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pommeのうた 5

毛に覆われたまるいものからなにかが生えている
茱萸(ぐみ)のような小さな欠片が五つ
大きいものがひとつあり、
その上に小さなものが四つならんでいる
それが四本もあるので、
茱萸は十六個あることになる
もちもちとさわると、
逃げるように引っ込んだ

喰んでもいいと思える足先は
今日も無防備に天を向く
腹を触ろうとすれば好き勝手にあばれ
なにか意思を感じ取れる動きで
たまにこちらの手をとらえようとする

体毛がまだ伸び切っていないからか、
幼い日からよく飛び跳ねていたからか、四肢が長い
足先に鼻を近づけるとほのかに甘い香気がする
やわらかな肉は焼き菓子のかおり
あるいは温かくしたパンの湯気のかおり
だからおまえはおいしそうだ
もしもたべたなら舌触りは良いだろうし
口に入れた途端
綿アメのように消えてしまうかもしれない

食べてしまいたいほどかわいいと
そう思って生きていることをおまえは知っているか
もしかしたら気がついているのかもしれない
わたしたちの思惑など
人の次元ではない感覚で嗅ぎ分けているのかもしれない
おまえにとってわたしたちはどんなかおりがするのか
おまえにとってわたしたちはどんな心をしているのか
いつか言葉のない世界で会えたなら
きっと、教えておくれ

古屋朋