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COLLOL『可視化歯科鹿しかし歌詞菓子貸し華氏 〜King Lear より』(2022)

※上演ご希望ございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。著作権はWilliam Shakespeare及び小田島雄志氏そして田口アヤコに、上演権はCOLLOLに帰属します。

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『可視化歯科鹿しかし歌詞菓子貸し華氏 〜King Lear より』がシュクメルリで有名な(?!)黒海東岸の国ジョージアの港町ポチ国際演劇祭に正式招聘が決まりました!
7月14日まで、渡航費のご支援賜りたく、クラウドファンディングをはじめております。詳細以下

500円からご支援いただけます!

https://motion-gallery.net/projects/COLLOL_Georgia_Poti

この期間限定で、前回の配信内容を公開しております。以下フォームよりお申し込みください。

COLLOL
『ジョージア/ポチクラファン記念
『可視化し』公演配信』チケット予約フォーム
https://www.quartet-online.net/ticket/kashikashigeorgiapoti

・ご覧いただける配信動画は、
『可視化歯科鹿しかし歌詞菓子貸し華氏 King Learより』
2022年10月1日21:00開演の回
APOCシアターにて撮影の配信動画と同じ内容です。

・チケット料金は「0円」と設定しております。
投げ銭制となりますので、お申し込み確認メール内記載の振込先へ、お気持ちをご支援いただけますと幸いです。

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【上演記録】

COLLOL
『可視化歯科鹿しかし歌詞菓子貸し華氏
〜King Lear より』

2022 年 9 月 28 日(水)〜 10 月 2 日(日)
@千歳船橋・APOC シアター
https://fb.me/e/5C3iLqNEr
http://www.COLLOL.jp/kashikashi/

cast:

西尾美鈴
コーディーリア
三女
ワカメ
お父さんにビールを持ってくるリョウコ

七味まゆ味(柿喰う客/七味の一味)
リーガン
次女
カツオ
お母さんにビールを持ってくるリョウコ

伊藤嘉奈子
ゴネリル
長女
サザエ
リョウコちゃんのお母さん

東京ディスティニーランド
リア王
リョウコちゃんのお父さん
落語家

田口アヤコ
ケント
波平
フネ
裏ディリア
王妃
道化
電話をかけるリョウコ
医師

大木裕之

撮影者

staff:
劇作・演出:田口アヤコ

音響・演出:江村 桂吾

研究・演出:角本 敦

制作:COLLOL

舞台監督・照明企画 長堀博士(楽園王)

当日運営 守山亜希(tea for two)・田口貴子

照明操作 八ツ田裕美

配信協力 Crozz(フェロウズ放送局)

音響協力 古川 直幸

協力 柿喰う客、七味の一味、スタークラスターエンターテインメント、
美 i-style、ダブルフォックス、楽園王、tea for two、大根田真人

宣伝美術デザイン:鈴木順子(PISTOLSTAR)

主催:COLLOL

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家父長制の中で、子であり、子を持つ演劇
ということばは、チラシにしか書いていません
さて、なんでしょう、家父長制?

・可視化 みえるようにすること

・歯科 はをなおす、おいしゃさん

・鹿 かわいいどうぶつ

・しかし はんたいのいみを、つなげることば

・歌詞 うたうためのことば

・菓子 あまくておいしいもの

・貸し だれかに、だいじなものをつかわせてあげること

・華氏 おんどのたんい

王さまには、3 人のむすめがいました
一番上の大きい姉ひめさま、
真ん中の小さい姉ひめさま、
末っ子の妹ひめさま、
3 人とも、きれいで、かわいらしく、心のやさしいむすめたちでした

それでは、
ごゆるりと、
あなたのための演劇を
おたのしみください。

COLLOL 主宰 田口アヤコ

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可視化歯科鹿しかし歌詞菓子貸し華氏
〜King Learより

【登場人物】

ゴネリル
リーガン
コーディーリア

長女
次女
三女

サザエ
カツオ
ワカメ

リア王
ケント

道化

王妃

裏ディリア

医師

波平
フネ

お父さんにビールを持ってくるリョウコ
お母さんにビールを持ってくるリョウコ
電話をかけるリョウコ

リョウコちゃんのお母さん
リョウコちゃんのお父さん

落語家

※ ゴネリル、長女、サザエ
リーガン、次女、カツオ
コーディーリア、三女、ワカメ
については、それぞれ同じ俳優が演じることが望ましい。

※ ケント、道化、王妃についても、同じ俳優が演じることが望ましい。

※その他配役については、発話者指定のないシーンを含め、自由。

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【オープニング】(6m
◉片棒(4m
◉長女と次女(1(1m
◉コーディーリアと長女と次女(1m

【シーン1】(17m
◉第一幕第一場(5m
◉道化(次のシーンのリアはこいつだ(0m
◉第一幕第一場 波平(2m
◉ リョウコ38歳と母、リョウコ38歳と父(2m
◉第一幕第一場 フネ(4m
◉コーディーリアと姉たちとの別れ(2m
◉わたしは、(2m

【シーン2】(14m
◉リョウコ43歳(2m
◉道化 (ストーリー説明、嵐(1m
◉第四幕 第七場(9m
・リア
・ゴネリル
・リーガン
・コーディーリア
◉わたしは、(2 (1m
◉長女と次女 (2(1m

【シーン3】(5m
◉リョウコ53歳、63歳、73歳、83歳、93歳、103歳(2m
◉フネの葬式(2m
◉「コーディーリア。」(1m

【シーン4】(16m
◉終幕(4m
・リア
◉リア王 第一幕第一場の断片(2m
◉ケントが振り返る(前に重なる
◉老女が振り返る(2m
◉老女たちのリア王の話
◉終幕(6m
・ゴネリルとリーガン
・コーディーリア
・王妃
◉長女と次女と三女(1m
◉天皇挨拶(1m

【エンディング】(1m
◉生き残ったのはリョウコちゃん(0m
◉カーテンコール、終演挨拶

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◉片棒

えー、
本日は皆様、
『可視化歯科鹿しかし歌詞菓子貸し華氏
〜King Learより』ってな、
まあおかしな名前の芝居を見に来ていただいたようですが、
リア王
これはイギリスのシェイクスピアさんていう偉い劇作家の方がお書きになった、王様の話で、なんでも年寄りになった王様が、3人の娘に国を分けようってんですったもんだしたあげく、まあ全員おっ死んで、最後は長女の婿が国を継ぎました、ってなんともまあ馬鹿馬鹿しいお話だそうですねえ、
本日わたしはねえ『片棒』
落語を聴いていただけるてことでこちらに参りました。まあ海の向こうでもニッポンでも、財産を継がせようってな場合にはなかなか大変でございます

江戸の時分に、赤螺屋吝兵衛さんという、筋金入りの吝嗇、つまりケチがおりまして、御年70のある日、
「お父っつぁん、なんかご用でございますか?」

「まあ、三人ともこっちへ来て。おれは無一文から爪に火を点すようにして、これだけの身代を拵えた。しかしあたしももう70、やがては、この世とおさらばだ」

「ようよう、待ってました」

「なんだ、なにを待ってたんだ。ばか野郎」

「へえ」

「ところで、そうなった後の、この身代、順にいけば長男の金太郎に譲る。ただしね、おまえがたの了見がいまひとつわからないから、いろいろ聞いて、そのうえで、判断さしてもらいましょう。そこでまず金太郎、長男のお前から訊きますよ。」

「へえ」

「では金太郎、おれが死んだら、その葬式はどういうぐあいに出すか。」

「へえへえ、お父っつぁん、あたしは、ひとつ模範的な葬式を出したいと思います。そりゃあもう、派手に、ごく盛大にやりたいと。
まず、お通夜は二晩。で、あくる日が仮葬儀、おって本葬儀。そしてお弔いはずっと行列になりまして、お寺に着く頃にはお昼です、あたくしは皆さんにお弁当をお出します」

「おい、ちいと待ちなさいよ、弔いですよ?お弁当がつくのかい?」

「ええ、そりゃあもぅ、お父っつぁんの弔いに行って、行ったは良いけれども腹が空いてしょうがなかったなんてぇことを言われた日には悔しくてしょうがありません。そのお弁当なんですが、やはり、お重にしたい。一番下がご飯物、二段目が煮染め、一番上はお菓子でございます。このお菓子もいま評判のものを選りすぐって入れまして、これをちりめんの風呂敷でしっかりくくって、座布団の間、間へとおいておきましてな。その上に封筒をおいて、上に車代と書きまして」

