持続的イノベーションと破壊的イノベーション

先にPLC(プロダクトライフサイクル)について投稿しましたが、

デザインとプロダクトライフサイクル

今回はその続きとしてイノベーションのお話しを綴りたいと思います。

ITバブル以降、技術革新が停滞し始めたために様々な場面でイノベーションというコトバを見聞きするようになりました。
では、そもそもイノベーションとは何を意味することなのか簡単におさらいしておきましょう。

英語でのinnovationは、「革新する」という意味になりますが、この言葉が日本に輸入された1958年頃日本では、経済発展の途上にあり技術の発見や改良が重要であったため、「技術革新」と訳されてしまった様です。その技術革新が停滞してしまった現在、それ以外の革新を求める動きが活発化しているためにあちこちでイノベーションというコトバが使われるようになってきました。

そこで商品企画のビギナーさんやデザイナーとの接点がある方向けに
デザイン周りの話を綴る私の投稿では、
イノベーションを

「価値創出を前提にした 経済活動によって 革新された世界」

としておきます。ちょっとわかりにくい表現なので、簡単に表すと、

「新しいことを考え出して、儲けようとしてたら、いつの間にかそれが世の中を変えちゃった」となります。

イノベーションとは、「革新された結果」であることを忘れてはいけません。そしてそれは経済活動の中で評価された結果を指すという構図です。更に価値創造とは今までに類を見ない価値を作り出しその価値で経済効果をもたらすことを意味しています。


クリステンセン教授が言うには...

先のPLCの投稿の中で、イノベーティブな価値を提供するプロダクトが生まれてから衰退するまでの流れと、PLCが繰り返せない事について少し触れましたが、その理由についてイノベーションの創出に絡めて説明をしてみましょう。

先ず、PLCが繰り返せないと言うことは、そのプロダクトの進化が市場に認めてもらえない状況に陥るという事なのですが、その主たる原因は先の「技術革新」と訳されてしまったイノベーション創出の仕方にあるようです。

高度経済成長期、先進国の産業と肩を並べようと努力してきた日本は、いつの間にか多くの分野で技術面において世界と肩を並べるレベルに成長しました。この成長におけるイノベーションは「持続的イノベーション」と定義されています。(米ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・M・クリステンセン教授による定義 著書:イノベーターのジレンマより)


持続型イノベーション

この持続的イノベーションは、既存市場で成功している価値をPLCの中で更なる付加価値を加えるなどして革新する方法で、日本のメーカーが得意としてきました。

これは、技術革新の伸びしろを成長のエンジンとしてPLCをサイクルさせるものであり、既存価値の延長上にイノベーションの種が存在するため、いったん市場に受け入れられた価値はその後のPLCのサイクルで失敗する確率が低く、技術革新に成功体験を重ねてきた日本メーカーに長らく受け入れられてきました。

しかし、付加価値偏重でPLCのサイクルを繰り返すうちにプロダクトの価値が高くなりすぎてしまいハイエンドのプロダクトを求める者にしか評価されなくなり、それ以外の生活者は不要な価値に対するコストとのバランスに疑問を持ち始め評価しなくなりました。
また技術革新の伸びしろを消費してしまったメーカーは成長のエンジンを無くしPLCを繰り返すことが出来なくなったうえ、新たに起こった異なるイノベーションによって更に苦しむことになります。


破壊的イノベーション

その異なるイノベーションを「破壊的イノベーション」と先のクリステンセン氏は定義しています。そこではこの破壊的イノベーションを既存事業の秩序を破壊し業界構造を劇的に変化させるイノベーションであると説明しており「ローエンド型」「新市場型」と2種類のモデルがあるとしています。


ローエンド型の破壊的イノベーション

先ず一つ目の「ローエンド型」破壊的イノベーションは、先の持続型イノベーションによってハイエンド化したプロダクトを生み出すこととは反対に位置するものです。

先ずハイエンド化したことで空白となったローエンドの市場に基本的な価値を提供する低価格のプロダクトを投入することによって圧倒的なシェアを獲得し、その間にハイエンド市場でも通用するほどに技術革新を重ね必要十分に成長させてからハイエンド市場にプロダクトを投入し古参のメーカーを更にハイエンドへと追い込み市場から駆逐するというものです。

