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滲み出るものは嘘じゃないから


言葉で伝えられないってことは自覚してないってことだと思っていた。


言葉はいくらでも嘘を吐ける。言葉はいくらでも取り繕うことができる。それに比べて行動は嘘を吐かない。

そう言われることは知っていて、それが現実になることがあるってことも知っていて、でもその上で、行動はサルにでもできるけど言葉を尽くせるのは人間だけなんだから、言葉で行動の意図を伝えたり、伝えた言葉を嘘にしないよう行動すればいいのに、と思っていた。



***


※ここから先、イチャイチャした感じ(?)のこと書いてたりするので、読みたくない方はスクロールおねがいします



あれから


毎晩していた電話はなくなったけれど、する日もあって、その代わり朝と夜に必ず「おはよー」「おやすみ〜」とLINEがきて、「今日も1日がんばってね☺︎」「今日も1日おつかれさま☺️」とLINEして、話したいことがあればそのままLINEで話して、お昼頃におもしろいネット記事があれば共有して、という付き合いたての頃のような日々が続いた。

週に1回会うことも、会った日にすることも、帰りに駅まで送ってくれることも、私を見つめる眼差しも、別れ話が出る前と後で何ひとつ変わらない。


ひなまつりの週に会ったときは、久々の彼お手製のトマトパスタとサラダ、私が好きなお酒をたんまり用意してくれていた。

その日「今日なんでこんなことしたかというとですね、おひなまつりだからです。女の子の日、だからね。」と、”次からはこんなことないよ”と言うかのように彼は言ったけれど、


その次の週は、オリジナルのカレーを用意して待っていてくれた。

「翠のためじゃない。俺のためだから。」と言いながら、辛いのが苦手な私のために、ルーを使わずスパイスの配合をちょうど良くするために数日前から試作を重ねてくれていた。

夕方には手を繋いで、歩ける距離にあるショッピングモールに食材のお買い物と、スイーツ代わりの家に帰って飲むスタバを買いに行った。

スタバを飲んで、2人で布団に入って抱き合っているうちに19:00を過ぎていて、帰ろうと焦る私を彼は全身で布団の中に引きとめて「泊まってって?」とおねだりした。

おねだりを断って「(帰り道送って)おねがい」とかわいくおねだりする私。「明日の朝なら送ったげる」とニコニコ笑う彼。

そんなやりとりを何度か重ねたあと、観念したかのように「ここで送っちゃう俺の優しさを呪うわ」と言いながら、彼はちゃんと帰り道送ってくれた。


この日、彼と育児や結婚の話をした。

子どもを褒めて伸ばすかとか、その観点に関して自分はどう育ってきたかとか、生徒に対してはどうかとか。

ドレスも着るけど和装もしたいー、とか、披露宴はしないけど式後に親しい人だけ集めてお食事会って感じのことはしたいーとか。

そのなかで「俺は(式に)女の子は呼ばないかなー」「あ、でも〇〇さんは呼ぶかも。」
と言う彼に、「なんで?」と問うと
「だってここ(私と彼)のきっかけになった人だからね」、と彼は答えた。



その後、WBC観戦を一緒にしたいという名目で、共有しているカレンダーを確認して、空いている日にお泊まりに誘ってきたり、
じゃあ準々決勝はお泊まりで一緒に観よう、と約束をして、準々決勝まではそれぞれのテレビの前で、LINEでリアルタイム実況したり。


それまではどこか探り探りだった距離感が、徐々に元通りになっていく。



【ホワイトデー】


そんな中で迎えたホワイトデーは、私の大好物のであるピザが美味しいお店を見つけて連れて行ってくれて、その後にピカソ展、そしてその辺りで有名なパン屋さん、最後にカラオケという1日だった。

私はマルゲリータ1択だったけれど、彼はメニューに迷っていて「翠、他に食べたいものある?」と聞いてきたのでハンバーグを選んだら、彼は本当にそれを注文して「いつも翠が好きなものばかり食べてる気がするの、気のせい?笑」と冗談っぽく笑いながら私に半分くれた。(ちなみに行き先は、大抵彼が美味しそうなものを見つけてきてくれて「この中ならどれがいい?」と尋ねられた中から選ぶことが多い。)

これは私のマルゲリータ。
ちなみにヘッダーは、彼が頼んだハンバーグセットのパン2種類を私とシェアしようとしている彼。


ピカソ展に関しては、私はピカソが特別好きとかいうではなく、マハさんのゲルニカを読んで、とりあえず見てみたいという気持ちのほうが大きかった。絵の好みとしては、ルネサンスとかのTHEな感じの画風やゴッホの方が好みだから、めっちゃ好み!!という作品に出会えたわけではないけれど。

マティスの『庭師ヴァリエの肖像』がその日見た中では1番好きで、ミュージアムショップで何かほしいなぁでも特にないなぁなんて思っていた私の様子を見て「なんかいる?」と聞いてくれた彼にその旨を伝えると、ポストカードを1枚買ってきてくれた。嬉しい。

ちなみに近いうちに、地元付近にずっと行きたかったゴッホ・アライブが上陸するらしい、とこのピカソ展で知ったので、早速来週彼と行く予定を立てた。(✌︎)