「おいおいおい、ちょっと待ちなさいよ、お弁当までは我慢して聞いていましたがね、なんだいその車代というのは。大層なかかりになりそうだが、どれくらい見積もっているんだ」

「そうですねぇ、親戚・知人・お得意様・お友達、ざっと見積もって2000人。」

「あっちへ行けっーーー!!!まったく、人の金だと思って。」
とまあ、とんだ浪費家の長男・金太郎に続いてたいへんな遊び人の次男・銀次郎、吝兵衛さんはほとほとあきれて三男・鉄三郎に聞くと、こうなるんでございます。

「これ鉄三郎、こっちへおいで、」

「はい、お父っつぁん。思いめぐらしてみますれば、だれしも人間、一遍は死ぬ。ただ、仏の教えでは、死とはあくまで元に帰ること。ですから葬式というものは、形式的に」

「そうだ、それでよい」

「お通夜はひと晩。あくる朝、すぐに葬式を出します。出棺は、午前十一時。」

「お昼にかかりゃァしないかい?」

「ですから、十一時と言っておいて、八時に出してしまうんです」

「そんなことをしたら、みんな無駄足をするだろう?」

「ええ、みんな間に合いません。誰か来れば、菓子なんぞを出さなければなりませんから、そんな出費は省く。そして来て頂いたからには香典を素早く回収。」

「なるほどえらいな、おまえは。」

「それから棺桶でございますが、ああいうものは大変にお金がかかる、第一新しい木を焼くのはまことにもったいない。で、わたくしは少々窮屈でございますが、物置にある漬物樽で間に合わせようと思います。」

「漬物樽?…いいとも、身代のため我慢するよ、なあ。」

「それで中への詰め物は、もらってきた新聞紙で…」

「へーえ、ワレモノの荷造りだね、ああ、いいとも、なにごとも家のためだ。それから?」

「蓋をして、荒縄を十文字にかけまして、天秤棒を通して、よいしょっと担ぐわけですが」

「なるほど安くあがる。それを人足に?」

「いえ、人足を頼みますと、お金を払わなければなりませんから、前の片方はわたしが棒を担ぐ。問題はもう片方ですお父っつぁん。」

「なあに心配するな、片棒はおれが担ぐ」

◉長女と次女 (1

1.

次女 お姉ちゃん

長女 どした?

次女 眠れない

長女 怖かった?

次女 うん

長女 だいじょうぶ

次女 うん

長女 (撫でる)

次女 お姉ちゃん

長女 うん

次女 おかあさん、
どこ行ったのかな

長女 うん

次女 帰って、くるかな

長女 うん

2.

次女 お姉ちゃん

長女 なあに

次女 お嫁にいくの、やだな

長女 あんたはお婿さんをもらうんでしょ

次女 だって、お姉ちゃんもいるのに

長女 うん

次女 ふたりも、お婿さん、いらなくない?

長女 そうかもね

次女 ねえお姉ちゃん
あかちゃん、いつ来るの?

長女 そのうち、かな、

次女 はやくあかちゃん見たいな

長女 あんたのほうが先に産まれるかもよ

次女 やだなあ

長女 やなの?

次女 だって、こわいもん

3.

次女 お姉ちゃん

長女 どした?

次女 さいきん、
お父さん、
こわくてやだね

長女 戦争が、あるからね、

次女 お父さんも戦争に行くの?

長女 わかんない!
どうかな。

次女 お姉ちゃんは、行かないの?

長女 お姉ちゃんは、おんなだからね、

次女 オーくんは?

長女 んー、オーくんは、行くかもね、若いしね、

次女 お姉ちゃん、
オーくん死んじゃったらどうするの?

長女 どうしようかな。お父さんが、またあたらしいお婿さんを連れてきてくれるのかな。

次女 えーやだ
さびしい!

長女 そうだね、

4.

次女 お姉ちゃん、
コーくんと、オーくんと、戦ったらどっちが強いとおもう?

長女 きょうだいなんだから、戦わないよ

次女 きょうだいじゃないじゃん

長女 あたしとあんたがきょうだいで、そのお婿さんなんだから、「きょうだい」って言うの

次女 ふぅん
もし、もし戦ったら、コーくんのほうが強いよね?

長女 しらないよ

次女 だって、こないだコーくんが、「オレはこの国で1番強い」って言ってたよ

長女 バカだねえ

次女 でもねえ、オーくんも、「ケンカなら負けない」って言ってた

長女 オーくんも、何言ってるのかね

次女 どっちも強い?

長女 どっちも強いから、お父さんが連れてきたんじゃない?

◉コーディーリアと長女と次女

コーディーリア お姉ちゃん。

次女 あっコーディーリアが来ちゃった

コーディーリア お姉ちゃん

長女 あーそーばーなーい!

コーディーリア お姉ちゃん

次女 あたしはあんたのお姉ちゃんじゃないもーん

コーディーリア お姉ちゃん

長女 あたしたちには、コーディーリアなんて名前の妹はいないの!

◉リア王 第一幕 第一場

第一幕
第一場 リア王の宮殿

ラッパの吹奏。

リア グロスター、フランス王とバーガンディ公の案内を頼むぞ。
そのあいだに、いままで秘めておったわしの計画を披露しよう。地図をもて。いいか、わしは
王国を三つにわけた。 わしの動かぬ決意は、
この老いの身からいっさいのわずらわしい務めを
振り払い、それを若い力にゆだね、身軽になって
余生を送ることだ。
どうだな、娘たち、わしは国家の統治権も、領土の所有権も、
政務のわずらわしさもかなぐり捨てたいのだが、
おまえたちのだれがわしをいちばん愛してくれるかな?
親を思う心のもっとも深いものに、わしは
もっともゆたかな情愛を示したいのだ。まず
ゴネリル、長女としておまえから言うがいい。

ゴネリル 私がお父様を愛する気持はことばでは尽くせません、
この目よりも、限りない自由よりも大切なかた、
あらゆる評価を越えたゆたかですばらしいかた、
真善美をそなえたいのちにもまさるかたとして、
子供が父親に捧げうる最大の愛を抱いております。
その愛はことばを貧しくさせ、唇を閉ざさせます、
これほどの愛と口に出して言える以上の愛です。

コーディーリア (傍白)コーディーリアはどうしよう? 愛して、黙っていよう。

リア この線からこの線にいたる地域はすべて、
鬱蒼たる森林も、ゆたかなる平原も、
魚の群がる河川も、裾のひろがる牧場も、
おまえのものにするぞ。おまえとオールバニの子孫に永久に伝え遺すがいい。
では次に二番目の娘、
コーンウォールの妻、かわいいリーガンはどうかな?

リーガン この私も
お姉様とまったく同じ心ですし、お姉様と
同じ値うちがあると思っています。さきほどの
お姉様のことばは私の愛の気持を伝えてくれました。
ただまだ十分言いつくしてはいないようです。
私にとって、どんなに気高い感覚が味わう喜びも
ただ一つをのぞいては敵なのです、私のしあわせは
お父様を愛することにしかないのですから。

コーディーリア (傍白)ああ、あわれなコーディーリア! いえ、
あわれじゃないわ、私のお父様への愛は
あわれな舌などおよばぬほど深いのだから。

リア おまえとおまえの子孫には、
わが王国のこの肥沃なる三分の一を与えるぞ。
その広さといい、ゆたかさといい、楽しさといい、
ゴネリルに遺したものにまさるとも劣らぬ。
さて、
いちばん小さいがわが喜びのいちばん小さくはない末娘、
おまえは姉たちより
もっとゆたかな三分の一を得るためにどう言うかな?

コーディーリア 言うことはなにも。

リア なにもない!

