見出し画像

ポニーテール|掌編小説

 ポニーテールという髪型があるのを、中学1年の時に知った。今までにポニーテールの女子とたくさん会ったと思うんだけど、吉野さんのポニーテールが僕の中で一番のような気がした。

 吉野さんは休み時間になると、少しの間頬杖をついて外を見て、思い出したようにカバンから文庫本を出して読み始める。右隣の僕は、いつもそれを視界の端に捉えていた。風に乗ってシャンプーの香りが漂ってきた時には、わざと大げさにあくびをして、机に突っ伏して寝たふりをした。

 ふいに、桜の花びらが窓から教室に迷い込んできて、左を向くと、吉野さんとバッチリ目が合った。あまりに咄嗟のことでどうしていいのか分からず、「桜だね」と当たり前のことを口走ると、吉野さんは少し微笑んで「そうね」と言い、文庫本に視線を落とした。

 吉野さんのポニーテールが風に揺れている。

 シャッターを切るように瞬きをして、また寝たふりをした。

(了)

(ビッケブランカの楽曲「ポニーテイル」を聴いて)


ネタものとはいえ、昨日はあんなおかしな140字ラブレターを投稿してしまい、「え?富樫って変態なの?」と思われたら困るので、真面目な掌編小説を書きました。

まぁ、ド変態ですけどね。(寝


こちらもどうぞ。

ありがとうございます!(・∀・) 大切に使わせて頂きます!