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次世代の採用の新常識 | タレント・アクイジションとは

こんにちは、MyRefer代表の鈴木です。
今回は、世界の採用の新常識であるタレント・アクイジションという概念や世界の採用トレンドについて解説します。

0.はじめに

従来の採用担当者のミッションは、候補者を調達、精査し、現場や採用マネージャーに接続すること、その先の生産性まで責任を持たないのが一般的です。人材獲得競争が激化する近年において、海外ではHRリーダーの3分の2以上が、従業員のオンボーディングが不十分であり、採用コストが無駄になっていると述べています。
これらの解決策がタレント・アクイジションです。
タレント・アクイジションと呼ばれる新しい概念は、世界中の企業の役員室に響き始めています。

次世代の採用トレンド


1.リクルーティング(採用)とタレント・アクイジション(獲得)の違い

リクルーティング(採用)とは
リクルーティングとは、シンプルに言うと『社内の募集を埋めること』です。通常、急な欠員補充や新たな空きポストの発生など、必要に駆られるまで採用プロセスを開始しません。
リクルーティング(採用)は、企業の差し迫ったニーズを満たす短期的なプロセスであり、リアクティブな行動であり続けるため、会社の未来を成長させる戦略的な取り組みではありません。

タレント・アクイジション(獲得)とは
タレント・アクイジションは、より広範囲で経営戦略に紐づくHR戦略です。
将来の自社から逆算し、短中長期の採用ターゲットを定義します。自社の採用ブランドを構築し、候補者の獲得活動と同時に将来の戦略になりうる人材をプール、必要なタイミングでアプローチします。
採用は短期的なニーズにリアクティブに対応しますが、タレント・アクイジションは短期的なニーズだけでなく、企業成長につながる長期的な目標にも焦点を当てています。

リクルーティング(採用)とタレント・アクイジション

2.世界のタレント・アクイジションの潮流

先進各国では、2013年よりリクルーティングisマーケティングというワードが浸透し、待ちではなく、戦略的に優秀な人材を獲得するタレント・アクイジションの潮流が到来しています。
米国の大手ソーシャルリクルーティングサービスJobviteの調査によると、2013年の段階で企業が投資拡大を検討しているチャネルはソーシャルリクルーティング、リファラル採用、自社サイトなどの戦略的自社採用チャネル、潜在層にアプローチするタレント・アクイジションチャネルが上位を占めます。

Jobvite report2013

これらは米国だけに留まりません。Googleトレンドよると、2013年から世界の採用トレンドとしてもタレント・アクイジションが盛り上がりを見せています。

Googleトレンド

タレント・アクイジションは、短期的な採用ニーズに対して、人材紹介や求人広告を用いて母集団形成するのではなく、転職潜在層に対して戦略的にアプローチして競合とバッティングせずに人材を獲得します。
海外では、下記のような手法が挙げられます。

1)タレントプールリクルーティング
過去お会いした応募者や、未来の潜在候補者を資産化し、適切なタイミングでナーチャリングします。自社のタレントプールDBも一つの母集団チャネルとして捉えられています。

2)ネットワーキング(ソーシャルリクルーティング)

関連する業界イベントやネットワーキングセッションに参加し、オンラインで多様なソーシャルネットワークを構築します。Linkedinのみでなく、FacebookやTwitterも重要です。

3)紹介(リファラル)
海外では企業のほぼ半数が、最も質の高い採用は既存の従業員からの紹介だと答えています。おすすめしたくなる魅力的な従業員紹介プログラムを構築する必要があります。

4)ブランドマーケティング
潜在候補者が自社で働きたくなるための動機付けが重要になります。ブランドイメージを強化することで、企業が欲しいターゲットからの評判を向上させ、持続可能な採用マーケティングを実現します。

5)インターナルモビリティ(社内異動)
社内転職市場を構築し、内部からタレントの最適配置を実現することは、タレント・アクイジションにおいて最も重要な要素です。米国においては、企業の42%がインターナルモビリティへの投資を拡大していると言われています。

3.日本におけるタレント・アクイジションの潮流

日本においてはどうでしょうか?
まずは日本の労働市場について考えます。
少子高齢化に伴い、日本の労働力が減少の一途を辿っていることは周知のとおりであり、2030年には644万人の労働人口が不足すると予測されています。

労働市場の未来統計2030 出典:パーソル総研

一部の産業を除き、ほぼ全ての職種にて人手不足が余儀なくされる未来ですが、インターネットのグローバル規模での普及、第四次産業革命に伴う産業構造の変化により、特に専門・技術職の労働人口の減少は喫緊の課題です。

かつて世界の経済大国だった日本ですが、今や一人当たり名目GDPの減少に伴い、労働生産性も先進各国最低水準です。

OECD諸国の労働生産性(名目ドル換算)出典:ファクトから考える中小企業の生きる道

そんな中、折しも2020年に未曾有のパンデミックであるコロナが到来し、従来のHRの在り方が抜本的に変化、DXが加速したことで質の高い人材の確保が各社の会議室を賑わすことになりました。

コロナにより、変化が余儀なくされたもの

IT化においても先進各国より大きく遅れるデジタル後進国と呼ばれる日本ですが、コロナによりDXの必要に駆られてようやく政府も老朽化したシステム、IT人材の不足、デジタル経営戦略に曖昧さを痛感しだしました。

