を追求する権利」

 「すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている」。アメリカ独立宣言に記されたこの文章は、アメリカの民主主義の根幹を示している。ここで重要なのは、保障されている平等は「生まれながらの平等」であり、「経済格差の平等」ではないという点だ。社会においては、「自由、幸福を追求する権利」が重要視されており、社会保障の整備や経済格差の縮小を行う義務は少なくとも宣言文には存在しない。この宣言文こそが、アメリカが社会主義を排斥する要因ではないだろうか。社会主義を取り入れることは、宣言文の「自由、幸福を追求する権利」を侵害する行為であるため、社会主義の排斥はアメリカの民主主義を守る行為と捉えることもできる。よってここからは、アメリカにおける社会主義排斥の気風の正体が、アメリカの民主主義を重んじる保守層であると仮説立てて進めていきたい。また、アメリカにおける社会主義を考察するには、アメリカの民主主義への理解なしで語ることはできない。仮説を抜きにしても、アメリカ独立宣言及び民主主義の原則を念頭に置くことが必要であろう。

アメリカにおける社会主義の認識

 19世紀後半から20世紀初頭にかけての社会主義について述べる前に、アメリカにおいて社会主義がどのように認識されているかを理解しなければならない。そのためには、アメリカにおいて社会主義がどのように生まれ、何を求められてきたか知る必要があるだろう。
 アメリカにおける社会主義は、第一次産業革命期の1825年、イギリス最初の社会主義思想家であり社会改良の実践家ロバート・オーウェンによるニュー・ハーモニーの建設の試みから始まった。彼の理想とする「一致と共同の村」と呼ばれるコミュニティは、約1200人の労働者とその子供達が属し、住民は全員が農業に従事した。この試みは、内部分裂や経済的な行き詰まりにより実現はしなかったが多くの賛同者を集め、その影響が勤労者党の結成を促した。勤労者党は、普通選挙権の拡大労働時間の短縮などを掲げ活動を行った。19世紀末には、アメリカ国内でエドワード・ベラミーの社会主義ユートピア小説「かえりみれば」がベストセラー化した。私有財産の国有化により平等な社会が実現した未来のアメリカを描いたこの小説の大重版は、19世紀末のアメリカが社会主義思想に大きな注目を寄せていたことを示している。1901年にはアメリカ社会党が発足した。4年ほどで党員は2万人を越え、11万人を超えた1912年には大統領選挙にてユージン・V・デブス6%の票を得た。アメリカ社会党は地方政治において公園設備の整備や最低賃金の制定、教育の充実化やインフラ整備などを行った。20世紀アメリカを研究している歴史学者の梅﨑透氏はアメリカの社会主義を「アメリカの政治システムを否定することなく、議会民主制にのっとってより公正な社会関係を模索する改良主義的な社会民主主義であった点である。」と評価している。アメリカにおける社会主義の誕生や社会党の理念を見ると、アメリカにおいて社会主義は民主主義の対をなす存在というよりも、民主主義を極端に否定することなく、それに準じた上で社会の平等を目指す思想であると認識されていたのだろう。


長期の金ぴか時代と社会主義

 経済学者ポール・クルーグマンは、自身の著書「格差はつくられた―保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略」にて、1870年代の終わりの南部再建時代から、1930年代のニューディール政策登場前までの、格差が是正されず裕福な少数のエリートによって支配されていた時代を「長期の金ぴか時代」と名付けている。「長期の金ぴか時代」が、本稿で社会主義と比較する時代の期間と重なっていることから、本稿では、ポール・クルーグマンによる「長期の金ぴか時代」という呼称を使わせていただく。

(1)第二次産業革命による労資対立

 長期の金ぴか時代では、労働者資本家が大きく対立した。第二次産業革命によって格差が拡大したアメリカでは、労働者によるストライキやボイコットは急増し、資本家による労働者への不当な扱いや、新式機械の導入による熟練技能者の侵食、それらに対して有効な対処ができない職能別組合に幻滅した労働者によって1869年に結成された労働騎士団は賃金奴隷制の廃止を唱え、1880年代中頃には大躍進を遂げた。19世紀末は、多くの労働者や労働組合が、格差や賃金保障のために戦ったのだ。第二次産業革命期において、労働者の中でもとりわけ打撃を受けたのは熟練工であった。産業革命による新式機械の導入により、熟練工の技能や判断の価値が下がったのである。これを受けて熟練組合は1900年、資本家に対して出来高払い制拒否、徒弟制遵守、組合の仕事保障を主張して抵抗したものの決裂。これによって、それから30年間、アメリカでは駆り立て体制と呼ばれる支配的且つ労働者の連帯を阻止する労務管理体制が敷かれることになった。

