涼乃 (すずの)

趣味で書いているエッセイや小説などの文章置き場です。食べ物の話が多いかもしれません。

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最近の記事

目玉焼きに何かける?【短編小説】

「みんな、目玉焼きには何をかける? しょうゆ? ソース?」 小学生のとき、先生がふいにそんなことを聞いてきた。 授業中のたわいもない雑談だったと思う。 身近な話題に教室は大盛り上がり。みんな一斉に口を開き始めた。 「ぼく、しょうゆ!」 「わたしはソースかな」 「おれ、マヨネーズ!」 「えー!? ほんと?」 「うちはねえ、ケチャップかける!」 醤油とソースに続き、他にもいくつかの答えが飛び交う。 楽しそうに答えるみんなの声を聞きながら、私は何も言わずじっとしていた。 授業の後

    • 砂糖菓子と大人の特権 【エッセイ】

      クリスマスケーキの上に乗っている、サンタクロースやトナカイの形をした砂糖菓子。 その時期だけの飾りにはキラキラとした特別感がある。特に小さな子どもにとっては憧れで、とても価値のあるものに見えるのではないだろうか。 私は砂糖菓子のサンタクロースを見かけるたびに、毎年ほんの少しだけ苦い気持ちになる。子どもの頃のある出来事を思い出すからだ。 あれは多分、小学校低学年の頃だったと思う。 その年のクリスマスは、近所に住むいとこたちと一緒にケーキを食べた。 いかにも定番の、苺と生クリ

      • 夜のドライブ 【短編小説】

        友人が夜のドライブがてら星を観に行こうと言うので、軽い気持ちでいいよ、と答えた。彼は昔から夜空を見上げるのが好きで、僕はそれによく付き合わされていた。 二十一時ちょうどに家まで迎えにきた彼の車に乗り込み、助手席のシートベルトを締める。彼はいつになく上機嫌だった。今日は雲がないので星が綺麗に見えるはずだと笑いかけられる。「ああ」とか「へえ」とか、そんな生返事をした。僕はそれほど星に興味はなかったからだ。 それにしても眼鏡が邪魔だ、本当は裸眼で星を眺めたいんだ、と熱心に語る彼の話

        • プロフィールなど

          30代女性。 本と漫画とゲームと美味しいものが好きです。 文章を書き始めたのは数年前から。 本や漫画はなるべくジャンル問わず、面白ければ何でも読みます。ゲームはずっと好き。今はアプリやSwitch/ps4を中心に遊んでいます。舞台やイベントにも行くのも好きです。 日々楽しく穏やかに過ごしたい(´-`).。oO

        目玉焼きに何かける?【短編小説】

          お盆と大晦日と未来から来たネコ型ロボット 【エッセイ】

          お盆休み。 家でのんびり映画でも見ようかと、夫と近所のレンタルショップへ行った。 子どもの頃に何を見ていたかという話の流れから私が「ドラえもん」を挙げると、彼はドラえもんの映画を一度も見たことがないと言う。 それならば、と一本借りて一緒に観ることにした。 ドラえもんの映画はたくさんある。 (大山のぶ代さんら声優陣でのものが二十五作。声優交代が行われた以降もリメイクと新作の公開が続いている) どれにしようかと迷いながら何本か知っているタイトルを挙げると、夫に「毎回映画

          お盆と大晦日と未来から来たネコ型ロボット 【エッセイ】

          運命代行人 【短編小説】

          あるところに大金持ちの男がいました。 男は、ありとあらゆるものを持っています。 大きな屋敷、広い庭園、世界中の別荘。立派な車、仕立てのよい服、綺麗な宝石。 美人で気立てのいい妻と、可愛らしい子どももいます。 ある日、男はふと思いつきました。 「おれは今まで欲しいものはすべて手に入れてきた。更に先のことが分かるようになれば、さぞ面白いだろう」 男は使用人たちに命じ、その人の未来が見えるという占い師を捜し出しました。 黒いローブをまとった占い師の顔は分厚いフードで隠されて

          運命代行人 【短編小説】

          週末 【短編小説/あらすじ】

          お題「もみじまんじゅう」で考えた話のあらすじです。その2 「お疲れ! 週末、空いてたら遊ばない?」 仕事帰りの会社員、理子は友人の千尋からのメッセージにどう返信しようか迷っていた。 今日は金曜日。駅のホームは大勢の学生やサラリーマンたちで混雑している。 待ちに待った週末、明日も明後日も特にこれといった用事はない。 それなのにどうしても肯定的な返信をする気持ちにはなれなかった。 すし詰め状態の満員電車で片道一時間かけての毎日の通勤。       それに加え、今週は残業続きで疲

          週末 【短編小説/あらすじ】

          大人になる 【短編小説/あらすじ】

          お題「もみじまんじゅう」で考えた話のあらすじです。その1 三十歳の会社員、小岩井 杏は中学校の同窓会に出席するため久々に実家へと帰省していた。母、姉と共に杏の買ってきた土産を食べながらお喋りに興じる。 現在恋人のいない杏に対し、母は「誰かいい人が見つかるかも。同窓会で再会して、そこから結婚に結びつく人って意外と多いのよ」などと言う。 はいはい、と適当にあしらう杏に姉が尋ねる。 「ねえ、あの子も来るの?」 「あの子って?」 「あんたの元彼よ。中学の時に付き合ってた子。あれ、名

          大人になる 【短編小説/あらすじ】

          好き嫌いせず、全部食べましょう 【エッセイ】

          昨秋、夫と日帰りバスツアーに出かけた。      大徳寺や実相院などの寺巡りをしながら日本庭園の風情を楽しむ、ちょっと渋めのコースだ。 昼食は「鉄鉢料理(てっぱつりょうり)」だった。鉄鉢(てっぱつ)とは、僧が食物を受けるために用いた鉄製の丸い鉢のことで、その料理屋では鉄鉢(てっぱつ)を形どった丸い器に四季折々の料理を盛り込んだものが振る舞われている。 精進料理のため、肉類魚介類は使われておらず、穀物、豆類、野菜のみを使用した料理だった。 丸い器はそれぞれ大きさが違い、ま

          好き嫌いせず、全部食べましょう 【エッセイ】

          「すぐおいしい、すごくおいしい」のあれ 【エッセイ】

          数か月前に朝の連続テレビ小説の影響で話題になっていたチキンラーメン。 (ドラマ内では「まんぷくラーメン」という名称である。)  毎日見ていると自分もラーメンを食べたくなってくるのだからドラマの効果は抜群だったと思う。 実際にチキンラーメンの売り上げも伸びたらしい。私も分かりやすく影響されて久々に購入した。ひよこの絵でお馴染みのパッケージの方ではなく、「お椀で食べるチキンラーメン」という小サイズのものだ。小腹が空いたときなどに丁度いい。 久々にこの味を口にして、ふいに小学生の

          「すぐおいしい、すごくおいしい」のあれ 【エッセイ】

          若あゆと私 【エッセイ】

          「若あゆ」という和菓子がある。楕円形に焼き上げたカステラ生地で求肥、あるいは小豆餡を包み半月形に整形し、焼印で目とひれの印をつけた和菓子である。鮎焼き(あゆやき)、あゆ、焼鮎とも言うらしい。 私は、この若あゆが大好きである。 忘れもしない、若あゆとの出会いは高校一年生の春。友人の付き添いで茶道部の見学に行ったときのこと。当時の私は茶道自体にはあまり関心がなく「ずっと正座しないといけないんでしょう。すぐに足が痺れるんだけど大丈夫かな」なんて思っていた。あの頃は抹茶も好んでは飲

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