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特許を取るときの考え方。製品全体ではなく、技術ごとに見る


特許は「製品」ではなく「技術」に対して与えられる

よく、「特許品」という言われ方をする。でも、厳密に言えば、これは間違いだ。「特許製品」があるわけではなくて、あるのは「特許技術」だ。

例えば、iPhone。

iPhoneには色々な種類の技術が詰め込まれている。カメラだのディスプレイだの通信だの…。そして、カメラ1つを取ってみても、レンズ、シャッター、オートフォーカスなど、たくさんの技術要素がある。

iPhoneは無数の技術の詰め合わせ、技術の集合体ということだ。特許はそれらの技術の各々について与えられている。iPhone全体に与えられているわけではない。iPhone=1つの特許ではなくて、iPhoneにはたくさんの特許が与えられているってことよ。

特許を取りたいならその製品のアイデアを技術ごとに分解する

先日、特許初心者の方から、こんな相談を受けました。

  • あるシステムを考えました

  • こういうシステムは今までありません。業界初です!

  • 真似されたくないので特許を取りたいです

画期的なシステムなのかもしれない。売れるかもしれないし、話題になるかもしれない。でも、特許を取ることを考えるなら、もう少し精緻な見方をした方がいいと思う。

あるシステムに関して特許を取ろうとする場合、システムを構成する要素が多ければ多いほど、特許権の範囲は狭くなっていく。仮にこのシステムについて特許を取れたって、競合他社はシステムを構成する全ての要素を組み込まなければ、あなたの特許権を侵害していることにはならない。システムの一部を変えてしまえば特許の網をすり抜けられてしまう。

だから、特許を取りたいなら、「システム全体」をぼんやり眺めるんじゃなくて、そのシステムに使われている「個々の要素(技術)」ごとに分解して考えた方がいいね。

製品を技術単位に分解するときの考え方。システムの例で

上の相談事例で出てきた「システム」の例で考えてみよう。

システムはいくつかのプロセス、そして各々のプロセスを実行するための要素からできている。映像を撮影するカメラと、その映像を解析するコンピュータと、解析結果を表示するディスプレイと、からなる画像解析システムといった感じ。

ここで、要素A、要素B、要素Cを組み合わせたシステムXを思いついたとしよう。そして、A+B+CのシステムXについて特許を取ったとする。Xの内容は特許公報で公開される。誰でもその内容を見ることができる。果たしてこれでいいんだろうか?

普通に考えて、A,B,Cの「技術としての重要度」が全く同じってことはない。どれかが重要度が高くて、他はそうでもなかったりする。仮に、Aが重要で、BやCはさほど重要でない場合、競合他社はどうすると思う?

  1. 重要度が高い「A」だけを売る

  2. 「A」以外の要素を他の要素に置き換えたシステムにする(例えば、「A+B+CのシステムX」ではなく、「A+D+EのシステムY」にする)

どちらも特許発明の「A+B+C」じゃない。「A」も「A+D+E」も特許権の範囲には入らない。これらを製造販売しても、特許権の侵害にはならない。敵さんはほくそ笑んでるよ。「Aのことを教えてくれて、ありがとう」って。

そうならないためには、システム「A+B+C」を一度、「A」と「B」と「C」に分解する。そして、「A」、「B」、「C」のどれがシステムXのキモになっているかを評価する。

そして、「A」がキモなら、「システムX」全体じゃなくて、最重要技術「A」について特許を取ることを考える。「A」と「B」を組み合わせたときに固有の効果を発揮するなら、「A+B」について特許を取ることを考えてもいい。


「木を見て、森を見ず」はダメって言われるじゃない。全体を俯瞰しなさいって。でも、特許はね。「森を見て、木を見ず」だけではダメなのよ。