(2)駆り立て体制下の労働搾取

 駆り立て体制下の労働環境は以下のようなものだった。労働の機械を進め熟練工を減少、以前熟練工が行っていた調整や管理の機能を職長と監督が吸収、先制的な職長による監視、威嚇、酷使、解雇権をテコに職場規律を維持、労働者の積極性を引き出すため個人ベースの出来高払い制を導入、民族的・人種的対立を利用。また、企業への縛り付けや忠誠心の向上を目指して福利厚生が導入された。

(3)資本家階級による政治

 格差は是正されず、アメリカには低賃金労働者が溢れた。そのような状況で政府はなぜ貧困層を支援するに至らなかったのか。
 南北戦争における北陣営の勝利により、奴隷主権力が倒され、アメリカは急速な経済成長を迎えた。その中で大企業の権力が非常に大きくなり、1854年に労働者のために発足された共和党は、1870年代にはすでに資本家や大企業のための政党になっていた。南北戦争から大恐慌の間に行われた16の大統領選挙の内、共和党が12回も勝利をおさめ、長期の金ぴか時代の多くは保守派の共和党が政権を握っていた。また、有力であったブルボン民主党も、資本家層の利害を擁護した。つまり、政府自体が貧困層を支援することに反対していたのである。そのため、組合の承認を拒絶する資本家たちは、国家権力をもって容赦なく労働者を襲った。具体的には、軍や警察たちが労使紛争において資本家たちに支援を与えたり、ストライキを行う労働者に「法と秩序」の破壊者というレッテルを貼った。くわえて、司法も労働組合に対して非常に敵対的で、労働者の行動の自由を大幅に制限し、資本家の自由を、組合員の自由よりも高い地位に置いた。ポール・クルーグマンは、当時のこの状況をこう説明している。「アメリカの労働者の多くは事実上、公民権を奪われていたのである。1910年、ほぼ14%の成人男性は、アメリカの市民権を持っていない移民であり、投票することができなかった。また、南部の黒人たちも、ジム・クロウと呼ばれる黒人差別政策によって公民権を剝奪されていた。移民と黒人の双方を合わせると、人口の4分の1ほどになり、その層は最も貧困であるのだが、政治に参加することが全く許されていなかったのである。」。つまり、富裕層や資本家層が政治を支配し、低賃金労働者の数が高い移民や黒人の投票権を剝奪することにより、政治による労働者の立場向上の機会を奪っていたのだ。20世紀初頭に、ドイツの社会学者ゾンバルトは「なぜアメリカに社会主義はないのか」という問いを投げかけた。ゾンバルトは、誰もが成り上がる可能性を持つアメリカの物質的豊かさを「ローストビーフとアップルパイ」に見立てたうえで「アメリカにおける社会主義は、ローストビーフとアップルパイの前に頓挫する運命にある」という評言を残した。しかし実際のところ、長期の金ぴか時代において、労働者が格差の是正に対して挑むことは、社会や労働環境の構造上不可能に近かった。そのような気風から必然的に、社会主義思想に注目が集まったのである。