うちの大学はなんちゃらメンバーとやらで、
団体料金(大学生料金より安い)で入れました✌︎


そして、おやつ代わりに彼が連れて行ってくれたパン屋さん。とても人気で残っているか心配だったけど、なんとか残っていて、私が選んだベリーパンと、彼が選んだオレンジピールパン、ブリオッシュを買ってくれた。

なんで3つ?と思っていたら「俺が選んだパン2つの中だったらどっちが食べたい?」と聞かれて、ますます???になる私に、彼は「1つお土産ね」とブリオッシュを渡した。

「なんで?」と尋ねると「もともとそのつもりだったの。気が向いたら、妹とかお母さんとかに一口あげて」と答える彼に「絶対イヤ」と私は言った。ちなみに彼のブリオッシュは、私の次の日の朝ごはんになった。

めっちゃおいしかったブリオッシュ

カラオケでは、春歌気分だった私が『気まぐれロマンティック』『SAKURA』『ハルウタ』『ラストシーン』(いきものがかり)、『手紙〜拝啓十五の君へ〜』(アンジェラ・アキ)、『旅立ちの日に・・・』(川嶋あい)など、私が歌える高さの曲(高音)で普段カラオケで歌わない選曲を連発し、対して彼はそれに乗っかったり、乗っからずに"さもJ-POPを歌ってます風にみえて、実はアニソン"な選曲を連発していた。

「(彼)の選曲は、洋楽・ミーハー曲・アニソンで、アニソンのうちの7割くらいNARUTOの主題歌じゃない?」と言うと、彼は「そんなことないよ!」と抵抗して、がんばってNARUTO以外のアニメの主題歌を見つけて歌い、私にクイズを仕掛けていた。

「実はこれアニソンなんっすよ」を繰り返す彼に、「別に"実は"じゃなくていいじゃん」と言う私。「いやー、アニソンってわかったら困る場面もあるでしょ」と返す彼。「隠す必要ないよ」と言い返す私に、「翠に対してはね」と答える彼。

そう言われてしまうと嬉しくて「そっかあ、へへへ」と返してしまうから、その話はそこで終了。彼には敵わない。


「今日たのしかった!ありがとう!」と言った私に「よかったよかった」という彼。「楽しかった?」と尋ねた私に、「楽しかったよ!」と答えた彼。

「また明後日会えるね!楽しみ!」と言った私に「楽しみだねえ」と彼が言ってくれたから、とびきりハッピーな気分でいつもよりも寂しさを感じることなく、帰りにバイバイすることができた。


【これから】


一般的に別れ話が出たら、ちゃんと別れてあげるのが正解だと言われているし、それが正しいのかもしれない。

だけど、同時にそのときがくれば、きっと引き留めなきゃいけないという気持ちでさえも失われるはず。これまで失いたくない人を庇った末に手放してきた私だからこそ、その時がくればきっとちゃんと手放すことができると思う。

今回、私が引き留める道を選んでその結果、また今うまくいっているということはきっと、別れるべきタイミングではなかったということなのだろう。




「おもしろいこと言える人になりたい」と言った彼の友人(男)に、「おもしろくなった後の君のことも好きだけど、俺は今のままの君が好きだよ」と伝えたという話を聞いて、「私には言わないのにー」と頬を膨らませた私に、てへっという感じでいたずらっ子っぽく笑って「友達に対する好きと恋人に対するのは違うでしょー?」と彼は言った。



そんな彼からは相変わらず「好き」「愛してる」という明確な言葉はないけれど、「好き」と伝えた私に優しく「ありがとう」と応える彼の声色・表情や彼の数々の行動で、私に”愛してる”と伝えている、と感じる。


好きなら好きと、どうして言わないんだろう。どうみても「好き」に見える行動とってるんだから、自覚してないなら自覚してよ。


そんな縋るような想いはもう、ない。


「わたし、優しくしてくれてありがとうねって思えばいいのかな」
「そんなことを思う必要はない」
「でも優しくされたのに嫌な気持ちになるなんて、間違ってるんだよね?」
「間違ってない。百音の感情は百音だけのものだ。誰かにこう思いなさいと言われたら、まずはその人を疑ったほうがいい。どんなに素晴らしい主義主張も人の心を縛る権利はない。
わたしの美しい庭/凪良ゆう


彼が私を愛していると思っていないのだとしても、彼が持つその感情・考えが間違いではないように、

彼の言動を見て”私は愛されている”と感じる、私のその感情・考えも間違いなんかではない。

言葉によって傷ついてきたから私は言葉に執着してしまいがちだけれど、
言葉にして伝えない、イコール、自覚していない、でもないのだろう。


片思いをしている人が「(好きな人)のことなんて好きでもなんでもないからな」と言っても、周囲の人からみると好意がダダ漏れだったり。

好きな人に抱かれていてもなぜか心の空虚さが消えなかったり。


そんなことが起きるのは、きっと想いが何気ない仕草や行動や表情や声色に滲み出るから。

そして滲み出るものはきっと、無意識だからこそ嘘がつけないのだろう。


私が、いくら言葉足らずなところや余計な一言があったとしても、彼を信じているのは、彼から滲み出るものが私を幸せにしていて、それを信じているからなのだろうと思う。


そしてきっと、これからもそれを信じていたいから、私が恋落ちる先には、何度でも彼がいるのだと思う。





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