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【人事に効く論文】ベテラン人事:「これまでに1,000人以上と採用面接をしてきました」→ だから何?

Reinhard, M.-A., Scharmach, M., & Müller, P. (2013). It’s not what you are, it's what you know: experience, beliefs, and the detection of deception in employment interviews. Journal of Applied Social Psychology, 43(3), 467–479.

1. 50秒で分かる論文の概要

採用面接における応募者の Deceptive Impression Management (欺瞞的印象操作)について分析した論文です。欺瞞的印象操作とは、簡単に言えば、噓やハッタリで自分を良く見せようとすること。ドイツにおける352名分の実験データをサンプルに、以下の仮説が検証されました。

仮説①:経験豊富な面接官は、経験の浅い面接官よりも欺瞞発見能力が高い
→ 支持されなかった

仮説②:経験豊富な面接官は、経験の浅い面接官よりも欺瞞の手がかりを正しく理解している
→ 支持されなかった

仮説③:「欺瞞の手がかり」に関する正しい理解が、欺瞞の発見につながる
→ 支持された

仮説④:面接経験があるほど疑い深くなり、応募者の応答を真実と判断するバイアスが低くなる
→ 支持された

2. 私的な解説/感想

面接経験の多さは、欺瞞発見の正確さと有意な相関が見られなかった。なかなかパンチの効いた結果です。また、この研究での実験における欺瞞発見率、つまりウソを見抜けた確率は52.39%。逆に言えば、約48%の嘘が見抜かれなかったということになります。もしもこの数字が普遍的なものであるなら、かなりマズイですよね。採用面接において応募者の嘘は半分が事実のように扱われ、それは熟練面接官でも見抜くことができない。そんな面接精度で合否が決まり、一度入社してしまったら、日本においては解雇は事実上不可能。寒気がするほど怖いです。

但し、ちょっとした朗報もあります。各種先行研究を参考に設定された14の「欺瞞の手がかり」を正しく理解することで、欺瞞発見率が6%向上し、約60%になるそうです。ちなみに14の「欺瞞の手がかり」は以下の通り。日本人が相手でも通用するのでしょうか?
言語的手がかり:話の信憑性・返答の長さ・内容の詳細さ
非言語的手がかり:姿勢の移動・アイコンタクト・そわそわとした態度・イラストレーター(?)・笑顔・まばたき
非言語的手がかり:吃音・間延び・沈黙・発話ミス・発話速度

3. 読後の余談

「採用面接なんて、最初の3分でだいたい判断できる」
「部屋に入ってきた瞬間、ダメなやつは分かる」
こんな風に豪語する熟練面接官 は数多くいます。
また、X(旧ツイッター)でも、
「面接官は学生のここを見ている」
「合格する逆質問はこれ」
といったポストが毎日のように流れてきます。
残念ながら、バイアスまみれの勘違いであることがほとんど。就活学生をもてあそぶ様な内容の場合、本当に腹が立ちます。ただ、そういった輩に下手に触れると危険なので、こちらから近寄らないようにするのが吉でしょう。

2023年12月4日 初稿作成

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