ファビーニョ_リバプール公式

前半を守備でモノにしたスパーズ。No.3に逆転の糸口を見出したレッズ。~リバプール対トッテナム レビュー~[19-20 Premier League-10]

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タイトル画像:リバプール公式HPより引用

前節のユナイテッド戦で連勝記録は途切れたものの、無敗記録は維持している首位リバプールが、昨シーズンはCLのファイナルまで進出する躍進を遂げながらも、シーズン開幕から苦しんでいる10位トッテナム。首位チームが最高のサポーターの待つ無敵の戦地・アンフィールドに10位チームを迎えて行われた19-20プレミアリーグ第10節のリバプール対トッテナム。今回はこの試合から「リバプール攻撃・トッテナム守備」の局面にフォーカスして書いていきます。トッテナムのポチェッティーノ監督が準備していたアンフィールドでリバプールに立ち向かうためのリバプール対策の分析、その機能性とリバプールの攻撃方法。そして、キックオフ直後に失点を喫しながらもなぜリバプールは逆転勝ち出来たのか。そのキーポイントになっていた戦術変更とは?をテーマにして。

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序章 スコア&スターティングメンバー

リバプール 2:1 トッテナム
リバプール 52'ヘンダーソン 75'サラー
トッテナム 1'ケイン

リバプール対トッテナム 1

ホームのリバプールはGKアリソン、Aアーノルド、ロブレン、ファンダイク、ロバートソンの4バック、ファビーニョを底にヘンダーソン、ワイナルドゥムの3MF、中央にフィルミーノ、右にサラー、左にマネの3トップで4-3-3。この試合はマティプ(怪我?)が欠場しており、ロブレンがファンダイクとCBのコンビを組むことになりました。

アウェーのトッテナムは、ガッサニガ、ローズ、Dサンチェス、トビー・アルデルヴァイレルド、オーリエ、ウィンクス、シソコ、アリ、ソン、エリクセン、ケインの11人で4-3-3。

第1章 前半の攻防 ポチェッティーノの絶妙な守備戦術

最初に前半の45分に行われた攻防から見ていきます。

リバプール対トッテナム 2

リバプールは、SBのロバートソンとAアーノルドが高い位置を取り、WGがライン間IA(インサイドエリア。SB-CB間の延長線上のスペース)にポジショニング。そしてCBのファンダイク、ロブレンとファビーニョ、ヘンダーソン、ワイナルドゥムの3MFが後方に残る2-3-5システム。一方のトッテナムは、4-5-1ブロックを自陣にセットし、プレッシングを行わず引いて構える守備。しかし、第三PL(最終ライン)は初期配置でエリア手前くらいまで下げるわけではなく、ある程度コンパクトネスを維持。

ではトッテナムのポチェッティーノ監督は、どのようなリバプール対策を構築していたのでしょうか?

リバプール対トッテナム 3

ポイントを上図に纏めましたが、最前線から順にいくと、CFケインは低めのポジションを取って相手ACのファビーニョをマークします。ですので2CBロブレン、ファンダイクはフリーにしており、自由にボールを持たせる形。3MFアリ、ウィンクス、シソコは徹底してライン間への縦パスのコースを封鎖するタスクを与えられており、WGのエリクセン、ソンは相手SB(Aアーノルド、ロバートソン)に常に追跡して対応します。SBに受け渡したりすることは全くと言っていいほど無く、徹底して相手SBについて行くことが求められていました。これをやると、WGが深い位置まで下がることになるわけですが、左にはカウンター時の武器となるソンがいたので、この守備をし続けるといずれカウンターに行くエネルギーを失うだろうなと思っていました。そして案の定(リバプールが上手く2ndを拾っていたことも考慮するべきですが)先制シーンのようにカウンターアタックを仕掛けるシーンは後半なくなっていました。

