明け方のエコール(ポッドキャスト)の紹介と感想

はじめに
 最近、明け方のエコールというポッドキャストをよく聞いていています。哲学に関するポッドキャストなんですが、日常についての会話から哲学に触れていくのが面白くて聴いています。今回の記事では、このポッドキャストの紹介と感想を書いてみたいと思います。

※Spotifyから聞けます♪

※youtubeからも聞けるようです。


ポッドキャストの紹介

 明け方のエコールは、夜燈(よあかり)さんと小林さんのお二人がテーマについて話しながら、哲学や現代思想、文学や創作について触れていくというものです。何かを教えるでもなく、正解のような答えが出るわけではないけれど、二人の何気ない会話が哲学的な思考につながっていくのがとても面白いです。また、本のコーナーもあるので、話題になっている哲学書の感想や、哲学に触れていくのにどのような本を読めばいいのかの参考になります。感想も募集しているのでリスナーとして参加していくこともできるようです。
 哲学のポッドキャストだからといって堅苦しかったり、難しかったりするものではなくて、ラジオのように流しながら聞くこともできるくらいの雑談感も魅力です。ちなみに、第0回目では明け方のエコールという名前の由来や、どんな人に聞いてほしいかを話されています。個人的には、届かないところに届けたいという、ポッドキャストを始めたきっかけが語られるところが胸に響きます(第0回の30:00頃から)。ちなみに、その語りの後にお二人が哲学に興味を持ったきっかけを話されています。

ポッドキャストの感想
 
作業用に流しながら、何度か繰り返し聞いている内に気づいたのですが、過去に出てきた話題やテーマが再び出てきたり、思わぬところでつながったり、問いかけ自体が洗練されていくいくのが、このポッドキャストの魅力だと思います。この問いかけが洗練されていく過程が楽しめるのは、言葉を使った創作をされている夜燈さんと、ドゥルーズ/ガタリの研究されている小林さんの立場の違いがうまい具合に作用しているからかもしれません。素敵な化学反応ですね。
 お二人の関係性も程よく知り合い、程よく他人という感じで、聞いていても心地よい距離感があります。そして、出てくる話題やテーマは日常的で、ケアや生老病死、SNSなどのネット文化、健康や美容、教育と管理といった日頃の生活と地続きなところが聞きやすさにつながっていると思います。
 とはいえ、よくよく聞くと出てくるテーマは普遍的で切実な問いかけです。そして、現実の世界でも答えが出なくて頭を悩ましたり、心身を傷(痛)めたりするような難しいテーマも扱っています。それは、現実の社会で問題とされていることでもあり、誰もがぶつかるような問題でもあるように思います。そういった毎回用意されているテーマと、表面に現れている内容についてしっかりと考察されることで深層という高低をもった構造を分析しているような会話が、2人にしか出せない明け方のエコールの雰囲気を出しているように感じます。個人的には沢山のテーマを時間に追われながら詰め込むよりも、毎回2〜3個くらいのテーマで時間を気にせずにゆっくりお話してほしい、と思っています。毎回、話題に関連する哲学者や概念についての紹介や解説を入れてくださるのは勉強になります。くり返し聞いてみると、冗長されるテーマや問いがいくつもあって、新たな発見や理解の深まりがあります。
 「ゆっくり解説」や「ゆる◯◯」といった便利なyoutubeのように、情報を効率よく得られるものではありませんが、誰かと誰かが何かについて思考しているのに立ち会えるのは、このポッドキャストの最大の魅力だと思います。
 個人的には、ドゥルーズ/ガタリとフーコーについて、檜垣立哉先生のバロックの哲学(西洋哲学と京都学派について)、詩や文章といった言語を使った創作活動(哲学と創作活動の関係について)、他者とのコミュニケーションと社会との関係性、ケアリングと自己実現、健康や美容(おすすめの紹介や身体性と哲学の関連)、といった話題のお話を聞いてみたいと思っています。

おわりに
 
哲学対話や哲学カフェなどといったコンテンツが流行っているようですが、雑談から哲学するというコンテンツはあまりみかけないかと思います。一歩を踏み出せなったり、どうすればいいかわからない、といった人に聞いて欲しいと思うポッドキャストです。自分の若い頃に、こんなラジオがあったら毎回楽しみに聞いたと思いますし、一歩を踏み出せるような元気がもらえるような気がします。誰かを縛りつけるのではなく、解放するような、不思議と少し楽になるようなポッドキャストです。気になった方はぜひ一度聞いてみてください。

(終わり)

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