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身につけたものに似合う自分

「クリスマス限定のショッパーに入れてお渡し致しますね」
黒手袋をはめた店員のお姉さんが、私が選んだ財布をうやうやしく受け取って微笑んだ。
 
紙袋って言わないんだ、こういうオシャレなブランド店では英語でショッパーって言うんだ……。

私はそんなことを思いながら、包装をしに行く店員さんの後ろ姿をボーッと見送った。

「ショッパーって言うんだね」

自分と全く同じ言葉が横に立つ夫の口から出てきて、気が抜けて吹き出した。
 

私はこの日、夫に連れられて、東北1号店としてオープンしたばかりの某ブランド店に来ていた。
手にとっていいのかも分からないくらいに美しく並べられた商品。綺麗な内装。丁寧な接客。ドアマンのおじさんの制服すらも素敵だった。
 
ブランドに疎すぎて読み方すら怪しいレベルの私にとっては眩しくて目がまわるような空間だったのだけれど、クリスマスが近いこともあって同じようなカップルが何組もいて少しホッとした。
(上から下までブランドで固めているようなセレブはこんな空間でのお買い物が普通ということ?想像も出来ない!)


プチプラばかりの私の持ち物に加わった素敵な財布。
何かの番組で見たが、お気に入りのものを身につけると、自然とそれに似合う自分になろうと努力する事ができるらしい。

身だしなみ、体型、心持ち……。何が「似合う」ということなのかはその人それぞれで違うと思うけれど、なるほど確かに、ショッパーを受け取ってドアマンのおじさんの笑顔を見たら背筋が伸びるような気がした。

来年からガラッと我が家の生活が変わる予定で、私への激励(と早めの誕生日祝い)として贈ってもらったこの財布。この財布に「似合う」自分って、どんな自分だろう?
とりあえず、まずは丁寧に、そして可能な限り長く使っていこうと決意したのだった。


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