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ハーフマラソン

朝、ハーフマラソンのスタートラインに立つウサギはどこか心細そうだった。彼女の周りは人々のざわめきで満たされているが、彼女自身は静かな世界にいるようだった。スタートの合図が鳴り響くと彼女はあたりを見渡すこともせずただひたすらに走り続けた。彼女は誰よりも速くゴールへと駆け抜け一人ぼっちで勝利を手にした。しかし、ゴールした彼女の心には何故か寂しさが漂っていた。

時間が経ち観客のほとんどが去った頃、カメがようやくゴールに到着した。沿道に残った観客たちは彼に手を振り、彼はそれに応えながらゴールテープを切った。カメはゴール地点で待っていたウサギに向かって「待っていてくれてありがとう」と笑った。その笑顔には、どこか満たされた幸せがあった。

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