一方、ITエンジニアの転職市場に存在する候補者数に対して、企業の需要は100倍。
転職市場のみでなく国内全体で見ても、ITエンジニア就業人口106万人に対して、企業のエンジニア需要は約136万人と、労働人口としてそもそも足りていない状況です。
日本においても既にタレント獲得時代に突入しているのです。

2021年より、改正労働施策総合推進法により労働者が301人以上の企業を対象に、中途採用比率の公表が義務化されました。
2017年段階の数字を見ても、1000名を超える大企業の新卒採用比率は60%であり、まだまだ終身雇用、新卒一括採用の脱却ができていない状況です。
採用活動においても、従来の広告媒体(ナビ)や人材紹介を利用して短期的ニーズを埋めるリクルーティングが主流です。

日本の採用市場は1兆円規模の市場規模といわれており、そのなかでも有料職業紹介(人材紹介)は3000億円程の市場規模を占めています。人材紹介の費用は入社した候補者の理論年収の35%が一般的ですが、人材紹介を利用している候補者の平均年収と、そこからの入社人数、平均離職率を踏まえると、1000億円近い採用コストが毎年無駄に掛け捨てていると考えられます。※半年以内離職などの返還金は除いていますが、考慮したとしても相当な金額です。

4.日本と海外の求職者の就業観の違い

日本と海外で就業観がどう違うのか?ということも重要です。
日本の人材採用市場は、終身雇用を前提に、ポテンシャル重視の新卒一括採用を実施してきました。
学生を即戦力として捉えている企業は少なく、育てて一人前にする感覚の企業は多いのが実態です。その結果、学生は経験やスキルをあまり問われずに大企業に入りやすくなっている反面、失敗が許されず新卒の切符が人生の命運を分ける構図になっています。
また、就活が始まってからようやく自己のキャリアと向き合うため、自身の適性がわからず、就活サイトや合説でとりあえず話を聞きに行くところから始まります。企業側からしてみると、一度採用すると解雇規制も厳しいため、なかなか首にできない、故に中途採用時のハードルも高く、雇用の流動性も低いという悪循環があります。

アメリカや欧米各国では、終身雇用という考え方がそもそも無く、解雇規制もゆるく、転職を繰り返し、スキルアップをしながら自分に合った環境を求めていくのが一般的です。
新卒採用と中途採用の垣根が少なく、大学での専攻や成績、インターンの経歴などを踏まえ、一括ではなく通年で選考します。
幼少期からのキャリア教育においても日本と根本的に違います。
日本と比較的産業構造に近いドイツにおいても、小学4年生の段階で進路を決め、専門分野の学問を磨かせるなど、早期から自己のキャリア感と向き合う機会があります。

 昨今は日本においても、ジョブ型雇用の浸透により、新入社員でも特別スキル・能力を持った人材には特別の処遇を提示する「一律初任給の廃止」などを取り入れている企業も増えてきています。

新卒ジョブ型採用について、大学生の8割が賛成だというデータもあり、就業感自体が徐々にアップデートされつつあります。HRの在り方や国の雇用の在り方が変革されれば、より雇用の流動性が増え、タレント獲得競争が激化していくと考えられます。

5.まとめ

・リクルーティング(採用)とは、足元のニーズを充足する短期的な活動
・ タレント・アクイジション(獲得)は企業の成長を加速する戦略的活動
・タレント・アクイジションは将来の自社から逆算し、要件定義、ブランディング構築、オンボーディングなど単中長期のHRプロセスを包含する
・ 海外では2013年からタレント・アクイジションが主流に
転職潜在層にアプローチをする母集団形成手法が重要
・日本の労働人口は減少の一途であり、 コロナウイルスによる影響で、HRの在り方が抜本的に変化
・DX人材含む専門職人材については需要が供給の100倍に
・日本においては、まだ新卒一括採用や待ち型採用からの脱却ができていない
・緩やかにジョブ型が浸透し、個人の就業感も変化しつつある
・今後雇用の流動性が増えることで、よりタレント獲得競争が重要になる

6.日本のタレント・アクイジションを活性化する

私たちは、タレント・アクイジションの代表的な採用チャネルリファラル採用を活性化させるクラウドサービス"MyRefer"をメインサービスとして提供してきました。

これまでサービスローンチからこれまでに国内800社以上の企業様、40万名の社員ユーザー様にご利用いただいております。

一方で、上述の通り、世界的にタレント争奪戦が佳境になっている中、日本においては産業構造改革の遅れや終身雇用、新卒一括採用といった古き慣習もあり、まだまだ従来の採用手法がスタンダードであることは否めません。

今後この国の産業をより活性化するため、また雇用の流動化と本質的な最適配置を促進するため、本日ご紹介したタレント・アクイジションの概念を日本に普及し、戦略的に自社リソースを活用して潜在タレントを獲得する価値観をご支援していく予定です。

MyReferが提供するサービス

ブログを見てより深く聞きたいと思っていただいた方、共感いただいた方、どんな動機でもご興味のあられる方はお気軽にご連絡いただけますと幸いです。
次回は、タレント獲得がビジネスの成功に不可欠である理由について、海外を参考に書いていきたいと思います。

また、弊社では『100人の普通より1人のタレントを』というコンセプトで新卒・中途採用ともに絶賛募集中です。こちらもご興味のある方はお気軽にエントリーください!


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