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犬を飼うのが夢でした2

私たちには一人息子がいます。
彼は夫の度を超したしつけにより心身ともに体調を崩し、家を出ていました。
モカを飼い始めた2019年10月にはすでに家におらず、息子の部屋にモカのゲージを置くことにしました。

息子は発達障害の診断を受けておりこだわりが強い性質で、嫌いな科目のテスト勉強は一切やりません。
夫は息子の勉強に対する姿勢を注意するのですが、息子自身はあまり危機感を持っておらず、中学3年生の頃から叱られる回数が増え始めました。

発達障害を理由に手を抜くことがあってはならないと厳しくする夫と、やりたくないことには決して手を付けない息子との確執は深まる一方でした。

高校に入ってしばらくの間は父子関係は落ち着きを見せましたが、息子はそもそも高校に通うことに不満があったので、まもなく校内で問題を起こし高校2年で退学することになりました。

学校に謝罪し継続して通わせてもらう道もありましたが、息子の気持ちを汲んで退学してもいいよと判断したのは夫でした。その後の進路は彼の希望で、予備校に通って大学受験を目指すことになりました。

しかし、自分から予備校に通うと言ったにもかかわらず、勉強に身が入らず、勉強している振りをしていたことが私たちの知るところとなり、再び夫の叱責がひどくなりました。

夫は在宅勤務だったので、仕事の合間に息子の高卒認定試験の勉強を手伝うことができました。そのおかげもあって、予備校での成績は振るわなかったものの、高卒認定試験をクリアすることができました。

その後大学に入学し、最終学歴は○○大学卒業という履歴書を手に就職できるのだと親としてはようやく安堵できる状況になりました。

しかし、大学も自分の本当にやりたいこととは違い、安易に決めた学部だったのでやる気はなかなか起きませんでした。
本人は自分の納得のいく道が見つからない限り、やる気は起きないものだという固定観念があり、親がいくら言っても効果はありませんでした。

大学の成績が振るわないのに友達と旅行に出かけたこと、資格試験の勉強に対するやる気のなさ、大学が主催する様々な説明会への欠席などが重なり、とうとう夫の怒りが爆発し、息子への暴力は度を越すようになりました。

そして間もなく、心臓が痛くなる、下痢が続く、髪の毛が抜けるなどの身体症状が息子に現れるようになりました。
私は、自分が口を出すと必ず夫の怒りが激しさを増すのを理由に、いつも見て見ぬ振りを貫いていました(しかしこれは聖書に出てくる罪にあたると知って、今、真剣に悔い改めています)。

私は、さすがにこのままでは息子の精神が破壊してしまうという危機感を感じました。
彼は夫の暴力に対する憎しみを度々口にするようになり、殺意さえ抱くようになっていました。

フルタイムで仕事をしていた私は、留守中に息子が刃物で夫を刺すのではないかという妄想に駆られ、仕事をしていても気が気でなく、足早に家に帰っては何もなかったことに心底安堵する毎日でした。

そして大急ぎで息子の引っ越し先を探し、不動産屋に連絡を入れ即契約し、夫に分からないように引越しの手配をしました。夫には、息子が置手紙を残して家出したことにしました。

こうして家族が崩壊し、少し落ち着いたころにやって来たのがモカだったのです。つづく

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