(4)社会主義の台頭と衰退

 長期の金ぴか時代における極端な格差の拡大は、ユージン・V・デブスによるアメリカ社会党及び世界産業労働組合(IWW)の結成を促した。第二次産業革命期の格差の拡大や労資対立は、アメリカ社会党の台頭に大きく影響を及ぼしたと考えていいだろう。
 アメリカ社会党は、労働者の生活の向上の他、人種やジェンダー間の平等、反戦平和を訴え、多くの支持者を集めた。20世紀初頭におけるアメリカ社会党の盛り上がりは、アメリカ史において社会主義が最も注目された事例である。しかし、第一次世界大戦が始まると、参戦について党内の意見が割れ、また、ユージン・V・デブスは参戦反対表明によりスパイ防止法で10年の実刑判決を受けた。ロシアにおける十月革命の評価が党内で割れた際には、社会党内の左派によってアメリカ共産党が新たに結成された。その後もアメリカ社会党は20世紀の社会主義政党を代表する勢力であったが、20世紀初頭の人気を取り戻すことなく、1970年に分裂を迎えた。アメリカ社会党の衰退は、これらのような内部争いや理念による内的要因によるものが大きいが、それだけでなく、保守層による巧妙なアメリカ支配も大きく関係している。
 長期の金ぴか時代についてポール・クルーグマンは「当時のアメリカでは、税金は経済に対して悪影響をもたらすと単純に思い込まれ、それが正当な意見であると考えられていた時代であった。また、貧困と格差を是正することは非常に無責任なことで、格差を是正しないことを不当だと発言するものは、ヨーロッパの思想に毒された危険な過激派であると受け止められていた。」と説明している。また、当時は今日に比べてはるかに多くの共産主義者やアナキストがいた。彼らの存在が、保守派に改革排除の口実を与え、アメリカ国内に保守派ムーブメントが作り上げられる要因の一つであったという。富裕層や資本家層にとってみれば、格差の是正や貧困層の支援は直接被害を被る動きであったため、それらをよしとしない世間の気風を巧みに作り上げていたのだ。
 外的要因はそれだけではなかった。第一次大戦の終戦後、アメリカ社会党は赤狩りの標的となり党員は1万人をきるまでに衰退。アメリカ社会党の衰退には、赤狩りも大きな影響を及ぼした。そこで、1920年代の赤狩りの概要を下にアメリカ社会党の衰退の外的要因を考察し、さらに1950年代に起こったマッカーシズムを代表する赤狩りの概要も踏まえたうえで、赤狩りによる社会主義排斥の実態を紐解いていく。

赤狩りの目的

 赤狩りはアメリカにおける社会主義排斥の代表的な出来事として知られているが、保守層による社会主義排斥とは本質が異なっている。その違いは、2度の赤狩りが発生した「時代」にヒントが隠されている。それぞれの赤狩りを概観し、保守層による社会主義排斥との違いを考える。

(1)1920年代の赤狩り

 1920年代に起こった赤狩りは、第一次大戦の終戦に伴い資本主義国の中心国家となったアメリカが、世界における社会主義国との対立構造により国内で社会主義を排斥する姿勢をとったことから始まる。19世紀末に生まれ、1920年代の赤狩りを肌で体験したアメリカ社会学者のマール・カーティは1920年代のアメリカについて「第一次世界大戦が終わると(中略)なんでも社会主義と思われるものを排斥する気風が起こった」と述べている。事実、アレクサンダー・M・パーマーが行ったパーマー・レイドと呼ばれる赤狩りでは、社会主義者、共産主義者に限らず、移民やアナキストなど、アメリカニズムに反するものが排斥され、イタリア系移民のアナキスト2人が処刑されたサッコ・ヴァンゼッティ事件では、それらの気風によって有罪判決が下されたとの見方も多かった。
 赤狩り時代の恐ろしい点は、アメリカニズムに反する人々や、それらを支持する者を社会的に抑圧するという点である。赤のレッテルを貼られたものは社会的に抹殺されるという認識がアメリカ国内に蔓延し、社会主義的な思想を持つことがタブーとされた。このような社会が訪れたことにより、アメリカ社会党の党員やその支持者たちは立場が危うくなり、アメリカ社会党の衰退を引き起こした。

(2)1950年代の赤狩り

 第二次世界大戦の終戦から2年後の1947年、ソ連が東欧諸国で社会主義勢力を拡大した。それに対抗すべくアメリカは、共産主義圏に対する封じ込め政策を表明したトルーマン・ドクトリンを発表。その結果アメリカ国内では、自由で正常な国家という理想から逸脱するような異質なものを、生活や芸術家ら排除する動きが起こり、ハリウッドの映画人は赤狩りの標的になるのを恐れ、政治的なメッセージの少ない、アメリカの繁栄を誇示した映画を多く作るようになった。また、ジョセフ・マッカーシーによるマッカーシズムでは激しく排斥が行われたが、その実情は、無関係の人々を多く巻き込む現代の「魔女狩り」であり、アメリカに恐怖と抑圧をもたらした。

(3)赤狩りの起因

 2度の赤狩りはともに世界大戦の直後に行われた。ソ連を中心とした世界の社会主義勢力に対する封じ込めとして行われた赤狩りは、結果としてアメリカにおける社会主義勢力の排斥に大きく寄与した。赤狩りの起因は、世界における資本主義国の中心国家アメリカとしての立場を守ることであり、その実態は保守派による社会主義排斥とは異なることがわかるだろう。

