あの頃を思い出す街
その日、ウサギとカメは下北沢の街を訪れていた。東口改札口を抜けたウサギは目を見張った。「駅前がずいぶん変わったわね。小田急線の改札も、井の頭線の改札も、以前はもっと迷路のようだったわ」
二人は慎重に周囲を見回しながら足を踏み出した。街にはなんとなく懐かしさを感じさせる景色が残っていた。路地には昔ながらの古着屋が軒を連ね、その個性的なファッションが風に揺れていた。
一方、雑貨屋の店頭には奇妙な形のオブジェが並びふと目を奪われる。街全体にカオスと整然とが混ざりあい、そこはかとなく魅力に満ちている。この街は歩くたびに新しい発見があり、宝探しのような冒険が待っていた。
やがてウサギとカメは、駅の西南口から世田谷代田駅へと続く遊歩道をゆっくりと歩いていった。周りはしだいに賑やかになり、気がつくと、二人は「ボーナストラック」と呼ばれる一角に足を踏み入れていた。初めて訪れたこの場所は、二人にとって未知の世界の入口のようだった。
「本屋さんがあるわ」ウサギが声を弾ませると、二人は誘われるように階段を上がった。階段を上りきると、彼らを待っていたのは柔らかい光が満ちる居心地の良い空間だった。店の一角には小さなビールスタンドもある。 「ビールも飲めるんだね」カメは興味深げに店内を見回した。
一通り街を巡った二人は、小さなカフェで、しもきた抹茶ミルクを飲んでいた。ウサギはカップを手にしながら、店内をゆっくりと見回した。「記憶していた街と、目の前に広がる景色が重なり合って、ちょっと戸惑いを感じるわ」
時間がゆったりと流れる中、ウサギは遠い過去に思いを馳せていた。「あの頃の私は、一体何を探しにここへ来たのだろう?」そんな思いが、今、ウサギの脳裏を駆け巡っていた。
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