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【 読書レビュー 】水車小屋のネネ

水車小屋のネネ/津村記久子著 毎日新聞出版

「家を出ようと思うんだけど、一緒に来る?」
身勝手な親から逃れ、姉妹で生きることに決めた理佐と律。
ネネのいる水車小屋で番人として働き始める青年・聡。
水車小屋に現れた中学生・研司・・・人々が織りなす希望と再生の物語

本書帯より

物語の始まりは、1981年。18歳の理佐と8歳の律が、実の親から理不尽な目にあい、2人だけで生きようと家を出る。
理佐が2人だけで暮らすために見つけた求人は、蕎麦屋で「鳥の世話じゃっかん」と書いてあった。
その鳥とは、ネネという名のヨウムで、鳥なのに50歳くらいまで生きられる寿命を持っていて人間の言葉を覚えるのが得意なのだ。

「空っぽ!」と、水車小屋で叫ぶネネの合図で、石臼に蕎麦の実を補給するのが、蕎麦屋のホールの仕事に加えて理佐の重要な仕事になる。
理佐と律は新しい環境で、たくさんの人達と関わり、一人また一人と、優しく温かなつながりができるたびに、ほっとして嬉しくなる。

賢くて人間の気持ちを推し量ることもでき、ファンタジーのような存在のネネがユーモラスに愛おしく描かれていて、虐待とかいじめとか…ともすると暗い影を落としそうな展開をするりと明るくしてくれるので、とても読みやすかった。久しぶりに一気読みしました。

1981年の第1話から始まって、10年後とに4話とエピローグを合わせて40年間の長い長い物語。
けれども、違和感をちっとも感じないのは、計算したら理佐と律のほぼ中間が私の年齢だからだ!
時代の空気が想像できて、それも面白かった。


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