コーディーリア なにも。

リア なにもないところになにも出てきはせぬ、
言いなおすがいい。

コーディーリア
悲しいことに私は心の思いを
口には出せないのです。私はお父様を愛しております、
子の務めとして。それ以上でも以下でもありません。

リア なんだと、コーディーリア、
ことばを改めぬと
新たな財産を失うことになるぞ。

コーディーリア
お父様は
私を生み、育て、愛してくださいました。
私はそのご恩に報いるのが当然と心得、お父様を
うやまい、愛し、心から大切に思っております。
お姉様たちは夫がありながら、なぜ愛のすべてを
お父様に捧げると言われるのでしょう?

リア そのことば、本心から出たものか?

コーディーリア
はい、お父様。

リア その若い身で実のないことをよくも言えたな?

コーディーリア この若い身にも真実はございます。

リア 勝手にするがいい、その真実とやらをおまえの持参金にするのだな。いいか、
わしは父としての心づかいも、血のつながりも、
きっぱり捨てたぞ、これからは、永久に、
この身にも、この心にも、おまえはまったくの
赤の他人だ。

ケント おそれながら、陛下

リア 黙れ、ケント!
龍の怒りの前に立とうとするな。わしは
あれをいちばんかわいがり、あれのやさしい手に
余生をゆだねるつもりでおった。ええい、失せろ!
死ねば安らかな眠りをえようが、それを失おうと
あれをわが子とは思わぬ。
コーンウォール、オールバニ、
姉娘二人の領土に、妹の三分の一もつけ加えるぞ。
おまえたち両名に、わしのもつ至上の権力、
権威、その他王位にともなういっさいの栄誉を
譲り渡すことにする。
わしの手にとどめておくのは、
国王の名前と資格のみだ、
統治、収入、その他国政の実権はことごとく、
愛する息子たち、その手にゆだねるぞ。その証に、
この宝冠をわかち与えよう。

ケント
おそれながら、陛下、
つね日ごろわが国王としてあがめ、
祈りのなかにその名をとなえてまいりました私ーー

リア 弓はすでに引きしぼられた、矢面に立つな。

ケント 矢を放たれるがいい、この胸板を射抜かれてもかまいませぬ。
このいのちにかけて、
末の姫君の陛下を思うお心は姉君たちに劣りませぬ。

リア
黙れ、不忠者、よおく聞け!
王の命令だ、聞け!
このわしはいまだかつて誓いを破ったことはない、
(剣に手をかける)
おまえはそれを破らせようとした、のみならず、
傲慢不遜にもわしの宣告の実施を妨げようとした、
わしの性格からも地位からも忍びがたい行為だ。
いまこそわが権力を証するため思い知らせてやる。
おまえに五日の猶予を与えよう、そのあいだに
この世を生きていく苦しみにそなえるがいい。
だが六日目には、その憎むべき背を向けて
わが王国から立ち去るのだ。十日後にもなお
その追放の身をわが領内にとどめおけば、
見つけ次第、即刻死刑だ。さあ、行け、
ジュピターにかけて、この宣告はとり消さぬぞ。

ケント ご機嫌よろしゅう、陛下。そのご無法ぶり、
ここにはもはや自由はない、とどまることが追放だ。
(コーディーリアに)あなたのお身に神々のご加護がありますよう、
(リーガンとゴネリルに)さきほどのりっぱな宣言を行為に示されますよう、
ではご一同、ケントはこれでお別れいたします。(退場)

◉道化? (ストーリー説明

「次のシーンは、こいつがリアだ」

◉磯野家 第一幕 第一場(波平ver.

磯野家
第一幕
第一場 磯野家の茶の間

波平 かあさん、お客様の案内を頼むぞ。

フネ はいはい。

波平 じゃ、このあいだにな、わしがあたためていた計画をおまえたちに披露しよう。
まずな、この家を、3つに分ける
そして、サザエとな、カツオと、ワカメと、3人に残すものを、今のうちにしっかり決めておく、そうすれば、カツオもちゃーんと勉強するだろうし、将来、もめることもないじゃろ?
ほれ、サザエ、カツオ、ワカメ、じゃあ3人のうち、だれがいちばん父さんのことが好きかな?

サザエ そりゃもちろん、あたしがいっちばん父さんを尊敬してるわよ
なんたってねえ、親だもの、あたしが生まれて来たのもみーんな父さんのおかげよぉ
まあそうねぇ、最大の、愛? なんちゃってw

ワカメ (独り言)お姉ちゃんすごい
わたし、わたし、どうしよう?

波平 ほれ、この家の図面の、この線から、この線まで、ぜーんぶおまえのものにしよう
じゃあ、次はカツオだな、うちのイタズラ坊主はなんと言うかな?

カツオ ボクだって姉さんと同じだよ
姉さんがさっき言ってたことはさ、ボクの考えとまったくと言っていいほど同じだなー!
まあ、ちょっと足りないかなっておもったのはさ、じつはボクの生きるしあわせってのはさ、父さんが「いる」ってことなんだよ。

ワカメ (独り言)やだ!わたし、そんなお上手言えないわ

波平 カツオ!
おまえのことは見直したな!
この家の三分の一は、おまえと、おまえのこどもたちのものだぞ。
ほれ、ワカメ、おまえはいちばんのおちびさんだが、
サザエとカツオに負けんように、おまえはなにを言うかな?

ワカメ なにも。

波平 なにも?

ワカメ ええ、なにも!

波平 ワカメ、なにもないところからは、なーんにもでてこないんじゃぞ

ワカメ だって、
あたしが父さんのことをだーいすきだなんてことは、父さん、あたしが言わなくたってちゃーんとわかってるでしょ?

波平 そりゃそうだ!

サザエ 父さん、これはワカメに一本取られたわね!

◉母とリョウコ

2022年9月
日本のどこか

母(65)
リョウコ(38・3人姉妹の長女)

3姉妹の年齢は
(38)
(36)
(29)

リョウコ おかあさーん、
はい
ビール(渡す)

母 ありがと
え、リョウちゃんも飲むの?

リョウコ …
今日、病院行ってきたけどね

母 うん。そうか。
ま、飲もか!

リョウコ オーくんも、頑張ってくれてるんだけどね

母 ま、ほら、45くらいで産むひとも、今どきたくさんいるからね

リョウコ オーくんに名字まで変えてもらってさあ、なんか、なさけないわ

母 それも今どき、いいんじゃないの?
あちらさんは2人もお兄ちゃんいるんだし。

リョウコ 仕事、やめたくないなあー

(つづく)

◉父とリョウコ

2022年9月
日本のどこか

父(65)
リョウコ(38・3人姉妹の長女)

3姉妹の年齢は
(38)
(36)
(29)

リョウコ お父さーん、
はい
ビール(渡す)

父 お、サンキュー
え、リョウコも飲むの?大丈夫?

リョウコ …うん

父 や、
そろそろ妊娠してるかもだろ

リョウコ …今日、病院は行ってきました

父 それで?

リョウコ いま言ってないってことは、そういうことですよ

父 そうかー
まったダメかー
残念だな!

リョウコ …

父 うん、ま、今日は飲もか!

リョウコ オーくんも、頑張ってくれてるんだけどね

父 男は関係ないだろ
産まれてからはな、大変だぞ2人とも

リョウコ 想像つかない。
もうやめたい。

父 リョウコはオーくんに愛されてるだろ
名字までうちのに変えてもらって
なんか、考えると悪かったなあちらさんに

リョウコ オーくん、
転職するんだって

父 またあれか、IT系で。

リョウコ そう、ねー

父 今の時代は、資格あると強いもんだな

リョウコ あたしは、仕事、
やめたいなあー

(つづく)

◉磯野家 第一幕 第一場(フネver.

磯野家
第一幕
第一場 磯野家の茶の間

フネ マスオさん、じゃあね、ノリスケさんと、ちょっと行ってらっしゃい

タラオ パパいってらっしゃいですー!

マスオ すみませんお母さん

フネ じゃ、あたしたちはおやつとお茶にしましょうね
はい、おとうさんにも。(仏壇に供える)

サザエ あら!お父さんだけ豆大福!

フネ あんたたちはこのサクランボの乗ったプリンのほうが好きじゃないの

タラオ (チーンと鳴らす)
おじいちゃん、
いただきますですー

カツオ お!ボクのプリン、
今日ワカメのよりでかいよ!

ワカメ ずるーいおにいちゃん

サザエ アラ!ホント!今日、おじさん、分量間違えちゃったのかしら?!

