「シスター・キャリー」を読んで(2)。才能だけでは成功しない。120年前の女優から学ぶ夢の叶え方。
前回は、あまりの衝撃にハーストウッドに注目しすぎてしまった。
しかし、「シスター・キャリー」の主役は、キャリーである。作者はキャリーに大事なことを託したはずだ。
そこでもう一度、キャリーについて「その性格と成功法の関係」の視点から、読み直したいと思う。
付け足しておきたいのは、この記事を書いている私は「何者にもなれなかった」方の人間である。成功者の努力や感情は、推し量れない。あくまでも、キャリーの場合と思って欲しい。
前半は、表現者キャリーの特徴。後半は、成功法が書いてあります。
キャリーの背景
可愛い田舎の娘が都会に出できて目覚める。
キャリーは、片田舎から出てきた娘である。当時、階級の差は貧富の差、そしてそれは教育の差でもあった。キャリーは、知性があまりない立場として描かれている。
大都会に出てきたキャリーは、そのキラキラに魅了される。ここには、富も、服飾も、逸楽もある。羨望の炎がキャリーの心の中でメラメラと燃え上がる。
なによりキャリーは、モテる。彼女に惚れた男性は、サポートすることを申し出てくる(下心で)。
キャリーの性格
感覚的でセンス重視。欲しいものは欲しい。
姉が考えるキャリーの性格は以下。ちなみに姉は堅実で質素に生活をしている。
お姉ちゃん、さすが見抜いている。キャリーの<のし上がり方>には、緩急がある。私利がなく引っ込み思案である故の「緩さ」で流されがちであるのだが、ここぞというタイミングで「急に」大胆になり上手いことステップアップするのだ。流されつつも、欲望はしぶとく消えることはない。
キャリーにはもう一つ、秀でた特徴がある。
この勘が、キャリーを恋の盲目にしなかったのである。初めは舞い上がっても、しばらくすると落ち着いて、相手の人柄や弱点を冷静に見定め、男が自分の窮地を語らなくてもキャリーは察しが付いている。キャリーの想像力や感受性は、男たちを上回っている。
キャリーの才能
世界は表現されたがっている。天才とは。
たまに登場するエイムズは、階級も高く、芸術に造詣の深い青年である。キャリーは、彼に密かに憧れているのだが、そのエイムズが、キャリーの才能について語り始める(半分、自分に酔っている)。キャリーは、ゾクゾクする。
要約すると、
あなたの顔の表情は、歌や絵画のように人の心を深く動かす。それこそ、人々が触れたいと思っているものなんですよ。
こんなにも褒められたキャリーは、ちょっとその気になる。本格的な演劇へ進もうかしら。
こうゆう所が、ザ・キャリー。事物以外の欲望ために頑張るなんてことはしないのだ。
キャリーは、なぜ成功できたのか?
私が、考えたのは四つ。
才能
適応力
見極め力
運・不運
1.才能
生来の美貌と演技力がキャリーの才能だろう。それらを下支えし、輝かせているのは、豊かな感受性と優しさ、そしてギャップである。
キャリーは、俳優の仕事を自力で獲得している。男には頼っていない。
2.適応力
この辺りから、性格が関わってくる。適応力は二つの要素に分けられる。
素直さ
忘却力
キャリーは素直である。自分の欲望に忠実で、隠し立てもしない。また、人の提案もけっこうすんなり受け入れる。こうあらねばが、ほとんどない。強く自己主張もしないが、必要以上に、無理もしない。
また、忘却力もあり、しばらくすると記憶や考えも薄っすらする。違和感を持っても、いつのまにか馴染んでいる。あの辛かった日々やハーストウッドのことさえ、段々忘れる。
この二つの要素のおかげで、色んな意味で足が引っ張られないのだ。
3.見極め力
冒頭でも触れたが、キャリーの勘はきれる。言語化はできないが、感覚で分かっている。今、様子を見るべき時か、動くべき時か、判断力にほぼ間違えはない。自分の才能とその限界にも、目が曇ることはない。
4.運・不運
才能があるだけでも、相当、運がいい。しかし、男運はけっこう悪い。ちょいちょい押しに弱く流される。良く言えば情に厚く、悪く言えば欲望に負ける。男を利用してなくもないが、騙されがちなところもある。
そんなキャリーだが、不運につぶされたりしない。楽しみを見つけて気分転換するか、いよいよとなると急にアクセルがかかってモードチェンジするのだ。自力でなんとかする根性はすごい。不運を転機に変える。
私達にも応用できること
潮の流れに乗ること|方向を間違えない
キャリーから学べるのは、自分の向かいたい方向に流れている潮に、思い切って身体を浮かべてみるということだ。目的とは違う水に浸っていても、そちらには流れてくれない。
成功の定義はまちまち|自分サイズで
才能は、個人差がある。だが、流れをつかんで乗ることが出来ていれば、いつかはきっと、目標に辿り着く。成功の度合いは、人それぞれ才能の大きさによるが、小さくても自分に合っていれば、けっこう感じがいいものだ。
緩く、時に急ぐ|健康第一
そして何よりのコツは、「緩急」である。ずっと頑張り続けても、怠けていても、流れに乗り続けることはできない。運・不運もあるので、力まずに様子を見て、心身の健康を大切に。場合によっては、別の流れに移る判断も大切かもしれない。
自分の欲しいものを信じる│しぶとく
自分の欲しいものは、他人から見れば無価値だったり、無謀で不道徳なものかもしれない。でも、自分の感覚や感情を信じてみよう。しぶとく粘り強く、前に進もう。
最後に|全てなはずはない
小説の中で、独りで揺り椅子に座って幸福を夢見るキャリーが描かれる場面がある。心は満たされることもなく、飽くこともない。
でも作者が、キャリーを否定している感じはしない。きっと、成功がすべてではないし幸福がすべてでもない、と言いたいのではないかと思っている。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
「シスター・キャリー」は、色んな角度(男女の心のすれ違いやお父さんの悲しみとか…)から楽しめます。1章ごとに、朝ドラ的に毎日15分ずつ読むのが、おススメの読書法です。
「シスター・キャリー」の海外本の装丁が可愛いので、貼っておきます。
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