薄型テレビのマーケット遷移

薄型テレビを例にすると、2000年の始めにシャープのアクオスによって火がついた大画面薄型テレビはその後パネルの更なる大型化や画像処理エンジンの高度化、ネットやメディア等の再生媒体の多様化、高解像度化などとPLCをサイクルさせてきました。

ところが北米では韓国製の薄型テレビが、日本製よりも低価格で売られ始めるようになると、日本の薄型テレビは、ローエンド製品を展開する韓国製品との機能的な差を広げるべく付加価値を拡大し更にハイエンド製品へとポジションを移すようになります。

その頃、北米の家電量販店にある液晶テレビ売り場には、日本製と韓国製(サムソンやLG)が置かれていました。(実際には中国製も置かれていたようです)

日本の液晶テレビは高機能なうえ、壊れない。しかし高い。

格安なサムソンやLGのテレビは、壊れるかもしれないけれど何度でも修理します。

という売り文句で日本製品のシェアを奪ったと聞きます。高付加価値で壊れないけれど高額な日本製と比較され、大きな画面でテレビを見たいという単純なニーズに対する適正価値を提供するサムソンやLGの韓国製品に負けてしまったようです。

日本のメーカーは、「良い製品であれば売れる」という成功体験を重ねてきたためにこの破壊的イノベーションに対する対策が十分とは言えませんでした。

結果は今の市場を見れば明らかですね。かつては選択肢にも入らなかった韓国製のテレビは既にハイエンド製品としての選択肢となり、更には、中国製のテレビがローエンド製品として日本の家電量販店に当たり前のように並んでいます。そのうえ、韓国メーカーを駆逐する勢いでシェアを伸ばしています。

新市場形成型の破壊的イノベーション

次の「新市場型」破壊的イノベーションは、真新しい価値観に沿って生み出されることが多く、今までに消費がなかった分野に市場を形成する特徴があります。

よく取り上げられているのがフイルムカメラを駆逐したデジタルカメラの例です。初期のデジカメは解像度が低く画質もフイルムカメラに遠く及ばない存在でしたが、フイルムカメラの「画質」という提供価値に対して、デジタルカメラは「手軽さ」を提供することで、新たなマーケットを獲得します。

十二分に成長していたフイルムカメラのマーケットは、デジタルカメラによる「新市場型」破壊的イノベーションが生み出したマーケットによって徐々に縮小を始めました。その後手軽さを礎にしながらも画質向上を行い持続型イノベーションを繰り返したデジタルカメラに終には駆逐されてしまいました。

その後デジタルカメラは、携帯電話に組み込まれることによって新たな「新市場型」の破壊的イノベーションの餌食となります。


イノベーションのジレンマ(イノベーターのジレンマ)

さて、この破壊的イノベーションの背景として、技術革新の停滞とローエンド市場の活性化という点にフォーカスしてみると今までの商品企画のセオリーが通用しなくなっていることに気がつきます。

日本企業が世界に誇る品質や高機能と小型化されているもののほとんどは、既に存在している市場で営まれる持続型イノベーションに即し高付加価値を提供するものとなっています。

昨今の破壊型イノベーションを見てみると、はじめは、ちょっと気の利いたローエンドまたは単機能の製品を展開し(ローエンド型と新市場型が同時に発生する)、新しいマーケットを形成する例が多く、スタートアップ企業などは、既に存在する技術を活用し意味的な変換を行う(価値の軸をずらす)ことで破壊型イノベーションを起こそうとしています。

この様な破壊型イノベーションは、モノの価値を見直すことが起爆剤となるため、イノベーションを生み出す仕組みとしてデザイン思考サービスデザインという方法論が生み出されました。

長くなってしましましたので、イノベーションとデザインの役割についてnoteは次回にしたいと思います。

読んで頂きありがとうございます。次を楽しみにして頂ければ幸いです。

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福本 徹 @idnet21.com

デザインプロデューサーをしています。 ブランディング・マーケティング・デザインをサポートする会社:株式会社アイディーネットの代表  www.idnet21.com

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