これがトッテナムの基本的な守備戦術だったのですが、この対策をトッテナムがとったことで、試合の中ではどのような現象が起きていたのでしょう。

リバプール対トッテナム 4

上図のように、ケインがリバプールのCBをフリーにしていたのでファンダイク、ロブレンがロングフィードを好きなように蹴れる状態になりました。それによってこの二人の裏に飛び出すFWへのフィード、対角線の高い位置を取るSBへのフィードが連発される展開に。

リバプール対トッテナム 5

例えばこの20:16のシーンは代表的です。マネがダイアゴナル(左→中)に飛び出し、そこにフリーのロブレンがロングフィードを配給。そして2ndを拾える位置にサラーとフィルミーノが入ってきて、サラーがマネの競り落としたボールを拾って左足シュート。ロングボール一本でフィニッシュまで到達したシーンです。

このシーンは、「行けるなら中央から崩す」「3トップの1人が受けたら残りの2人はスタートを切ってサポートに入る」というリバプールの攻撃における大原則が読み取れるだけでなく、この試合の前半を象徴するシーンでした。

しかし、このシーンを取り上げた理由はこれだけではありません。なぜならトッテナムの問題点も分かるシーンだからです。

リバプール対トッテナム 6

リバプールのCBがフリーなのでトッテナムからすればフィードを蹴りまくられる展開になっている中で、第三PL裏へのフィードに対する対応において「ラインを下げるのが早い&下げ過ぎ」という問題があったように感じました。

裏に飛び出されてしまうとすぐにガガッと下げてしまうので、ライン間が間延びして相手に2ndを拾うための大きなスペースを与えてしまっていました。まさにこのシーンでもライン間が間延びして、そのスペースに入ったサラーにフリーで2ndを拾われてます。

また、裏に飛び出されたほとんどの場合にラインを下げていたので、初期配置で第三PLの位置によってブロックのコンパクトネスを生み出しているのなら、全部に対してラインを下げるわけではなく、ラインの高さを保って飛び出す選手をオフサイドに仕留めることも必要だと思います。全部に対してラインを早く、大きく下げるのなら、初期配置でもっとブロックの重心を下げて最初から裏のスペースを完全に消す方法を選択しても良かったかなと。

リバプールはこの超シンプルな形からチャンスを創出。次に、先述の「SBへのフィード」からの攻撃についても。

リバプール対トッテナム 7

CBからSBにフィードが通ると、SBは高い位置を取っていて、リバプールのSBをマンツーマンでマークしているトッテナムのSHの背後でボールが入ったことになるので、一発で幅を取ることができます。そして左サイドでよく見られたのはマネがIAランをして、ロバートソンがスルーパス。これによってIA裏に侵入し、クロスを折り返す、という攻撃です。これもシンプルでスピーディーな形で、リバプールが多用する攻撃の一つです。

リバプール対トッテナム 8

しかし、トッテナムもやられまくられていたわけでは全くありません。IA裏に侵入され、クロスを折り返されても4バック+3MFに加えてSHも戻ってくる7-8人でエリア内を守っているのでリバプールのクロスに飛び込む人数には数的優位で、複数人余らすことが出来ていたため、しっかりニアサイドでクロスを跳ね返し、フィニッシュまで到達させないようにしていました。

リバプール対トッテナム 9

また、上図のように3MFによって徹底的にライン間へのパスコースを消すことが出来ており、相手の攻撃の核を担うフィルミーノにはほとんどライン間で縦パスを受けさせず、リバプールに攻撃のスイッチを入れさせませんでした。このポチェッティーノ監督の狙いは奏功し、リバプールの攻撃手段の一つを封じ込むことに成功。

というように、裏へのボールの処理は問題が見られたものの、フィルミーノへの縦パスからの中央突破を封じることが出来たので、リバプールの狙い所を外側に誘導。サイドには高い位置へのフィードを配給されるけどゾーン1の局面では優位性を得ているので、ポチェッティーノ監督はある程度外からやられても大丈夫(跳ね返せる)という計算があったのかなと思います。

そしてキックオフ直後に...