フネ カツオはお兄ちゃんでしょ、
大きい方をワカメにあげなさい

カツオ ちぇっ
じゃあワカメにどーうぞ
ボクの方が「お兄さん」なんだから大きい方をもらってもいいとおもうけどな!

ワカメ お兄ちゃんありがとう

カツオ いっただきまーす!

フネ いただきます
やっぱり、ここのプリンがこの辺だと1番ねぇ

サザエ そうね〜
ところで、母さん、なにか話があるって、なんの話だったのよ?

フネ それがね、お父さんが亡くなって、いろいろ片付けたでしょう

タラオ もう3年ですー!

フネ うちもこうやってマスオさんもいてくれるけど、あたしもだんだん、心細くなってきてねぇ

サザエ なーに言ってるのよ母さん
女の人生、まだまだこれからよ!

フネ そうは言ってもね。
この家のいろいろのことを、3人に分けておくことをね、少しずつ考えておこうと思うのよ

カツオ エッ!
ボクと姉さんとワカメに?

タラオ 3人。
ボクの分はないですか?

フネ タラちゃんの分は、、そうねぇ〜「サザエに」ってことねぇ

タラオ ママにですか?
タラちゃん信用できないです!
タラちゃんも欲しいです!

カツオ タラちゃんの分もちゃーんとあるよ
ボクがちゃーんと計算して、大人になるまで預かっておいてあげようかな!

母さん?

フネ カツオは相変わらずチャッカリしてるわねぇ
まあ、あたしはね、ちゃんと3等分に、と思ってるんだけど、なんだかね、おまえたちのことが心配になってきちゃってね

サザエ 何言ってるのよ母さん
ね、あたしたちがずーっと母さんのことを支えて生きてくし、そんな3等分も何も無いわよ

フネ ありがとう
サザエ、ね、こんな感じに、まとめておいたのよ
(手書きの紙の束を引き出しから出す)
これをこう分けて、これはサザエのぶんね

タラオ タラちゃんのですー!

フネ タラちゃんのお嫁さんが来たら、あたしも結婚式にでられるかねぇ

カツオ お母さん、タラちゃんよりもボクのほうが先に結婚するよ!
母さんみたいな、最高の人をみつけるからね

サザエ 花沢さんはどうなのよ

カツオ ボクは母さんのほうが100万倍美人だと思うね!

サザエ アラ!カツオはお嫁さんを顔で選ぶの?

カツオ いまは母さんの話だよ
ま、ボクの結婚については、姉さんには言われたくないかな

サザエ ま!生意気言って!

フネ まあまあ、カツオ、
ほら、この書き付けのとこにちゃんと「カツオ」って書いてあるからね
ちゃんと勉強しないと、こういうのもちゃんと管理できないんだからね

カツオ じゃあボクはたくさん勉強して、競馬とかでジャンジャン増やそうかな!

サザエ またバカなこと。
やめなさいよ!

フネ さ、ワカメはどう?
あたしはね、あんたのことがいつまでも赤ちゃんみたいなつもりでいるんだけどね
何か、言っておきたいことはある?

タラオ タラちゃんは、ワカメお姉ちゃんの分も欲しいですー!

フネ こらタラちゃん!

ワカメ あたしは、言うことはなにも。

フネ なにもないのかい?

ワカメ ええ、なにも。
だって、だって言うことなんてなーんにもないわ!(泣く)
あたしが母さんのことをだーいすきだなんてことは、母さん、あたしが言わなくたってちゃーんとわかってるでしょ?

フネ それはそうだよ、
ワカメは、とっても、イイ子だね。

サザエ 母さん、じゃあこの場ではこの話聞いておくけど、ずーっと先の話よ!

カツオ 母さんがいなくなるなんて、ボク、考えられないよ

ワカメ あたし、母さんが死んじゃったら、一緒に死にたい!(泣く)

サザエ カツオもワカメも、大丈夫よ、泣かないの。
こんなの、ずーっとずーっと、ずーっと先の話よ。
あら、タラちゃん、寝ちゃってるわ!

タラオ (寝言)ぜーんぶボクのものですー。
でも、ママと、カツオおにいちゃんと、ワカメおねえちゃんに、これと、これと、これと、プリンのサクランボを、分けてあげるですー

フネ (タラちゃんを撫でてやりながら)
そうだね、
あんたたちのいうとおり、ずーっとずーっと先の話だね。
サザエ、早くタラちゃんのお布団敷きましょ。

◉コーディーリアと姉たちとの別れ (1

ラッパの吹奏。

リア その娘はあなたのものだ、フランス王、わしにはそのような娘はおらぬ、もう二度とわしの目にはふれることもあるまい。さっさと立ち去るがいい、
わしの恩恵、愛情、祝福を断ち切られたままに。
さあ、こちらへ、バーガンディ公。
(華やかなラッパの吹奏。フランス王、ゴネリル、リーガン、コーディーリアを残して一同退場)

コーディーリア お父様の宝であるお二人に、コーディーリアは
涙にくれてお別れします。お姉様たちのことは
よくわかっています、妹の身でその欠点をあげるのは
気がすすみません。 お父様を大切にしてください、
さきほどお誓いになったその胸にお父様をゆだねます。
それにしても、私がご不興を受けなかったなら、
もっと安心できるあずけ場所にこと欠かなかったのに。
ではご機嫌よろしゅう、お姉様たち。

リーガン おまえの指図は受けないよ。

ゴネリル
それより、幸運にもおまえを拾ってくれたご主人を
せいぜいだいじにするんだね。おまえには従順さがない、
おまえが失ったものは失って当然、なんの矛盾もない。

コーディーリア 時がくれば巧みにかくされた悪事も露顕します、
かくれた罪もいずれ恥辱にさらされる危険があります。
どうかお二人ともおだいじに。
(フランス王とコーディーリア退場)

ゴネリル ねえ、ちょっと話があるの、私たち二人にとってもだいじなことで。お父様は今夜にもここを出るつもりよ、きっと。

リーガン 間違いないわ、まずお姉様のところね、来月は私のところ。

ゴネリル おまえも気がついているだろう、お父様はお年のせいかたいへん気まぐれになられたってこと。よおく見ればひどいものよ。いままで妹がいちばんのお気に入りだったのに、どうお、見さかいもなしにおっぽり出してしまうなんて、正気の沙汰じゃないわ。

リーガン もうろくしたのよ。 もともとご自分のこととなるとさっぱりわからない人だったけれど。

ゴネリル いちばん元気でしっかりしていたときでさえ無分別だったのに、
これからさきどうなると思う? 長年の凝り固まった性癖のうえに、ぼけてかんしゃくを起こすお年でしょう、どんなわがままに手を焼かされるかわかったものじゃないわ。

リーガン 私たちも、ケントが追放されたように、いつ気まぐれな発作に襲われるか覚悟しなければ。

ゴネリル むこうでいまからフランス王と別れのあいさつをするところだわ。
ねえ、おたがいに手を握ろうじゃないの。お父様にあんな気持で権威をふりまわされたら、権力を譲ってもらったことが、かえって迷惑だわ。

リーガン あとでよく考えましょうよ。

ゴネリル すぐになんとかしなければ、鉄は熱いうちによ。

◉わたしは、

わたしは、

(わたしたちは、

あなたの、ジョウと、アイと、言葉を、
信じていた

「nothing」

は、

「なにか、」
「something 」

「何か、」
「何か、善いもの、」
「なにか」

「善きもの、」

「なにか、わたし、わたしたちの(希望」

には、変わらなかった、
成らなかった(希望

のである

わたしはそのとき
善を(希望、信じすぎていて、

「nothing」

は、

「something 」

に、

変容した、

変容するのかどうかその結果を、

見る、前に、

わたし、は、

◉43歳のリョウコと母

2022年9月
日本のどこか

母(70)
リョウコ(43・3人姉妹の長女)

3姉妹の年齢は
(43)
(41)
(34)

(リョウコが母に電話を掛ける)

リョウコ あっお母さん
地震、地震大丈夫?!

母 ぜんぜんぜんぜん、

リョウコ なんかモノとか落ちたり、ケガしなかった?

母 いや〜
ちょうどこないだ、片付けたとこだったのよ
そっちも揺れたんじゃないの?

