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認知症とパーキンソン病の関連についておしえて


パーキンソン病と認知症との関係について

今日も質問をいただきました。
認知症とパーキンソン病との関連は、おおいにあります。
まず、パーキンソン病を引き起こすαシヌクレインという物質は、脳幹にある中脳黒質にあるドーパミン神経細胞を侵すと、パーキンソン病になります。一方で、大脳皮質(大脳の表面)の神経細胞を侵すと、レビー小体型認知症を侵すことがわかっています。

パーキンソン病も、10年~15年の経過のうちに、認知機能の低下がみられることが多いです。特に、前頭葉の機能低下により、やらない方が良いことをやってしまう傾向(衝動制御障害)が出現することはよくあります。負けがこむのにパチンコにのめりこんだり、ワーカホリックになって仕事が止められない人もいます。レビー小体型認知症で特徴的に話されることの多い幻視なども多いです。

レビー小体型認知症の人も、転倒しやすくなり、体のぎこちなさも出現します。どちらかというと、パーキンソン病の人よりも、障害される部位の広がりが大きくなりやすく、生活の不具合が大きく出ます。

パーキンソン病とレビー小体型認知症の共通点はたくさんあります。
ひとつは自律神経症状です。便秘になったり、立ち上がったときにふらつくなどの症状も起こりえます。どちらかというと冬のほうが体調がよく、夏場は暑さで血圧が安定せず、ふらふらしていることも多いです。
パーキンソン病の方もレビー小体型認知症の方も血圧が高い方はいらっしゃいます。私は、トイレや風呂に入ると失神するような方もいるので、あまり厳密な管理はしないようにしています。夏場は降圧薬を減らすことも多いです。

レビー小体型認知症の治療

レビー小体型認知症は、ドネペジル(アリセプト)により幻視が減ったり、認知機能が改善することが知られています。また、ゾニサミド(トレリーフ)は、運動機能の改善に効果的です。

パーキンソン病と同じように体が動かなくなる疾患もある

パーキンソン病の体の動きの悪さのことをパーキンソン症候群(パーキンソニズム)といいます。パーキンソニズムは、パーキンソン病の特徴的な運動症状であり、これには筋肉の硬直、振戦、動作緩慢、歩行困難などが含まれます。パーキンソン病以外にも、パーキンソニズムの症状を示す疾患があります。

薬剤性パーキンソニズム

薬剤性パーキンソニズムは、特定の薬剤、特に精神病治療に用いられる抗精神病薬によって引き起こされることがあります。これは、薬剤によるドーパミン受容体の阻害により発生し、PDの症状に似た運動障害を引き起こします。認知症を伴うこともありますが、その発生は薬剤の種類や投与量、患者の個々の感受性に依存します。

脳血管障害

脳梗塞や脳出血が多く起こると、パーキンソン病と同じように体の動きが悪くなります。これを血管性パーキンソニズムといいます。血管性パーキンソニズムの一部は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの治療を行うことで進行が止まる場合もありますので、精査するとよいと思います。

正常圧水頭症

この病気は、認知症の原因の1%ぐらいあるといわれている意外と多い病気です。歩行障害、尿失禁、認知機能低下が起こります。脳を覆っている髄液の産生と排出の不均衡が起こって、脳内に水がたまり始め、脳を圧迫してしまうことで様々な症状を引き起こします。髄液を排出するシャントという器具を手術で埋め込むことで、かなり症状が改善できる場合があります。

パーキンソンプラスシンドローム

進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症は、パーキンソン病とは異なる非典型的パーキンソニズムの疾患です。これらの疾患は、パーキンソン病と共通する運動症状を示す一方で、それぞれ特有の臨床的特徴を持っています。

  • 進行性核上性麻痺は、主に眼球運動の障害と早期のバランス喪失によって特徴付けられます。この疾患は認知機能の低下も伴い、しばしば認知症へと進行します。

  • 大脳皮質基底核変性症は、運動障害、特に片側の筋肉の硬直や失調、および認知障害を特徴とします。CBDにおける認知症は、しばしば言語障害や実行機能の障害を伴います。

  • 多系統萎縮症は、自律神経の障害、特に起立性低血圧、排尿障害、性機能障害などを伴うことが特徴です。MSAにおいても認知機能の低下が見られることがありますが、PDや他の非典型パーキンソニズム疾患ほど顕著ではありません。

パーキンソニズムと認知症のある方をみたら

パーキンソニズムのある認知症の方を見かけたら、一度は脳神経内科を受診していただくとよいと思います。治療可能な病気を見つけることができるかもしれません。


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