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お熱いのはお好き?

雨が静かに降るある日、ウサギとカメは岩盤浴の途中で給水をしていた。「15分おきに水分補給するって、マラソン大会みたいだね」そんな彼の声を聞きながら、ウサギは紙コップのミネラルウォーターを、ゆっくりと身体に流し込んでいた。「さあ、もう一度行くわよ」ウサギは彼の手を取ると、二人は再び岩盤浴エリアに突入した。

数日前のことだった。「最近、なんかこう背中が痛いんだ」とカメが訴えるのを聞いて、ウサギは岩盤浴を提案した。「カメくんは、生きることにちょっと力が入り過ぎているんじゃないかしら。リラックスが必要ね。それには岩盤浴が最適だわ」

二人は45度に加熱された天然鉱石の上に、隣り合って横たわった。最初の5分はうつ伏せになり内臓を温め、次の10分で仰向けになってリラックス。サラサラの汗が心地よく全身から流れ落ちる。カメは眠りに落ちそうになるたびに、「給水タイムよ!」という彼女の小声で目が覚めた。

「湯船だと別々だけれど、岩盤浴なら専用着を着たままだから一緒にいられるでしょ?」ウサギは紙コップを持ちながら、いたずらっぽく笑った。火照ったカメの頬が、さらに赤くなったように見えた。「次に温まったらあがるわよ」ウサギはカメの手を取り、二人は何度目かの岩盤浴エリアに突入した。

食堂エリアで落ち合った二人は、かき氷とともにゆっくりとクールダウンに入った。すっかり脱力していたカメだったが、ふと小さな違和感に気づいた。食堂の一角にあるワーキングスペースで、懸命に仕事をしているお客さんがいたのだ。

カメの視線の先に気づいたウサギは、「カメくん、今日はリラックスしに来たんだよね?仕事のことは、わ、す、れ、る。だよね?」と、ふざけて拗ねて見せた。彼の健康ことが何よりも心配なウサギだった。

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