誰よりも人間みたいな宇宙人を書くこと
小説を書く時に二つ、心がけていることがある
一つは「未知」
異国とか宇宙とか、未来とか過去とか
人は自分の知らないものを知りたいって思う生き物で、小説の醍醐味はやっぱり「未知」に触れることだろう
好奇心と言ってもいい
だから古今東西にあふれる小説も、大抵の場合は「未知」を内包している
突拍子もないファンタジックな設定が跋扈し、それすらもマンネリズムと切り捨てられていく
それほどまでに人が未知を欲求する力は強いんだろう
もう一つは、けれど逆
「親近感」や「身近」「素朴」といったような、ニアーバイな感覚だ
確かに人は「未知」を希求するわけだけれど、それと同じくらいに、「自分と同じものを見つけたい」という感覚を持っていると思う
それは、思想的な仲間意識だったり、単に日常のふとした出来事を共有したいということだったり……
SNSなんかで「シェア」が一大ムーブメントになっているのもその証左だろう
それで、小説を書くとき、この二つの問題を同時に処理していかなくちゃいけないわけだ
「未知なるもの」と「身近なるもの」
これらは相反する問題であり、けれど切り離せない問題でもある
だって「未知」だけだと、それはあまりにも人間の理解から遠ざかってしまう
もちろんそれに突き抜けた作品もあるけど、やっぱりメジャーであるとはいい難い
とはいえ、だ
この問題は何も悲観するようなことじゃない
裏を返せばそのまま、面白い小説というものに近づくための手段でもある
「未知」と「身近」を共存させる、ただそれだけでもう十分に小説の土台として良いものになっているはずなのだ
だから自分は、誰よりも人間みたいな宇宙人を書くことを心がけている
そいつは宇宙人で、文化も我々と違って、未知のテクノロジーを使いこなす
それなのに、例えば片思いしているあの子を前にすると本心がどうしても言えなくなってしまう……
もちろん宇宙人のところがアトランティスの生き残りとか高天原の神々とかでもいい
とにかく何でもかんでも、「未知なるもの」の装飾を分け入っていくと、「何だ、自分たちと変わらないのか」と思えるものがあるような
そんな小説を書いてみたいし、読んでみたいと思っている
とはいえ言うは易しで、やってみると難しいわけだけど(できたら小説家になっているのだ)
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