リョウコ うん、ちょっと、
びっくりした

母 リョウちゃんとこは、何階だっけ、高いもんなあ

リョウコ あ、引っ越したのよ

母 あら
いつ

リョウコ あかちゃんできて

母 え!よかったねぇ

リョウコ で、ごめん言ってなくて
オーくんとは離婚してて

母 え!

リョウコ あの、へんなあれじゃなくて、
まあ、わたしが悪いってことにして、
それで。

母 それ、リョウちゃん、
お金は、大丈夫なの

リョウコ 慰謝料とかそういうのはないから。仕事続けててよかったわ

母 そう、

リョウコ 電話で話すのもあれだし
一回、どっかで帰る

(つづく)

◉43歳のリョウコと父

2022年9月
日本のどこか

父(70)
リョウコ(43・3人姉妹の長女)

3姉妹の年齢は
(43)
(41)
(34)

(リョウコが父に電話を掛ける)

リョウコ あっお父さん
地震、地震大丈夫?!

父 あーリョウコー
ありがとな、びっくりはしたけど、大丈夫

リョウコ なんかモノ落ちたり、お父さんケガしなかった?

父 あーまーとりあえず外に
しばらく大沢さんと外にいたよ

リョウコ そ
さっき繋がらなかったから

父 ああーなんも持たないで出たよーごめんなー
そっちもけっこう、揺れたんじゃないの?
リョウちゃんとこは、何階だっけ、高いとこだから、

リョウコ あ
引っ越した

父 あ、そう
いつ

リョウコ ごめんオーくんと別れて

父 えっ
なんで相談しないの
えっ
リョウちゃん、
一回
帰ってきたらどうよ

リョウコ あかちゃんできて

父 え!

リョウコ 電話で話すのもあれだし
どっかで、帰って話す

(つづく)

◉道化 (ストーリー説明、嵐(1m

えー、
この『リア王』って話はここまで見ていただいたとおり、じいさんのリアが、ゴネリル、リーガン、コーディーリアって三姉妹に王国を分けようとしますが、リアは、裏切られる。

姉娘たちは、リアじいさんのめんどうなんか見ないで、自分の屋敷から叩き出すんです。

嵐の中に。

この裏側には、グロスターって伯爵の、エドガーって息子と、エドマンドって息子の諍いもあるんですが、まあそこは、ちょいと流して参ります

わたしは、リア王のお側についておりました道化。1人の阿呆でございます。

大雨、大風、大嵐で、屋根もなく、弱って弱って弱りきったリアを、フランスから戻ってきた末娘・コーディーリアがみつけて介抱します。まあコーディーリアは、このブリテンて国と戦争しに来てますし、

おはなしの終わりには、
王さまと、むすめたちは、
みんなみんな死ぬんですがね。

卵を一つくれないかな、リアおじさん、そうしたら冠を二つやるから。

卵をまんなかから二つに割って、中味を食っちまえば、殻の冠が二つできらあ。

おまえさんは冠をまんなかから二つに割って、二つともやっちまったから、泥んこ道をロバかついで歩くような阿呆なめに会うんだよ。

せっかくの金の冠をやっちまうなんて、そのむき出しの頭にはたんまり知恵が詰まってなかったらしいや。

おまえさんは知恵を二つに割って両方とも捨てちまったから、まんなかにはなんにも残ってないんだ。

ほら、その片割れがきたよ。

ゴネリルか、リーガンか、

コーディーリアだよ。

◉ 第四幕 第七場 フランス軍の陣営
・リア

コーディーリア (医師に)王のご様子は?

医師 よくおやすみになっておられます。

コーディーリア ああ、慈悲深い神々、
しいたげられた父の大きな傷を癒してください、
子供ゆえに子供に帰った父の狂い乱れた心の弦を、
もとのように締めなおしてください。

医師 およろしければ
もうお起こししましょう、だいぶおやすみでしたから。

コーディーリア あなたにまかせます、いいと思うように
はからってください。
お召し替えはすみましたか?

医師 はい、ぐっすりおやすみになっているあいだに
新しい服をお着せしました。
お妃様、どうかおそばに、
ただいまお起こしいたしますから。きっともう
落ちつきをとりもどしておいでです。

コーディーリア では。

医師 さ、おそばに。
もう少し音楽を大きくしてくれ。

コーディーリア ああ、お父様! ご回復をうながす霊薬が
私の唇に宿り、この口づけで、お父様のお心に
二人の姉が加えた無惨な傷口が、もとどおり
なおりますように。
たとえ実の父親でなくても、この真白な髪を見れば
あわれみの情をそそられるはずなのに。このお顔を
荒れ狂う烈風に吹きさらしにしていいものか?
大地をゆるがし耳を突ん裂く雷に立ちむかわせて?
大空を矢よりも早く飛び交う稲妻がすさまじく
ひらめくなかを? 眠りもやらず、いのちがけの
歩哨のように、冑(かぶと)と言ってもこの白い髪だけで?
私に噛みついたことのある敵の飼い犬でも、あのような
恐ろしい夜には炉辺に入れてやるのに。 それなのに
お父様は、お気の毒にも、豚や浮浪者といっしょに、
掘っ建て小屋でかび臭い藁にくるまっておいでに? ああ、
なんてひどい! 正気とともにおいのちまで
失われなかったのが不思議だわ。あ、お目覚めのよう。
ことばをおかけして。

医師 お妃様からどうぞ、そのほうが。

コーディーリア いかがです、陛下、ご気分は?

リア ひどいではないか、わしを墓から連れ出すとは。
おまえは天国の霊魂だな、だがわしは地獄の
炎の車に縛りつけられておる、涙を流せば
溶けた鉛のように肌を焼くのだ。

コーディーリア 私がおわかりですか?

リア おまえは霊魂だ、わかっておる。いつ死んだ?

コーディーリア まだ、まだ、これではとても!

医師 はっきりお目覚めではないのです、しばらくそのままに。

リア わしはどこにいた? どこにおる? 日の光か?
たぶらかすのだな。 人がこんなめに会うのを見れば
気の毒でとても生きてはおれまい。どう言えばいいか。
わしにはわからぬ、これはわしの手か? どれ。
うむ、針の痛さは感じる。ああ、はっきり知りたい、
わしはどうなっておるのか!

コーディーリア 私をごらんください。
そのお手で私に祝福を与えてください。いけません、
膝をおつきになっては。

リア どうかなぶらないでくれ、
わしは愚かな、愚かな、老人にすぎぬ、
すでに八十の坂を越えた、掛け値なしにだ。
それに、実を言えば、
どうやら心も狂っておるらしい。と言うのは、
おまえも、この男も、知っておるように思うが
たしかではない。だいたいここがどこなのか、
それさえわからぬ。 いくら思い出そうとしても
この服にも覚えがない。ゆうべ泊まった場所も
わからないのだ。 笑ってくれるな、わしには、
どう考えてみても、このご婦人がわしの娘
コーディーリアとしか思えぬ。

コーディーリア そう、そうです、私は。

リア 頬をぬらしているのは涙か? そう、涙だ。頼む、
泣かんでくれ。毒を飲めと言うなら飲もう。わしを
恨んでおるはずだ。おまえの姉たちは、忘れはせぬ、
わしをひどいめに会わせおった、そうしていい理由は
おまえにはあるがやつらにはない。

コーディーリア ありません、私にも。

リア わしはフランスにおるのか?

コーディーリア ご自分の王国です。

リア たぶらかす気か?

医師 ご安心を、お妃様、狂乱の嵐もごらんのように
静まりました。だがまだ、失われた時をむりに
埋めつくそうとされるのは危険です。どうか
奥に入るようおすすめしてください、もう少し
落ちつかれるまで、そっとしておかれることです。

コーディーリア 奥へお入りになりませんか?

リア がまんしてくれよ、
すべてを忘れ、許してくれ。わしは愚かな老人なのだ。

◉ 第四幕 第七場 フランス軍の陣営
・ゴネリル

リーガン (医師に)お姉さまのご様子は?

医師 よくおやすみになっておられます。

リーガン ああ、慈悲深い神々、
しいたげられた姉の大きな傷を癒してください、
姉の狂い乱れた心の弦を、
もとのように締めなおしてください。

医師 およろしければ
もうお起こししましょう、だいぶおやすみでしたから。

リーガン あなたにまかせます、いいと思うように
はからってください。
お召し替えはすみましたか?