リバプール対トッテナム 10

NT(ネガティブトランジション)で4バック、シソコがリトリートすることでヘンダーソンのドリブルスピードを低下させ、ヘンダーソンが遅くなったところをウィンクスがプレスバックで狙い撃ち。これでボールを奪い返し、

リバプール対トッテナム 11

2ndボールを拾ったシソコが持ち前のゴリゴリドリブルでファビーニョとワイナルドゥムの間を貫通し、ゲーゲンプレスを突破。そして左のソンに展開し、ソンがカットインシュートを炸裂させます。これがディフレクトしてポストに直撃し、こぼれをケインがゲット。

この試合最初のカウンターアタックで点を取ることが出来たのでリードも獲得。ポチェッティーノ監督にとっては理想的な前半だったと思います。

ここから分かることは、リバプールはとても長い時間ボールを保持し、何度も何度もファンダイク、ロブレンから正確なロングフィードが配給されていたのでリバプールが攻めまくり、トッテナムの対策は失敗していたように見えますが、実はその真逆だったということ。つまりフィルミーノを消せていたので、外にフィードを蹴られるのは想定済み(元からCBはフリーにしている)で、ラストシーンのエリア内での局面は自分たちが優位だから外から攻められてもOKだったということです。一見リバプールが常に支配し、主導権を握っていたように見える前半ですが、実際にはトッテナムが主導権を握り、リバプールの攻撃をコントロールしていたのです。僕は、ポチェッティーノ監督は素晴らしい準備をしていたと感じました。

第2章 HTに見つけた逆転の糸口 鍵を握ったNo.3

第1章では、トッテナムを率いるポチェッティーノ監督のリバプール対策がどのように結果としてピッチ上に表れていたのか、どちらが主導権を握っていたのかについて書きました。

しかし、結果は2-1でリバプールの勝利。後半に逆転するわけですが、その逆転には戦術的修正が隠れていました。この章では前半主導権を握られていたリバプールがどのような戦術によって主導権を奪い返し、逆転に繋げたのかについて分析します。

まずトッテナムは前章で言及したようにプレッシングをかけて行って高い位置から能動的に奪いに行く守備ではなく、自陣にブロックを組んで引き込む守備でした。その引き込む守備を相手がしてきたときにどこが空くのか、というところで、

リバプール対トッテナム 12

後半からリバプールはサイドから攻撃して押し込むことで空く「手前」を使うようになりました。「手前」とは、トッテナムの3MFの前のスペースです。トッテナムはサイドからの前身は許容しているためサイドの高い位置にボールを送り込むことは容易で、前半はそこで行き詰まっていたのですが、上手く糸口を見出しました。

サイドからその3MF前のスペースに立つACファビーニョ(ここまで相手CFケインは降りてこない)に渡し、後半はファビーニョから配給が行われるようになりました。ファビーニョも正確な長いレンジのパスを蹴れるので、ファンダイク、ロブレンに負けない「レジスタ」としての機能性を発揮しました。

この戦術的修正がモロに反映されたのが52分の同点ゴールです。

リバプール対トッテナム 13

サラーがサイドの高い位置で受け、そこにソン、ローズが寄せてきます。サラーのマークはローズなのでローズが外に出てきて(図はその少し後の配置を再現しています)、その背後にヘンダーソンが入り込みます。そこに左IHアリが付いてこなかったので、ヘンダーソンはフリーに。そこにサラーから3MF前で受けたファビーニョがフィードを蹴り、フリーのヘンダーソンへ繋がります。そしてローズが寄せ切る前にクロスを上げる。

リバプール対トッテナム 14

そのクロスの2ndボールが中央に発生し、それを再び3MF前のファビーニョが拾いロバートソンとリターンパス。そしてこれも再び大外でフリーになっているヘンダーソンにフィードを送り込み、エリア内で受けたヘンダーソンが左足ボレーを決めて1-1。フィニッシュまで到達したシーンでは、フィルミーノをローズがマークしなくてはならなかったので、ヘンダーソンがフリーになりました。

