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危機的状況だから直感を信じた

決断することが多いがん治療

これまで、私は、様々な病気に罹り、クリニックや病院で診察を受けた経験があります。それらの治療は、大抵の場合、医師が決めた治療方針に従うことがほとんどでした。それに対し、なんの疑問もなく、ごく当たり前の流れでした。そして、万事上手くいっていました。

けれど、乳がんは違いました。短期間の間に決断すべき事項が沢山あるのです。そのどれもが、私のこれからの人生に大きく影響するだろうと予測されるものばかりです。

まずは、乳がんの治療を受けるか否か。次に、治療を受ける場合、手術を受けるのか受けないのか。受ける場合、部分的に患部をとるのか、それとも乳房を全部とるのか。変形や失った乳房を元に形に戻すのか、そのままの状態にしておくのかどうか。

放射線治療を受けるのか。ホルモン剤の飲み薬を飲み続けるのかどうか。治療は、現在検査を受けている病院で行ってもらうのかどうか。入院・手術・諸々の治療をどのタイミングで受けるのか。セカンドオピニオンを受けるか否か。

その他諸々の選択が大波のように一気に押し寄せてくるのです。そして、私にとってもっとも重要な決断は、乳がんという病とどう向き合っていくのかということでした。

自分らしさ”って何?

がんに関する情報を発信している公的機関や専門機関の本やwebの情報を収集し、色々と情報を集めました。集めた情報の中に、答えがあるのではないかと思ったからです。そこから浮き上がってきたキーワードは『自分らしさ』。

つまり、自分の価値観を基準に意思を決定すればよいと記載されているのです。それは、どう自分が生きたいかということだそうです。

自分らしさ?
自分の価値観?
どう生きたいか?

そんな事を日常で私は深く考えたことはありません。突然そんなことを問われてもわかりません。

しかも、がん告知という患者にとって一生に一度あるかないかの、衝撃的な事実が判明し、精神的にも平常ではない状況で考えるのはほぼ無理です。むしろ考えれば考えるほど、自分の価値のなさが露呈されメンタルがどん底に。

情報を調べて思ったことは、”言うは易く行うは難し”。

命や自分の人生を大きく左右するであろう決断をする道しるべとして、がんを専門としている本もwebの情報も私には大きな手助けとはなりませんでした。

逃げだしたい気持ちをこらえて

大きな課題に胸が押しつぶされそうになりながらも、自分で決断しなければなりません。そこで、私は以下の思考で意思決定をしていこうと決めました。

私の頭の中

①立場を変える

押し寄せる決断事項を一気に解決することは、私には複雑すぎました。乳がん患者という立場で物事を考えると、色んな感情が邪魔をして堂々巡りになってしまうのです。

そこで、私は考えました。自分が医師だとしたらどうするのか。

私がもし乳腺専門の外科医だとしたら、乳がんという病をどうしたいのか。視点を180度変えて考えてみることにしました。

私が乳腺専門の外科医なら、切って根治ができるのであれば切る。その一択。1%でも根治が目指せるのなら、患部を切り取って患者の命を守る。再発や転移の不安要素も拭いたい。

であるなら乳房全摘手術が、乳がんの治療の基本であり最善の方法なんだと私なりに答えを出したのです。

では、なぜ、担当医は、部分切除に加えて放射線の治療方針を提案したのか。

それは、きっと沢山の症例を手がけてきた担当医だから知っている患者への思いやりのはず。乳房を失って悲しむ女性を沢山目にしてきたからでしょう。しかし、部分切除に放射線治療を加えても、局所再発や転移というリスクは抹消されません。

その点を踏まえ、担当医は、乳房全摘に乳房再建という治療方針を提案してくれたのでしょう。私に同時再建というものを提案してくれたのは、私自身も気づいていない価値感に近いと医師の経験上、察知したからかもしれません。

部分切除に放射線の治療も、乳房全摘に再建を施す治療も、女性の気持ちに寄り添うとする医師たちの優しさが加味されているのではないかと理解しました。

担当医は、乳房の再建技術は昔とは違って今はとても向上しているとも言っていました。だとしたら、私は、向上した技術で可能な限り理想の乳房を作ってもらいたいと望みました。

私が導き出した結論は、乳房全摘で乳房再建です。

②流れに乗る

乳房全全摘で再建をしてもらうと決断して、次に頭をよぎるのはその治療を誰にしてもらうかです。

乳房全摘の手術は、迷うことなく今の主治医と決めていました。その理由については、また、後日お話しましょう。再建については、主治医が信頼している形成外科の先生に一存することにしました。

理由は、ただひとつ。流れに乗っただけです。

私は、近所のクリニックで婦人科系の病気が怪しくて、紹介状で総合病院の門をたたきました。総合病院の婦人科での治療、定期健診の際、乳房に異常を自覚。その婦人科の先生に院内紹介状を書いていただいて、乳腺専門の外科の先生に辿り着いたという経緯があります。

幸運なことに、現在の総合病院では乳房の同時再建を行ってくれるのです。運命の流れと理解し、私は幸運な巡り合わせに身を委ねることにしたのです。

③直感は正しい

立場を変えて考え、さらに、その時の流れに乗ってみても、あと一歩のところで自分の決断が正しいのか不安は残ります。ですから、私は、最後の手段として直感に頼る事にしました。

日常の中では、直感は、ただの偶然に影響されているのかもしれません。しかし、驚くほど自分の集中力が高まる危機的状況では、直感は偶然に左右されるものではないと思ったからです。

直感は、過去の経験や自分がこれまで蓄積してきた知識などから瞬時にその状況に相応しいものを選び、導き出された答えだと考えているからです。

直感は自分自身。つまり、最後に信じるべき者は自分しかいないのです。

もしかしたら、その直感は正しくないかもしれない。だったら、その選んだ道が正しいと思えるように思考・行動すればよいだけのはなし。


このようにして、私は、乳がんに関する様々な決断を短期間のうちにしていきました。この思考プロセスは、きっと今後も役立つだろうと信じて

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