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伊根町探訪記(②浦島太郎の民俗学)

※この記事は「伊根町探訪記(①舟屋の経済学)」の続編になります。
①に伊根町って何だ、とか諸々書いてますのでよろしければ①もどうぞ。https://note.com/syn1low/n/nce19a427cddd

伊根町

①が経済学だったので、②は民俗学です。

私事で恐縮なのですが、私は小さい頃から妖怪が大好きでして、水木しげる先生の漫画や京極夏彦先生の小説、ネットにあがっている都市伝説的な怪談が大好物なのです。(江戸川乱歩、横溝正史、夢野久作といった昭和のサスペンス作家も良いですね)
特に京極先生の百鬼夜行シリーズは全巻読んでいるくらい好きで、あの膨大な知識量と物語の構成力に毎度圧巻されてしまいます。
※百鬼夜行シリーズについて少し解説をすると、舞台は戦後日本、主人公的な登場人物たちが毎回凄惨な殺人事件に巻き込まれると共に、その事件の原因となる問題や過去を「妖怪」になぞらえて解決していく小説です。
妖怪が人を襲ったりするモンスターパニック的な要素は一切なく、人間の中にある暗い部分や認識のズレを妖怪に見立てて事件を丸くおさめる、という共通した筋書きで、妖怪自体に関する知識は勿論のこと、戦後日本の社会のあり方、仏教の宗派の歴史など、サスペンスなのに何故か民俗学的な勉強をした気分になる不思議な本です。(物語の主人公、中禅寺秋彦に言わせれば「不思議なことなど何も無い」のかもしれませんが・・・すいません知らない人にはイミフですね。是非読んでみて下さい)

で、私の妖怪好きがこの記事にどう関係しているのかという話ですが、伊根町で私がある建物を見つけたのが発端でした。

あの建物ってなんですかね?

①で伊根町の舟屋を紹介しましたが、伊根町には他にも色々観光スポットがあります。その一つが「蒲入水産の漁港めし」です。
http://kamanyu-suisan.co.jp/meshi.html

端的に言うと、漁港で食べるランチ、です。当日はあいにく曇り空でしたが、ボリュームのあるランチでこちらも大満足でした。

蒲入水産

で、ですね。
上の写真に写りきれてないませんが、私たちが漁港めしを食べた場所からは島が見えました。その島には、大きな木造の古い館が見え、妖怪好きの私にとっては非常に心惹かれるものがありました。
そこで、漁港めしのおじさんに聞いてみることにしました。

:すいません、あの対岸に見える島に、古い建物があるじゃないですか、あの建物ってなんですかね?

おじさん:え、建物?ああ、あれは、神社ですよ。

:え、神社なんですか?(ワクワク!)

おじさん:(一瞬の沈黙)でもね、しょーっもないですよ。本当、しょうもない場所なんで、あんなところ行くくらいだったら、すぐ近くに、浦島太郎に縁のある、日本で一番古い浦嶋神社があるから、そこに行ったほうがいいですよ。

:そうですか、分かりました!ありがとうございます。(ワクワク!)

古い神社というだけで、妖怪好きの私は興奮していました。
レンタカーで来ていた私と奥さんは、車に乗り込み、まずは対岸の島の「しょうもない」神社に向かうことにしました。

真島神社

Googleマップで見るとこんな感じです。蒲入水産漁港めしの反対側に、「真嶋神社」とあるのが分かりますね。ここです。しかし、私は結局この神社に行きはしませんでした。その経緯を奥さんとの対話形式で記します。

:おっ、着いた。本当だ、鳥居があるね、神社だね、確かに神社だねえ〜。ウキャー!(ワクワク!)

奥さん:私は行かないから、行ってきていいよ。

:分かった。じゃあちょっと待ってて。(車から降りて鳥居に向かう私。鳥居に着くと、島を上る階段が見えるものの、頂上が見えない上に薄暗いため怖気付く。奥さんのいる車に戻る私)

奥さん:どうしたの?