アメリカはなぜ社会主義を排斥するのか

 先述した事柄から、アメリカにおける社会主義排斥の気風が大きく2つに分類できることがわかる。一つは、長期の金ぴか時代における労資対立からも汲み取れるように、資本主義社会を重んじる保守層によるもの。そしてもう一つは、世界におけるアメリカの立場から生まれる社会主義への対立構造である。それでは、それぞれの気風について整理していく。

(1)保守層による社会主義排斥

 長期の金ぴか時代における資本家や保守派の動向から考えると、保守派による社会主義排斥は、権利や利益を守るための行為であった。保守派によるその動きの根幹には、アメリカ独立宣言や民主主義の原則に保障された「自由、及び幸福を追及する権利」が存在し、それらを正当化の口実として使用していた。現在のアメリカにおける社会主義においても、その侵入を拒絶している層が共和党をはじめとする保守派であることから、保守層は元来から、アメリカの社会主義排斥を先導してきたと言える。

(2)赤狩りによる社会主義排斥

 赤狩りによる社会主義排斥は、アメリカとソ連による世界の覇権争いの延長にあるものだとわかった。2度の赤狩りそして、40年以上かけて対立したアメリカとソ連の冷戦を概観するとより理解しやすい。民主主義国家アメリカであったからこそ、建国から大躍進を経て世界のリーダーとなったのだから、社会主義の侵入はアメリカにおいて致命的なダメージになり得る。赤狩り行為が民主主義的であるのかという疑問はあるが、ともあれ赤狩りは世界における社会主義勢力からの防衛策として行われてきたと言える。

結論

 アメリカにおいて社会主義が注目を集めてきた理由として、格差の拡大や社会保障が挙げられることは、長期の金ぴか時代における労資対立やアメリカ社会党の活躍によって読み取ることができる。資本主義の構造によって財を成した富裕層や資本層が民主主義を崇め、それらに搾取された労働者や貧困層が社会主義を欲してきたのだ。格差が拡大し、社会保障の需要が高まった現在のアメリカにおいて、再び社会主義が注目を集めていることから、格差や社会保障がアメリカにおける社会主義人気を左右することは確実であろう。
 そして、アメリカが社会主義を排斥してきた理由は、アメリカ国内の保守派による「民主主義に基づく自由を求める訴え」という側面と、民主主義の中心国家としてのアメリカによる「世界の社会主義勢力への対抗」という2つの側面であると結論付けられる。
 民主主義国の中心国家として、アメリカが自ら社会主義国になることはないだろうが、現在アメリカは、格差問題や、医療制度をはじめとする社会保障問題を抱えている。民主主義の限界を体験したアメリカはこの先、社会主義とどのように接していくか本格的に考えていく必要があるだろう。



参考文献及びウェブサイト:

 “State of the Union 2019: Read the full transcript”, https://edition.cnn.com/2019/02/05/politics/donald-trump-state-of-the-union-2019-transcript/index.html

“Bernie Sanders on the issues”, https://berniesanders.com/issues/

アメリカ独立宣言(仮翻訳), アメリカンセンター, https://americancenterjapan.com/aboutusa/translations/2547/

ハムステッド・ガーデンサバーブ「イギリス近代のユートピアモデル―ニュー・ラナークから田園都市まで」

ショーン・ウィレンツ「民衆支配の讃歌―ニューヨーク市とアメリカ労働者階級の形成(上)」安武秀岳監訳(木鐸社、2001 年)

梅崎透「なぜアメリカに社会主義はないのか/今あるのか」,  https://rikkyo.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=19040&item_no=1&attribute_id=18&file_no=1

ポール・クルーグマン「格差はつくられた―保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略」(早川書房、2008年)

竹田有「労働騎士団 その思想と行動 ―第三〇地区会議(ボストン)の場合―」, https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/238611/1/shirin_064_2_214.pdf

古矢旬、山田史郎編著「権力と暴力」(ミネルヴァ書房、2007年)

アメリカは「コロナ後」社会主義へと向かうのか,東洋経済オンライン https://toyokeizai.net/articles/-/348244?page=4

Merle Curti「1920年代のアメリカ」渋谷昭彦訳,  http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000008649

Brittanica | Palmer Raids, https://www.britannica.com/topic/Palmer-Raids

 Brittanica | Sacco and Vanzetti, https://www.britannica.com/biography/Sacco-and-Vanzetti

渡邊真理子「よくわかるアメリカ文化史」巽孝之、宇沢美子編著(ミネルヴァ書房、2020年)

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