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帰ってきてからも、楽しかったよ。


「また乗る電車が何番線かとか、全然出んねや」

昨夜、父とパリでの思い出を語らっていたとき、父が言ったその言葉に、ああ、そうだった、そうだった、頷いた。そこから、じんわりと、でも急速に、パリでのそうした細かい思い出が脳内を駆け巡った。


モン・サン・ミシェルからの帰り道、17:00発のバスが来なくて、バス停にいた人たちに必死に「Excusez-moi?」「Excuse-me?」と声をかけまくったこと。その中には日本人のカップルもいたけれど、彼らはレンヌ行きのバスを待つ私とは違ってパリ行きでバスが来たら行ってしまったけれど、それまで一緒に寄り添ってくれたこと。その後も、誰に何度聞いても(このまま帰れなかったらどうしよう)安心できなくて、きっと不安そうにしていたのだろう、国籍関係なく周りにいた人たちがちょくちょく声をかけ、表情で励ましてくれたこと。

システムエラーかなにかだったらしい、乗る予定だったバスは結局来なくて1時間後、チケットを取っていたレンヌからのパリ行きのinoui(高速電車)が乗れないことが確定したその瞬間にきた18:00発のレンヌ行きバスが到着した時に、助けてくれた人たちに「Merci beaucoup!」「Thank you very much!」と声をかけながら乗り込んだこと。

元の料金を数%払って1本後に変更したパリ行きのinouiを待つため、レンヌを散策して帰ってきてさらに駅で時間を潰していたときに、スペイン人と間違われてナンパされたこと。さあそろそろか、と立ち上がるとまだ、例の「何番線か」が書いていなくて再び不安が膨れ上がって困った顔をしていると、マダムが声をかけて励ましてくれて、表示されるまで少し離れたところから見守ってくれていて、表示されたら知らせてくれたこと。


まだ半年だというのに、知らず知らずのうちに少しずつパリの記憶が薄れていたことに気づいて少し悲しくなったけれど、日本に帰ってきてからの半年間も、それだけ密度濃い時間を過ごせたということなのだと思う。

「パリから帰ってきたら遊ぼうね!」と言ってくれていた人たちと遊んだこと。卒論逃避にゼミ終わりに毎週のように友人と飲んだこと。卒論を提出日当日まで書けてなんとか書き切ったこと。ゼミの飲み会、クリスマス会、新年会。仲間内での卒論お疲れさま会。卒論審査会。

松潤の展覧会。家探しに明け暮れて内見のために2回東京に足を運んだこと。春休みに入ると、私が東京に行く前に、といろんな人が声をかけて遊んでくれたこと。パン作りにハマったこと。ゼミの後輩からアドバイスを求められて彼らのESを見たこと。父と母と3人でモネ展を観に行ったこと。8000字のゴミレポートと格闘し、基本情報技術者の勉強をちょこっとし、入社手続きの書類30枚近くと格闘したこと。家具家電はまだ注文できていないけれど、電子レンジと冷蔵庫にこだわって選んだこと。


大変なこともあったけれど、と言っている今も完了していないことが山ほどあるけれど、本当にいろんなことがあって、そのどれもが楽しくて、楽しくて、楽しかった。

その集大成とでもいうべきか、本来なら引っ越し準備で1番であろうこの時期、今日から私は彼とウィーンへ旅立つ。正確にはまずは明日、ミュンヘンに到着してザルツブルクへ移動し、次の日はハルシュタット、最後4日間をウィーンで過ごす。

パリの写真たちを集めて日記風にした記事が4週分Ⅰ〜Ⅳまで、ずっと下書きに眠っている。ウィーンに行くまでに公開したかったけれど、新生活準備と就職先のゴミ課題と友人との予定たちに追われてできなかった。自分を癒してくれるSSDに保存した写真たちをパソコンに通さずにみるためにもここに置くものなので、社会人になるまでには公開しよう。

私の悪い癖として、記事を公開しようと思ったとき、下書きから先に公開したい思いが先行して、結局書ききれなくて何も公開できずに終わるということがかなりある。時には、noteに書きたい気持ちとか出来事とかがあっても、記事にするには足らないなと思って、複数エピソードが溜まるまでまったり、思考が進んで1記事書けるくらいになるまで煮詰めたりもする。そのおかげで、パリの写真記事に加えて、4年間最後まで勤めて退職したスイミングスクールについての話も、友人が企画したエセ卒業文集に寄稿した記事を少しアレンジしたものもまだ下書きに眠っている。

もっと素直に、長さや内容の濃さなんて気にせずに今思っていることを形にしちゃえばいいのだと気づいて今これを書いている。しかもそういう軽いノリで書いた記事の方が反響が大きかったりもするから、本当に不思議だ。


なにはともあれ、ウィーンに旅立つ。

もう少しパリの余韻に浸っていたかった気もするけれど、福利厚生が最高峰の我が社とはいえ、新卒1年目で1週間強取れることはまあないと思われる。行けるうちに行っておきたくて、半年でヨーロッパをおかわりするという贅沢を味わえることになった。

今回は弾丸の6泊8日。

これまでは日本との比較や、私の価値観からしかパリを見ることができなかったけれど、ウィーンに行くことでウィーンとの比較というまた新しい側面からパリを眺めることができるようになる。それが嬉しくて、楽しみで仕方ない。

パリに行って、旅はリサーチしている段階や実際に現地にいる間だけでなくて、帰ってきてからも楽しいものなのだと知った。美術館で絵に触れ、インスタやテレビで写真を見て、日本でパリに、ヨーロッパに触れるたびに、いつどこででもあの日々に帰ることができる。国内でも海外でも、いろいろな土地に訪れるたびに、パリを見る視点がまたひとつ、ふたつと増えていく。

パリを見て仕舞えばヨーロッパは他も似た街並みをしているのだろうと思っていた。だけどきっと、全然ちがう。その土地ならではの空気感があって、建築があって、人がいる。

生きている間に1つでも多くの場所を訪れて、世界を知りたい。そしていろんな土地を知った上で、またパリに何度でも戻ってきたい。


まずは、ウィーン。

帰ってきたらまた、たくさんお話しします。
ウィーンのこと、パリのこと。






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