医師 はい、ぐっすりおやすみになっているあいだに
新しい服をお着せしました。
奥方様、どうかおそばに、
ただいまお起こしいたしますから。きっともう
落ちつきをとりもどしておいでです。

リーガン では。

医師 さ、おそばに。

リーガン ああ、お姉様! ご回復をうながす霊薬が
わたくしの唇に宿り、この口づけで、お姉様のお心の
無惨な傷口が、もとどおり
なおりますように。
この真白な髪。
あ、お目覚めのよう。
ことばをおかけして。

医師 奥方様からどうぞ、そのほうが。

リーガン いかがです、お姉さま、ご気分は?

ゴネリル ひどいわ、わたしを墓から連れ出すなんて。
おまえは天国の霊魂だな、でもわたしは地獄の
炎の車に縛りつけられている、涙を流せば
それは溶けた鉛のように肌を焼く。

リーガン わたしがおわかりですか?

ゴネリル おまえは霊魂だ、わかってる。いつ死んだの?

リーガン まだ、まだ、これではとても!

医師 はっきりお目覚めではないのです、しばらくそのままに。

ゴネリル わたしはどこにいた? どこにいる?
わからない、これはわたしの手?
ああ、針の痛さは感じる。はっきり知りたい、
わたしはどうなっているのか!

リーガン 私をごらんください。
そのお手で私に祝福を与えてください。

ゴネリル どうかなぶらないでおくれ、
わたしは愚かな、愚かな、老人にすぎないのよ、
すでに八十の坂を越えた、
それに、
どうやら心も狂っているらしい。
おまえも、この女も、知っているように思うが
たしかではない。だいたいここがどこなのか、
いくら思い出そうとしても
この服にも覚えがない。
わたしには、
どう考えてみても、このご婦人がわたしの妹
コーディーリアとしか思えない。

リーガン そう、そうです、私は。
いいえ、お姉さま、わたしはリーガンよ

ゴネリル 頬をぬらしているのは涙?
そう、泣いてるの。ねえ、
泣かないで。
わたしを恨んでいるはずね。

リーガン いいえ、いいえ。

ゴネリル わたしはフランスにいるの?

リーガン ご自分の、王国よ。

ゴネリル あなた、たぶらかす気?

医師 ご安心を、奥方様、狂乱の嵐もごらんのように
静まりました。だがまだ、失われた時をむりに
埋めつくそうとされるのは危険です。どうか
奥に入るようおすすめしてください、もう少し
落ちつかれるまで、そっとしておかれることです。

リーガン お姉さま、奥へ、お入りになりませんか?

ゴネリル がまんしてちょうだい、
すべてを忘れて、許してちょうだい。
わたしはばかなおばあちゃんなのよ。

◉ 第四幕 第七場 フランス軍の陣営
・リーガン

裏ディリア (医師に)お姉さまのご様子は?

医師 よくおやすみになっておられます。
およろしければもうお起こししましょう、

裏ディリア お姉さま!
私の唇におくすりが宿り、この口づけで、お姉様の心のきずが、もとどおりに
なおりますように。
なんてしろい髪。
あ、
ことばをおかけして。

医師 姫君からどうぞ。

裏ディリア お姉さま、ご気分は?

リーガン ひどいわ、わたしを墓から連れ出すなんて。
あんたは天国の霊魂ね、でもわたしは地獄の
炎の車に縛りつけられているの、
涙を流せば
それは溶けた鉛のようにわたしの肌を焼く。

裏ディリア わたしが、おわかりですか?

リーガン あんたは霊魂、わかってる。いつ死んだのよ?
わたしはどこにいた? どこにいる?
これはわたしの手?
ああ、針の痛さは感じる。
なんなのこれ
わたしはどうなっているのか!

裏ディリア わたしをみて、
そのお手でわたしに祝福を与えてください

リーガン どうかなぶらないでちょうだい、
わたしは愚かな、愚かな、老人よ、
それに、
どうやら心も。
あんたも、この男も、知っているように思うけど
たしかじゃない。だいたいここがどこなのか、
この服にも覚えがない。
わたしには、
あんたがわたしの妹
コーディーリアとしか思えない。

裏ディリア そう、そう、そうです

リーガン 頬をぬらしているのは涙?
そう、泣いてるの。ねえ、
泣かないで。
わたしを恨んでいるよね。

裏ディリア いいえ、いいえ。

リーガン わたしはフランスにいるの?

裏ディリア ご自分の、王国よ。

リーガン がまんしてちょうだい、
すべてを忘れて、許してちょうだい。
わたしは、わたしはばかなおばあちゃんなのよ。

◉ 第四幕 第七場 フランス軍の陣営
・コーディーリア

ゴネリル、リーガン、医師登場。

リーガン (医師に)妹は、どう?

医師 よくおやすみになっておられます。

ゴネリル ああ、慈悲深い神々、
しいたげられたコーディーリアの、大きな傷を癒してください、
妹の狂い乱れた心の弦を、
もとのように締めなおしてください。

医師 およろしければ
もうお起こししましょう、
さ、おそばに。もう少し音楽を大きくしてくれ。

リーガン ああ、コーディーリア! 回復をうながす霊薬が
私の唇に宿り、この口づけで、
無惨な傷口が、もとどおり
なおりますように。

ゴネリル この真白な髪
あわれなこと。
コーディーリアは、豚や浮浪者といっしょに、
掘っ建て小屋でかび臭い藁にくるまっていたの? ああ、
なんてひどい! 正気とともに、
いのちまで失われなかったのが不思議だわ。

リーガン あ、目が!
ことばをおかけして。

医師 奥方様からどうぞ、そのほうが。

リーガン いかがです、コーディーリア、気分は?

コーディーリア ひどいではないか、わしを墓から連れ出すとは。
おまえは天国の霊魂だな、だがわしは地獄の
炎の車に縛りつけられておる、涙を流せば
溶けた鉛のように肌を焼くのだ。

ゴネリル お姉ちゃんのこと、わかる?

コーディーリア おまえは霊魂だ、わかっておる。いつ死んだ?

リーガン まだ、まだ、これではとても!

医師 はっきりお目覚めではないのです、しばらくそのままに。

コーディーリア わしはどこにいた? どこにおる?
わしにはわからぬ、これはわしの手か? どれ。
うむ、針の痛さは感じる。ああ、はっきり知りたい、
わしはどうなっておるのか!

リーガン 私を見て。
その可愛い手で、私に祝福を。

ゴネリル わたしにも。

コーディーリア どうかなぶらないでくれ、
おまえも、この女も、知っておるように思うが
たしかではない。だいたいここがどこなのか、
それさえわからぬ。
わしには、
どう考えてみても、このご婦人がたが、わたしのお姉さまたち
ゴネリルとリーガンとしか思えぬ。

ゴネリル そうよ、そう、私は。

コーディーリア 頬をぬらしているのは涙か? そう、涙だ。頼む、
泣かんでくれ。
わしを恨んでおるはずだ。

リーガン そんなこと、ないわ。

コーディーリア わしはフランスにおるのか?

リーガン あなたの王国よ

ゴネリル ねえ、奥へ、入りましょう?

コーディーリア がまんしてくれよ、
すべてを忘れ、許してくれ。わしは愚かなおばあさんなのだ。

◉わたしは、(2

わたしは、

わたしは、

(わたしたちは、

わたしは、

(わたしたちは、

わたしは、

(わたしたちは、

◉長女と次女 (2

5.

次女 お姉ちゃん
おとうさんがー、ふたりで食べなさいっておかしくれた!

長女 お
みたことなーい

次女 なんかねえ、
とおいくにのおかしなんだってー

長女 ああー、ナントカさんが来てたねー

次女 お姉ちゃん
わたしわかった

長女 なに?

次女 おかあさん、もう帰ってこないんだよ

長女 えっ
そうなの?

次女 たぶんー

長女 うん

次女 とおいくに、に行ったんだとおもう

長女 それで、帰って、こないの?

次女 そう、もう、
帰ってこないの。

6.