:怖いからやっぱりやめとくわ・・・。

奥さん:おっけー、じゃあ浦嶋神社に行こうか。

:いや、ちょっと待って、あの神社の名前だけ確認させて、ちょっと行ってくるから。(ワクワク!)

奥さん:何でそんなにあの神社にこだわるの?ちょっと気持ち悪いんだけど。(キレ気味で)

:ごめん・・・。浦嶋神社に行きましょう。

この時、私のオタクっぷりと興奮が奥さんには全く理解できず、もはや取り憑かれたのではと思ったのだそうです。一回諦めてるのにまだ行こうとしてるのも気持ち悪かったそうで。
また、おじさんが「しょうもない」と強調していたのも私たちを真嶋神社に行かせないようにするためではないかと奥さんが言い出し、そう言われてなんだか怖くなった私たちは、逃げるようにその場を後にしました。
※私が勝手に盛り上がっただけで、地域の方にとっては普通の神社だと思います。すいません・・・。確かに普通の神社ですね。http://tangonotimei.com/doc/kamanyu.html

いざ、浦嶋神社へ!

前置きが長くなりましたが、私の妖怪好きが功を奏して(祟って)、日本最古の浦島太郎伝説が残る、浦嶋神社に辿り着きました。
そもそもですね、皆さん浦島太郎が”実話”に基づく話だったって知ってました?(ワクワク!)
浦嶋神社の縁起に関する案内を読んでみると、こう書いてあります。

創祀年代は淳和天皇の天長二年(825)浦嶋子を筒川大明神として祀る。その大祖は月讀命の子孫で当地の領主、日下部首等の先祖であると伝わる。
伝承によると、浦嶋子は雄略天皇二十二年(478)七月七日美婦に誘われ常世の国へ行き、その後三百有余年を経て淳和天皇の天長二年(825)に帰ってきた。常世の国に住んでいた年数は三百四十七年間で、淳和天皇はこの話を聞き浦嶋子を筒川大明神と名付け、小野篁(802-853、公卿・文人)を勅使として派遣し社殿が造営された。

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要するに、浦嶋子(小野妹子的な感じで嶋子なんでしょうね)さんと言う人が、美女に誘われて別の世界(常世の国)に行き、350年滞在して帰ってきたら天皇が「お前めっちゃすごいから神社作ろ」と言った、というお話です。

で、この話は日本最古の”歴史書”と呼ばれる日本書紀にも触れられており、実は浦島太郎伝説って全国各地にあるらしいのですが、その中でも一番古い記述なのだそうです。(”実話”とか”歴史書”と””で囲ったのは、フィクションであることを意味してます。念の為)

ここまでは、へ〜と思って読んでいたのですが、あることに気づきました。浦嶋子さんは「七月七日美婦に誘われ」別世界に行ったとされています。
何か似たような話なかったっけ・・・?最近、織姫、彦星、七月七日、あれ、七夕?
七夕の話は、有名なので皆さん分かると思いますが、簡単におさらいすると、昔空に織姫と彦星という恋人たちがいて、仲良すぎるから、という理由で織姫のお父さんが1年に1回、七夕の日にしか会わせないようにした、というやつです。理不尽かつ嫉妬深い父親ですね・・・。よく考えると怖い。
この七夕、元々は中国の伝説らしく、Wikipediaによると、紀元前200年〜紀元200年の間の「漢」の時代に遡るみたいです。

織女と牽牛の伝説は『文選』の中の漢の時代に編纂された「古詩十九首」が文献として初出とされている

で、中国の伝説バージョンだと、彦星は人間で、織姫は天女という設定だそうです。彦星はある日、織姫が水浴びをする川に行き、織姫が天に戻れなくするために衣を盗むという・・・。
https://www.jishujinja.or.jp/tanabata/world/chi.html

あれ、これも何か聞いたことあるぞ。羽衣伝説の話ですよね?あれ?
https://www.shizuoka-citypromotion.jp/mihonomatsubara/learn/hagoromo.html

と、いうことで謎は深まるばかりです。ちょっと疲れたので一旦ここまでにしときます。続きを刮目して待たれよ!


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