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2020年、注目の北欧デザイナーの社会問題への挑戦

北欧デザインというと、洗練された、ほっこりした、シンプルで機能的、などいろいろなキーワードが思い浮かぶと思います。もちろん、そういったデザインが北欧にはたくさんあり、世界中のファンを魅了しています。

一方で、北欧デザインは確実に進化しています。このマガジンでは、北欧ストックホルムより、注目の最新北欧デザインを紹介していきたいと思います。

8月中旬に、ストックホルムで北欧最大級のインテリアフェアFormexが開催されました。通常はストックホルムメッサで開催されますが、今年はコロナ禍で3月から全てのイベントが中止になっています。今回のFormexは、ストックホルム市内の王立公園にあるVolvo Studioでトレンド展示とライフスタイルと若手北欧デザイナーNovaが出展されました。

若手北欧デザイナーNovaでは、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、アイスランドの5カ国よりひとり/ひと組のデザイナーが代表として選ばれます。ノミネートの条件は以下の通りです。
・北欧を拠点としていること
・40歳以下であること
・大学教育を受け、革新的で芸術的な能力があること
・最低でも1点の商品化される魅力的な作品があること

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2020年の最優秀若手北欧デザイナーNovaの受賞者は、29歳のアイスランド人デザイナーValdís Steinarsdóttirが選ばれました。コロナ禍のためストックホルムには来られず、アイスランドからオンラインでのインタビューとなりました。

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Valdís Steinarsdóttirはアイスランドデザインスクールを卒業し、実験デザイナーを自称して有機素材のリサイクルに焦点を当てています。食肉となる動物の屠殺後に、骨や皮膚などの貴重な原材料が無駄になっている現実を打開するプロジェクトを立ち上げ、アイスランド・イノベーションセンターなどの研究者とともに新素材を開発しています。

Valdísは、動物の骨から取った強度の高いジャストボーンと、動物の皮膚から作ったバイオプラスチックスキンという2つのまったく新しい素材を開発しました。

ジャストボーンは、動物の骨から作られたMDF程度の強度を持つ天然素材で、セラミックと同様に使うことができます。これは、まだ見出されていない可能性が現在の環境に隠されている一例です。使い慣れた素材をさまざまな視点から探索することで、新しい可能性を見つけることができます。

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バイオプラスチックスキンは、動物の皮から作られた肉用の生分解性パッケージです。

動物の皮はしばしば食肉産業の副産物と考えられています。肉を消費する場合、屠殺された動物の全てを利用し地球への汚染を少なくすることがわれわれの責任です。

このプロジェクトは、広く普及しているプラスチックの過剰使用の問題にも対応しています。毎日大量のプラスチックパッケージが捨てられ、最終的には埋め立て地や海に廃棄されています。彼女の目的は、食品産業、特に食肉産業におけるプラスチックの使用を減らすことです。

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肉の消費と過剰なプラスチックの使用は危機に瀕しており、社会が消費システムを考え直す必要があります。Valdís Steinarsdóttirは、食肉業界に対して意義を申し立てています。

「大規模な畜産ではなく、小規模な畜産にするべきです。私たちは肉を過剰に生産しているため、特にアイスランドのような小さな島国では、資源の管理についてもっと真剣に考える必要があります」

美しいデザインについてどう思うか、という質問に対しては、以下のように答えています。

「その背後にあるストーリーを知り、より深い独特な意味を持つ時にそのデザインが美しく見えてきます。製造工程も美しいと思います。見た目を美しくする努力は悪いことではないですが、デザイナーはもっと社会に対して影響力を持つべきです。私たちデザイナーは、さまざまな方法で社会問題を指摘することができるはずです」

Novaの審査委員たちは、社会問題や環境問題の解決策を見つけるデザイナーとしての視点と、食肉となる動物の骨などの貴重な原材料が、無駄になっている現実を打開するプロジェクトを高く評価し、彼女を最優秀若手北欧デザイナーNovaに選びました。


私にとっても「美しい、よいデザインとは何か」という思いがずっとありました。最近の新しいデザインにワクワクするものがなく、昔のヴィンテージなどの方が、ワクワクするものが多いと思っていましたが、時代はもうワクワクするものよりも、社会問題や環境問題を解決するデザインが求められています。

パッと見てワクワクするデザインではなく、その背後にあるストーリーやプロセスを知ることが、ワクワクするデザインとの出会いであることに気がつきました。これからは、そのような視点で新しいデザインを見て行きたいと思います。

Valdís Steinarsdóttirのウェブサイトはこちらをクリックして下さい。(アイスランド名の読み方が難しくて名前をカタカナにできずすみません)

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