犬を飼うのが夢でした12
元夫と私が彼を叱るのは勉強に関することもそうですが、私たちが一番心配したのは彼の虚言癖でした。嘘を付いたことで特に厳しく叱ったことが今まで何度かありました。
数ある嘘の中でも、その内容が笑って済ませられることではなく、警察や学校を巻き込むような大胆な嘘を付いた時には彼の将来を危惧して私は本当に悩みました。
彼はADDという発達障害の診断を受けています。私は、発達障害の特性と言われている「嘘を付くこと」が常習化する前に、何とか矯正しようと必死でした。
しかし、今になって考えてみると、彼が嘘を付く場面は限られていました。それは怒られたくないからです。
騙そうと意図して嘘を付くのではなく、怒られることを回避するために事実を隠すのです。
息子と暮らし始めて丸3年以上経ちますが、嘘を付かれたという記憶はありません。
あの頃付いた大胆な嘘について息子は、他人にはあのようなやばい嘘を付く訳がない、親が怒るからそれを避けるために付いただけだと話してくれました。
つまり、虚言癖と言えるまでの常習性は彼の中には無く、私たち夫婦が極度に心配していたことは全くの杞憂だったのです。
発達障害の特性上、彼は常に変わった子どもという捉え方をされ、学校の先生や塾の先生から注意されることが他のお子さんよりも多かったはずです。
また、友人からも学年が進むほど変わったやつという扱いをされ、疎外感を感じることも多々あったでしょう。
そのうえ家に帰って来ても怒られる、暴力も振るわれるではたまったものではなかったでしょう。私はようやく彼の心情を理解できるようになりました。
彼の心はどんどん荒さみ、私たちへの憎しみが増すのは当然です。
実際、彼は夫が寝たのを見計らったかのように毎晩極端に遅い時間に家に帰って来ました。
母親として妻として、当時夫に働きかけるなり、息子の本音を真剣に聞いてあげるなり対処方法は色々あったはずなのに。
私は無力にもただ時が過ぎればきっと良くなるという根拠のない理由で自分を慰めることだけに終始していました。
続きます。
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