次女 お姉ちゃん

長女 なに

次女 お父さん、
死んじゃったんだって

長女 なにそれ
誰が言ってたの

次女 ケント

長女 嘘

次女 うっそー

長女 もうバカ
やめてよ

次女 あのねえ、戦争で、
おとうさん、死んじゃうんじゃないかなあって
おもって、
それで、

長女 うん

次女 なんかだんだん、考えてたら、
ほんとかうそかわかんなくなってきちゃった

長女 あのねえ、
王さまは、絶対死なないとこにいるの

次女 戦争で?

長女 うん

次女 じゃあ、戦争で、誰が死ぬの?

長女 兵隊の、ひとたち。とか、
将軍のひとたち?

次女 おとうさんは、死なないの?

長女 そうね、
たぶんね、

次女 ずるーい

長女 でもさあ、王さまが死んじゃったら、みんな、困るじゃん

次女 おかあさんは?

長女 え?

次女 おかあさんは、死んだら、みんな、困らないの?

長女 …

次女 あかちゃんが産まれて、おかあさんが死んじゃったら、みんな、困らないの?

長女 あたしは、お姉ちゃんは、やだよ。

次女 あたしねえ、あかちゃんより、おかあさんが、生きてるほうがよかった(泣く)

長女 …

次女 ケントに、「泣いちゃダメ」っていわれた

長女 いいよ、泣いて。

◉リョウコ53歳、63歳、73歳、83歳、93歳、103歳(2m

リョウコ53歳
子どもが9歳になったので、
まだまだ働かなくちゃな、って気持ちと、
18歳までと考えたらもう折り返しだなーって気持ちと。

63歳
あと2年で年金の歳なんて、
ほんと嘘みたい。
あっというま。
そろそろね、あたしも隠居したい!
まだ早いかな?

73歳
この頃、からだが効かなくなってるのがはっきりわかるようになってきた
まあもう死ぬまで、働くのかな。
なんかねえ、毎日ぼんやりしてきて、楽しいですよ

83歳
ええ、ええ、
ニッポンではね、
女性の平均年齢がもう88歳だって言いますから
まだまだ、と思っています
どんどんね、むかしが、
遠くなって。

93歳
ここまで生きることができたのも、
みなさまのお陰様でと思っております。
あと7年で、100歳です
もうなにも。なーんにも。

103歳
わたしには妹が2人、おりまして。
このあいだねえ、妹の娘の姪っ子の娘が亡くなりまして。
ええ、わたしには子どもはおりませんので。
ええ。ええ。

◉フネの葬式

カツオ マスオ兄さん、遅いね

サザエ そうね

ワカメ おかあさん、
ぜんぜん、眠ってるみたいに見える

サザエ 綺麗に、お化粧してもらって、
よかったわ

ワカメ おかあさん、こんな素敵な色の口紅、持ってたのね

サザエ …むかしは、よくつけてた
あんたたちが産まれるまえにね

ワカメ おかあさんに、似合うね

サザエ そうね、すごくきれい。

カツオ 姉さん、タラちゃん
ずっと寝てるけど

サザエ たくさん泣いたから。
疲れたのよ。

ワカメ (また、泣き始める)
おかあさん。

サザエ (ワカメを撫でる)
あたしの膝においで。
あたし、母さんが寝坊してるだけだとおもったのに
違ったのね

フネ
わたしは、

わたしは、

(わたしたちは、

お父さんと、
サザエと、カツオと、ワカメと、
マスオさんと、タラちゃんと、

あなたに、
聞いて、もらえている、もらえていた、
見て、もらえている、もらえていた、

わたしたちの、言葉は、

「nothing」

は、

「なにか、」
「something 」
「なにか」
「something 」
「何か、」
「何か、善いもの、」
「なにか」

「何か、善きもの、」

「なにか、わたし、わたしたちの(希望」

わたしはそのとき
善を(希望、信じすぎていて、

サザエ、

カツオ、

ワカメ、

わたしのかわいい子どもたち、

テレビや、
マンガや、
そのほか。

◉「コーディーリア。」

◉リア王 終幕
・リア

リアが両腕にコーディーリアの死体を抱いて登場。

リア 泣け、泣け、泣かぬか!
きさまらは石か?
この娘(こ)は永久に
逝ってしまった!
鏡を貸せ、息でその表が曇るか汚れるかすれば、
まだ生きておるのだが。

(ケント これがこの世の終わりの日か?

リア この羽根が動く、生きておるぞ!
ああ、もしも
生きてさえいてくれれば、わしのなめた悲しみは
すべてつぐなわれる。

(ケント (ひざまずいて)ああ、陛下

リア ええい、
くたばるがいい、おまえたちは人殺しだ、謀反人だ、
助かったかもしれぬのに、もうだめだ。
コーディーリア、コーディーリア、
え、
なにか言ったか?
おまえを絞め殺した下郎はわしが殺してやったぞ。
昔はわしも、鋭い大太刀をふるい、やつらを
跳びあがらせたものだ。だがもう年をとった、
うち続く苦労で腕も鈍った。だれだな、おまえは?
どうもはっきり見えぬ。ケントか?

(ケント そのとおりです、
ご家来のケントです。

リア ありがとう、よくきてくれた。

(ケント もうこの世は
慰めとてない暗闇の死の世界。
上の二人の姫は
自害されました。

リア うむ、わしもそう思う。

(ケント おお、オールバニ公、あれを!

リア わしのかわいいやつが、
阿呆め、絞め殺されたぞ! もう、もう、だめだ!
もうもどってこないのか、
二度と、二度と、二度と、二度と、二度と!
頼む、このボタンをはずしてくれ。
これが見えるか? 見ろ、この顔を、この唇を、
見ろ、これを見ろ!(死ぬ)

(葬送のマーチ)

ケント 陛下!

◉リア王 第一幕第一場の断片

グロスター、

地図をもて。いいか、わしは
王国を三つに

この老いの身から

それを若い力にゆだね、身軽になって

おまえたちのだれが

わしをいちばん愛してくれるかな?

ゴネリル、長女としておまえから言うがいい。

では次に二番目の娘、
コーンウォールの妻、かわいいリーガン

いちばん小さいがわが喜びのいちばん小さくはない末娘、

おまえは
どう言うかな?

なにもないところになにも出てきはせぬ、

そのことば、本心から出たものか?

これからは、永久に、
この身にも、この心にも、おまえはまったくの
赤の他人だ。

あれをわが子とは思わぬ。

おまえたち両名に、わしのもつ至上の権力、
権威、その他王位にともなういっさいの栄誉を
譲り渡すことにする。

わしの手に
とどめておくのは、国王の名前と資格のみだ、

王の命令だ、聞け!

この世を生きていく苦しみにそなえるがいい。

◉ケントが振り返る(前のシーンに重なる

むかし、といっても、この老いぼれがもう「ご老人」と呼ばれ始めた頃だから、そんなに前ではない、

わたしが仕えていた王さまが
この方のお名前は聞かないでおいてください、
お子さまたちに、家督を譲ろうと考えた。

王のお子さまは3人の姫で、

みなさん、
やさしい、きれいな、比べようもない素晴らしい姫さまでしたよ

ところが王が、
国を継ぐ姫さまたちのお心を測ろうとしたとき、末の姫さまが王のご機嫌を損ねた、

いや、姫さまたちは、みなさま立派にお答えされた、

末の姫さまは、
「父と子」とのあいだには、ことばは要らない、なにも要らない、と考えておいでだったのでしょうね、

「なにも」とお答えになった。
なにも。

姫さまたちには、王が、なぜことばを求めたのか、
どのくらい、
孤独であったか、
これはそんなことばでは言い尽くせないのだがもちろん「王」というものは唯一の存在なのだから、

