見出し画像

箱庭にいることを知ることが重要

自分を高める方法を読書会に学ぶ

「俺はビッグになる!」
こんな恥ずかしげもないことを、人様に公言していた若かれし頃、自分の見ているものが世界のほんの一部だと言うことを知る由もなかった。

自分が生活をしている範囲のことしかわからないし、自分が知り合う人の人数だって高が知れている。学校で友達をつくっても、せいぜい100人だろう。それ以下の人も大勢いる。
家や家族は別々であっても、同じ学校に通い、同じ給食を食べ、同じ校庭で遊ぶ友達とは、どうしても似たもの同士になってしまう。
そんな小さな世界の中で自分は生きているんだと意識して生きていない。

学校に行って、昨日見たテレビの話や、ゲームの話を友達をすることが生活を支えている。
学校では、その友達を相手に、テストで競い合い、上位数名がいい高校、いい大学に進むことができる。
そんな生活をする私たちの元に、メディアから流される諸外国の紛争や暴動。対岸の火事というのはこのことだろう。自分の生活には全く影響を及ぼさない。
日本国内を見渡しても、政治家が起こした汚職事件などに関与したわけでもない限り、そのほとんどは明日からの生活に変化を与えるものではない場合が多い。

社会人になり、会社に入っても、そんな生活は変わることはなかった私には、自分の生活に直接関係ないことであっても、それらの情報を日夜勉強して過敏に情報を精査している人を見ると、尊敬したものだった。
自分には関係ない出来事がメディアを賑わせている中で、いざ、芸能人が不倫でもしようものなら、棒で殴りにいく1人として加勢する。
私の周囲で生活している人々には、そんな人がほとんどだった。私もそんな1人だった。

自分と世界を繋ぐものが、どんなものなのか、輪郭がはっきりしない中で生きていた私にとって、読書会を始めたのは人生を変えたと言っても過言ではなかった。
始めたきっかけは、読書好きなのに本が読めていない自分の、読書量を増やす方法を考えた時、『読書はアウトプットが99%』という経営コンサルタントの藤井幸一さんが書かれた書籍を読んだことだった。
この書籍の中で、「読書会を開いてみよう」というものがあった。ルールは少ない方が楽しめるとあったため、ほとんどルールを設けず、5分前後で好きな本を参加者に紹介するというルールだけで始めたのだ。

読書会を開催すると、参加してくれた人のほとんどが常に読書をしている人が多かった。私も読書はしていたが、読み方は人それぞれ違うものだった。
参加者は経営者、塾講師、上場企業の役員、旅館の女将、クリエイターと幅広く、普段生活しているだけでは決して会うことのなかった人が多く参加された。
企業展、異業種交流会などでしか会えない人が多いのに、そうしたビジネスありきの出会いとは違って、‘本の話を元に雑談のように気軽に話を聞ける’ことが大きな違いだ。
つまり、考え方や、思考のプロセスを無料で聴くことができる魅力があった。

中でも、女性経営者であるTさんは、私の憧れであり、尊敬していた人物だった。考え方や思考が洗練されていて、こんな人になりたいと、男の自分でも思うほどの自然体のキャリアウーマンだったのだ。そんな憧れの人さえも、参加してくれたことが純粋に嬉しかった。

家と学校を往復していた頃も、家と会社を往復している時も、世の中の出来事の外にいるような錯覚に陥っていた。
しかし、読書会を開いて、いろいろな地域に住み、いろいろな業種で働く人たちを見ることで、見える世界の一部分の大きさが明らかに広がってきた。
これだけでも、自分の生きていた世界は、箱庭のようなものだと実感することができた。

「ビッグになる!」
と豪語していた学生時代のまま、大人になってしまった私が見ていたのは、シルバニアファミリーのような小さな、小さなミニチュアの世界だったと感じていたのだ。
恥ずかしくなった。読書会の主催者でありながら、誰よりも学びをもらっていると感じたからだ。

読書会を開いて1年ほど経過したとき、Tさんから、

「尾崎さんのおかげです。ありがとうございます」

と言われた。唐突なことで、何を言われたのか一瞬わからなかったが、私なんてちっぽけな人間はそんなこと言ってもらえる資格なんてないですと答えると、

「尾崎さんが読書会を開いてくださらなかったら、こんなにも本を読むことはできなかったと思います。本当に読めていなかったんです」

そう言ってくださったのだ。
参加者の塾講師の方も、
「読書会に参加して、人生が変わりました」
と感謝を口にしてくださった。

皆さんが、心から言ってくださっていることがわかった。
自分が好きで始めた読書会が、誰かの人生を変えた。
それは初めて『箱庭の外』に出られたような経験だった。
広い世界の中で生きている感覚になったのである。

自分が世界の外側にいると感じている人は、一歩、外に踏み出すだけで新しい世界の風景を見ることができる。
読書会に限らず、人と人とのつながりこそが、人を成長させるという本質にたどり着いた経験となった。

とっても嬉しいです!! いただいたサポートはクリエイターとしての活動に使わせていただきます! ありがとうございます!