煙草と酒2

随分と前回から時間がたったが、煙草と酒についての個人的タバコ編について書いていきたいと思う。

農民にとって、そして肉体労働者にとって、煙草は現在でも欠かすことができないものである。幕内秀夫氏によると、煙草は肉体の疲労を軽減する効果があるらしい。

現在はかなり世間から厳しい目を向けられている煙草ではあるが、日本でここまでたばこ規制が厳しくなったのは本当に最近のことである。

97年くらいまでは、欧米に比べてたばこ規制の緩い遅れたニッポンなどと言われていたものである。

ま、言われ続けているのは現在もであるが・・・・

私の小さいころには、まだ新幹線に喫煙席があったし、にちりんの赤い気動車にのっていると気動車の中から煙草の香りがしたものであるが、今はもうソニックしかないし、バスですらもう灰皿さえつけられていない。

海外では屋内禁煙は当然だが、屋外ではOKであるし、灰皿のついたごみ箱はそこら中にある。

まあ、我が国はごみ箱自体が少ないというのもあるが、煙草自体、自宅であったとしても吸えなくされそうな状況である。

屋外の喫煙所も、撤去されて久しい。まったく禁煙ファシズムである。

余談であった。

15世紀に新大陸からヨーロッパ人によって拡散されたタバコは、1600年代には日本に到達した。

当時の人間はほとんど農民であるから、当然農民が煙草を愛用した。酒と違って酩酊せず、作業の隙間隙間に体を助けてくれる嗜好品は、ありがたいものだったろう。

無論嗜好品は高価だったからそんなに吸えない云々の話はあろう、しかし日本でも茶などと並んでたびたび禁令が出ていたことと、酒よりも農民が作りやすいというところからも、ある程度、使用できていたのは確かであろう。そう、広い範囲でである。

タバコというのも、いろいろある。

水タバコ、紙タバコ、嗅ぎタバコ、葉巻、パイプ、煙管、など地域によってさまざまである。

ただ、酒と一つ違うのは、それが世界中で普遍的だったものではなく、むしろ異文明との交流の中で急速に広まったことであろう。

私も、ヘビースモーカーとして、一通り、いろいろ試したことがある。

最も好きなのがパイプ類、愛用はコーンパイプと煙管である。

しかし、もっぱら今私が吸うのは残念ながら紙巻かプルームテックである。

理由は簡単、日本人にとって、煙草を吸う時間すら、ゆとりのない・労働に追いやられる中でとれないからである。紙巻だって、燃焼時間の長いアメリカンスピリッツなどは吸ってられないという人が大半であろう。いわんやほかの手段など・・・・嗜好品が嗜好品としてしっかりと楽しむ事さえ、この強度の資本主義体制ではできないのである。

昔は、働きながら吸えてたから、そうでもなかったというつもりはない。むしろ、現代にそんなことはできないだろう、しかし、紙巻きたばこの革新性はこの、旧時代の仕事をしながら吸えるということである。

むろん、噛みタバコや嗅ぎタバコも仕事をしながら吸うことができるが・・・この二者には、火をつけて吸うという爽快感がないし、口の中に入れたり鼻に入れたりするのは、向き不向きがあることである。

私もスヌースなどの噛みタバコをやったことがあるが、胃が弱いために気持ち悪くなるばかりで、少しも楽しむことができなかった。

明治時代の東京大学農学科の横井教授の回想で、東北の鉄道沿線の農民は記者が通るたびに、煙管を吸って休憩をしていたそうな。まあ、列車の本数が少ないというのもあるだろうが、これが紙巻なら仕事をしながら吸えるのである。

農家すら、煙草休憩が、しかも明治において責められるということは、いかに日本で煙草を吸おうと思うと紙巻しかなく、紙巻き一尊となるのも無理からぬことだろう。

タバコといえば酒と血の通った兄弟であるが、その紐帯も近年無理やり着られそうである。いやむしろ切られつつある。

悲しいことだが、時代の流れであろうか・・・

しかし私も煙草が好きだがいったいいつまで吸えるだろうか、農作業の後の一服は百姓として至福であるし、またピートの強ーいウイスキーや中国の白酒などを飲むと、どうしてもタバコが欲しい。

それもそのはず、煙草と酒は、実に発酵という同じ過程を経た兄弟であるからだ、それゆえ、上で私は血の通った兄弟と表記したのである。

発酵物は発酵物と相性が良い、ワインはチーズと日本酒は漬物と相性が良い、サラミとウイスキーも発酵物同士である。

ならばこそ、また酒と煙草・タバコと酒の相性が悪いわけがあるまい。むしろそれが悪くないことを、日々確認しているのだから。

願わくばこの二つの農民の愛した、そして今も愛しているものが、いつまでも楽しみ続けられますよう。

また酒と煙草の愛好者が、対象に節度をもって付き合いますよう。



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