まあそれで、
とても悲しいことでした、
皆さまお亡くなりになったのです

王さまのいちばんお側でお仕えしてまいりました、
わたしだけが、
生き残ってしまいました。

◉老女が振り返る

わたしのお友だちでね、
すごく気が合って、
びっくりするほど長い間、
お友だちでいた方がいるの

わたしはお金持ちじゃないけど、
その方のおうちは、まあいわゆる「いいおうち」で。

3人、娘さんがいたの。
継がせたいものも、財産も、たくさんお持ちでね、
いろいろ準備して、

上のおふたりはお婿さんをとって、
下の末っ子さんはもうすぐお嫁に、ってところだったのよ

それで、その方
なにかを試そうとしたのね、
とってもへんなんだけど、
「あなたたち、母さんのこと、どのくらい好き?」って聞いたのよ、娘さんたちに。

末のお嬢さんが、
これはわたしもその方から聞いた話だからほんとのところはわからないけど、

「なにも」
って、おっしゃったみたいなの

どう考えていたのか、
わたしは子どもがいないからわからないけど、
いえ、「子どもの気持ち」はわかる気がする

「お母さんのことが好き」

それ以上に、
なにも、ないでしょう。

いろいろあってね、
みなさん、わたしのお友だちもね、娘さんたちもね、早くに、お亡くなりになって。

わたしだけが生き残ってしまったわ
こんな、おばあさんがね。

(老婆たち、集まり、笑い合う)

◉老女たちのリア王の話

(A
わたしね、
『リア王』ってはなしおもいだしたわ、
よく似てるのよ

(B
ああー
わたしもね、むかし、読んだわ

(C
3人、むすめがいるんでしょう

(A
そうそう、
おねえさんのふたりがね、
「いじわるおんな」っていわれるの

(C
あらあー

(D
でもあれは、親が悪いでしょ
なに?リア王?
なんか、むすめの家で暴れるのよ

(A
ねえ、あんなの、たまったもんじゃないわ

(B
ひどいはなし

(D
そうそう
親より先に、こどもが死ぬの

(A
家族全員、死ぬのよね、

◉リア王 終幕
生き残ったのはゴネリルとリーガン

ゴネリル、リーガン、コーディーリアの死体を抱いて登場。

ゴネリル:
父上は相討ちになっておられました。
妹はその前に。
わたしたちの可愛い妹。
この2人に対する殺しの指図を出したのは、いったい誰?
オールバニ、
あなたとの婚姻契約破棄については、のちほど結論を出しましょう。
コーンウォール公も亡くなったいま、新しい統治体制について、わたしとリーガンは話し合わなければなりません。

リーガン:
お姉さま、
まずはお父さまのご遺骸をここに運ばせましょう

ゴネリル:
そうね
父リア王の、国葬の準備を。
コーディーリアはフランスにお返ししましょう。
可哀想な妹。

リーガン:
エドガー?
エドマンドは、死んだのかしら?
…感謝するわ。

ゴネリル:
グロスターも死んだのね。
手厚く葬りましょう。
今後、わたしがブリテン王となり、リーガンを補佐役とします。リーガンにはフランスとの交渉も担ってもらわなくてはね。フランス王妃コーディーリアは、死んでしまいましたから。

リーガン:
今後、お姉さまと私が、
産み、育て、国の栄えのために采配を尽くせるよう、
国民に広く告げて回るように。

ゴネリル:
リアは立派な王でした。
盛大な葬儀により、父上の黄泉への旅路を見送りましょう。

(葬送のマーチ)

◉リア王 終幕
生き残ったのはコーディーリア

コーディーリア、血の付いた短剣を持って登場。

コーディーリア:
わたしと父上を捕虜に、と命じたのは誰か。
ここに答えられる者はいる?

(オールバニ:
…私です、姫君)

コーディーリア:
オールバニ公、地図を。
さあ、姉上たちはどこに?

(オールバニ:
二人は、自害しました)

コーディーリア:
そう。死んだの。
やさしくて、きれいな、お姉さまたち。
おまえたちの、だれが、
わたしたちの?わたしたちを?
おまえたちのだれがわしをいちばん愛してくれるかな
父上は、そう聞いたわね

(オールバニ:
王は。リア王は、どちらに。)

コーディーリア:
リア王を襲った輩は、わたしが殺しました。
父上も半分自殺したようなものだわ
あわれなひと。
わたしのことをかばって
「子供が父親に捧げうる最大の愛」
「私のしあわせは
お父様を愛することにしかないのですから。」
わたしは、
いちばん小さいがわが喜びのいちばん小さくはない末娘、お父さま、
わたしは、やったわ。

(ケント:
姫様)

コーディーリア:
ケント、オールバニ公、
3人の国葬の準備を。
姉上たちの苦しみについては、のちほどゆっくり聞きましょう。
わしは父としての心づかいも、血のつながりも、
きっぱり捨てたぞ、
グロスター、フランス王とバーガンディ公の案内を…
いいえ、そこにいるのは、エドガー?
…グロスター伯は死んだのね。

(エドガー:
ええ、陛下。)

コーディーリア:
あなたの父上も、手厚く葬ることにしましょう。
この国の王は、これより私コーディーリアです。
国を挙げて、偉大なる父、リア王の喪に服すとともに、ブリテンのあらたな王、コーディーリアの名を、周辺国まで轟くよう、広く告知するように。
そう、
アポロにかけて、
ジュピターにかけて。
…ケント、
あなたのお身に神々のご加護がありますよう。

(葬送のマーチ)

◉リア王終幕 王妃登場

ゴネリル・リーガン・コーディーリアの母親であるリア王の妻、王妃登場。

王妃:
リアは死にました。
3人のむすめたちもみな死にました。
あなた方は、わたくしはすでに亡くなったものと思っていらっしゃったようですが、わたくしはこうして、生きております。
もうこの国は、血が途絶え、子孫をのこすことはままならないでしょう
わたくしは、リアと同じく、年老いてしまいました。むすめたちはなぜ子を成さなかったのか。いまから申し上げても詮無いことですが。
このまま、この国は滅びていくでしょう。
いえ、
国の民は、それぞれの生を全うして生きていく、
滅びるのは、わたくしたち王の家の者だけです。
ケント、エドガー、オールバニ、
永いあいだ、わたくしたちに仕えてくれたことを感謝します。

(葬送のマーチ)

◉長女と次女と三女

次女 お姉ちゃん、あかちゃん、かわいいね!

長女 あたしたちの妹、かわいいね
あぷぷぷぷぷぷ!

三女 お姉ちゃん!

次女 お姉ちゃんだよー
あたしがー、リーねえちゃん!

長女 あたしはー、ゴン姉!

三女 リーちゃん、
ゴンちゃん、

長女 おぼえた!
コーディーリアは、かしこいねー

次女 こっちだよー!

三女 いーち、にー、さーん、しーい、
もーいーかーい

長女 もーいーよー!

次女 だーるーまーさーんーがーころんだ!

三女 あー、遊んだあ

長女 疲れたあー

次女 お姉ちゃん、本気出しすぎー

長女 だって、あたし、王様になるもーん

次女 じゃあー、あたしは女王様になる!

三女 コーディーリアはー
おひめさまになるー

◉天皇挨拶


御列席の皆様

初めに、
私と日本国民に対して示していただいた,親愛と連帯の情に心から感謝します。

また、この初秋のフランスを照らす、優しく、柔らかな日差しのような、温かい歓迎の御挨拶に

御礼申し上げます。

私が初めてフランスを訪れたのは,英国オックスフォードにて学んでいた時のことで、

その時のことは今でもよく思い出します。

今回、日仏外交関係樹立160周年という記念すべき機会にこうしてフランスを訪問できたことは、私にとって大きな喜びです。

最後に、我が国とフランス共和国の友好親善関係の一層の進展と、

御列席の皆様の御多幸と御繁栄を心よりお祈りしたいと思います。

Merci beaucoup (メルシ・ボクー)

◉生き残ったのはリョウコちゃん

わたしは、

【終演】


【参考】わたしは、テキスト全文

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わたしは、

わたしは、

(わたしたちは、

あなたに、
聞いて、もらえている、と思っていた、
見て、もらえている、と、思っていた、
いま、触れていた、
あなたの、ジョウと、アイと、言葉を、
信じていた信じたかった信じないことには

「nothing」

は、

「なにか、」
「something 」
「なにか」
「something 」
「何か、」
「何か、善いもの、」
「なにか」

「何か、善きもの、」

「なにか、わたし、わたしたちの(希望」

には、変わらなかった、
ならなかった、成らなかった(希望

のである

成らなかった、(希望

のである、

わたしはそのとき
善を(希望、信じすぎていて、

「nothing」

は、

「something 」

に、

変容した、変容する、

変容するのかどうかその結果を、

見る、前に、

わたしは、

わたし、は、

わたしは(わたしたちは、

死に、死に果てた、

(わたしたちは、死に果ててしまった。

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