この同点ゴールに象徴されるように、リバプールはサイドから相手を押し下げることで空く手前のスペースを使って攻撃。また、SBのAアーノルドが高い位置を取るのではなく、IHヘンダーソンが高い位置に進出して、右サイドはサラーとヘンダーソンで攻撃するようになりました。前半の45分でAアーノルドには左WGソンがずっと付いてくることは分かったので、それを続けても状況が変わらないから、クロップ監督は三角形の位置関係を変更したのです。これも的中し、ヘンダーソンに対して左IHアリは付いてこなかったのでフリーが生まれました。

「手前を使ってファビーニョから配給」「ヘンダーソンが高い位置に進出」という二つの戦術的修正をクロップ監督がHTに施したことで後半はリバプールが主導権を握ることに成功。トッテナムの守備戦術の弱点を見つけ出し、そこを有効活用できたため同点に追いつき、75分にAアーノルドの大きなクリア(狙っているはず)が左奥に入り、マネが飛び出してエリア内に侵入。オーリエに一度は奪われたものの、一瞬の切り替えで奪い返し、オーリエに倒されてPK獲得。サラーが決めて逆転。

トッテナムがフィルミーノを消してサイドに蹴らせ、罠にはめ込んで見事に支配してリバプールの攻撃を抑えた前半。その前半を踏まえリバプールは修正を施して後半を迎え、トッテナムの守備の弱点を突いて同点、そして逆転に成功して勝点3を獲得。戦術的駆け引きの詰まったとても面白い攻防でした。

ポチェッティーノ監督のリバプール対策は、はっきり言って「結構守備的」でした。アウェーということもあって勝点1でもOKだったのかなと想像しますが、前半はリードしていたので順位を考えても勝点0はとても痛い結果となったのではないでしょうか。

終章 総括

リバプール
・2-3-5システムで攻撃
・CBがフリーなので、DFライン裏やサイドの高い位置にファンダイクやロブレンがフィードを蹴り放題。
・裏へのフィードの2ndを拾う攻撃は効果的だった。
・サイドから前進し、深い位置に侵入するところまでは出来ていたが、クロスは相手に跳ね返される場合が多かった。
・一見試合を支配していたように見えるが、実際はトッテナムのリバプール対策に攻撃を抑えられ、主導権を握られていた。
・しかし後半、「手前を使ってファビーニョから配給」「Aアーノルドを上げず、ヘンダーソンが高い位置に進出」という二つの戦術的修正をクロップ監督が施す。
・↑の戦術的修正によって同点に追いつき、得意の裏抜け一発でPK獲得→サラーで逆転に成功。
トッテナム
・4-5-1で自陣にブロックをセットし、引き込む守備。
・CFケインは相手ACファビーニョにつき、CBには持たせる
・3MFウィンクス、シソコ、アリが徹底してライン間へのパスコースを消す。
・相手CBから配給される裏へのフィードに対して「ラインを下げるのが早い&下げすぎ」ているように見えた。
・↑によって蹴られた時にライン間が間延びし、2ndを相手に拾われやすくなった。
・3MFによってライン間のフィルミーノに縦パスを入れられることは全くと言っていいほど無く、起点を作らせなかった。
・↑の守備が出来たことで中央突破するためのルートを封鎖し、外にフィードを蹴らせる。
・外から崩されても、エリア内はこちらが複数の数的優位を得ており、きっちり跳ね返せていた。
・ポチェッティーノ監督は外からやられても大丈夫、という計算があったのだろう。
・前半はリードも奪えて理想的な展開。
・しかし後半、相手の戦術変更によって守備の弱点を突かれ、同点に追いつかれる。そしてロングカウンターからPKを献上し、逆転される。

最後にもう一度書かせていただきます。もしこの記事を気に入っていただけたら、SNSなどでの拡散をぜひよろしくお願い致します。皆さんで日本サッカー界をもっと盛り上げ、レベルアップさせましょう!リクエストがあればツイッター(@soccer39tactics)のリプライ、下のコメントにでもお書きください。

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